2017年ベスト

赤坂太輔 (映画批評)

映画ベスト

  • 『夏の娘たち~ひめごと~』堀禎一
  • 「グスタボ・フォンタン・レトロスペクティヴ」&同特集で上映されなかった新作の「凍った湖」三部作(『Sol en un patio vacio』『Lluvias』『El Estanque』)
  • 『エルミア&エレナ』マティアス・ピニェイロ

他に『El viento sabe que vuelvo a casa』(ホセ・ルイス・トレス・レイバ)、『La Sapienza』&『Le fils de Joseph』(ウジェーヌ・グリーン)、『On the Beach at Night Alone』&『The day after』(ホン・サンス)、『主はその力をあらわせり』(アルベルト・セラ)、『Future tense』(只石博紀)、『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』(ケリー・ライヒャルト)、『A Vinganca de Uma Mulher』(リタ・アゼヴェド・ゴメス)、『パターソン』(ジム・ジャームッシュ)、『散歩する侵略者』(黒沢清)

もう一度言おう、「堀禎一は、天才だった」と。あの煌めくような人物が、突然私たちの元を去ってしまった・・・人だけでなく、さまざまな希望、計画・・・それらも共に逝ってしまった。
喪に服していたわけではないが、7月18日以後、数ヶ月も映画館に行くことがなかったため、本来なら辞退すべきところだったが、やはり自分しか挙げない映画もあるだろうと考えて参加することに。
今年は・・・日本映画の古典に由来する現代へのベクトルは鈴木清順の死によって終わり、その古典の力を現代と結びつけ蘇生させる可能性(それはとりわけ『天竜区』シリーズにある)は堀禎一の死によって絶たれた。歴史的環境(システムやフィルム、エクリチュール、等々)の消失は、もう彼らのような人々の出現を許してくれないだろう。1994年だったか、フランスから帰ってきたばかりの堀禎一は、日本では当時未上映だった『エンペドクレスの死』について語る一方で、そうした消え去っていく歴史的環境をくぐり抜けることを映画作家になる条件としてあえて必須にしていたが・・・だから「何かが終わった」という深い断念が残された者をとらえるのだ。

その一方で、視線を妨げたり覆ったりすることで視線をクリティカルなものにする戦後日本映画の流れは黒沢清や高橋洋(来年公開の『霊的ボリシェヴィキ』)といった人々の作品によって確認できる。それにまた、日本映画にとってのホン・サンスやウジェーヌ・グリーンのような、ありもののフォルムを「プレイする」若い作家たちがいつか登場してくるのかも知れない・・・が、それはまた別の話である。

梅本健司 (アテネフランセ文化センター受付/青山学院大学文学部比較芸術学科)

映画ベスト(公開順)

  • 『LOGAN/ローガン』ジェームズ・マンゴールド
  • 『ベイビー・ドライバー』エドガー・ライト
  • 『夏の娘たち~ひめごと~』堀禎一
  • 『キングス・オブ・サマー』ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
  • 『散歩する侵略者』黒沢清 

今思うと高校生の頃の僕はわからないということが嫌だったのだなあと思う。映画を観てわからないと思うことがとても嫌だった。それは、昔から周りに映画について面白いことをカッコ良く言う大人がたくさんいたからだ。同じように何かを言わなくてはならないと勝手に、傲慢に、考えてしまっていた。けれど、素直に「わからない」と思うことが大切だと、大学に入り、映画について考えられる時間が少し増え、同じように学ぶ人たちに出会えたおかげで気がついた。「わからない」が出発点なのだと。ここで挙げた作品の中でも、大人と子供が、女と男が、宇宙人と地球人が、理解し合えず、しかしだからこそわかり合おうと近づいていく。「わからない」からこそ学べるのだと教えてくれる。

その他

  • プレミアリーグ第12節アーセナル対トッテナム(サッカー)

    今シーズンのプレミアリーグでアーセナルのガッツが90分間持続した唯一の試合。かつて香川真司をドルトムントに招き大成させた敏腕スカウト、スヴェン・ミスリンタートの加入で停滞状態のアーセナルがどう変わっていけるのかに注目していきたい。

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭(イベント)

    ワイズマンの新作『エクス・リブリスーニューヨーク公共図書館』や『選挙に出たい』(邢菲ケイヒ)、『天竜区奥領家大沢 別所製茶工場』(堀禎一)などが特に印象に残っている。

  • 『EUREKA』青山真治(特別上映)

    東京国際映画祭で宮崎あおいのトリビュート上映として『EUREKA』が上映された。劇場で観るのは3年ぶり、二度目だ。何度観ても衝撃を受けてしまう。その衝撃の正体について考えるのが今年最初の僕がやるべきことだ。

  • 「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」Bunkamuraザ・ミュージアム(展覧会)

    どんなに見慣れた風景であろうと写真を通し新たに何かを発見できるのだと、彼の写真に教えられた。

  • 『BEASTARS』板垣巴留(漫画)

荻野洋一 (番組等映像演出/映画評論)

映画ベスト

  1. 『ツイン・ピークス Return』(WOWOW)デヴィッド・リンチ
  2. 『超級大國民』萬仁(ワン・レン)
  3. 『イスマエルの亡霊たち』アルノー・デプレシャン
  4. 『Dyn Amo』スティーヴン・ドウスキン
  5. 『呼吸する部屋』吉開菜央

2017年劇場公開作ベストについては他メディアで既発表なので、NOBODY誌ベストのユルユルな選考基準に甘えさせていただき、劇場公開という枠をいっさい取り払い、ただ単に良いと思った作品群だけを並べた。上から順にWOWOW、TIFF、TIFF、アテネフランセ「中原昌也への白紙委任状」での上映・発表作。
そして5位の吉開菜央(よしがい・なお)は私が現在もっとも注目している若手ダンサー&映画作家で、肉体と空気の振動について面白いアプローチをし始めた作家である。2015年に『螺旋銀河』の草野なつか監督から、文化庁メディア芸術祭新人賞を受賞した『ほったまるびより』の存在を教えていただいた。吉開作品にあっては肉体に留まらず、空間やオブジェ、古い写真、雨風や塵芥さえもが舞踊の対象である。アーツ千代田 3331 AI KOWADAギャラリーにおける今回の個展で発表された新作『静坐社』では、取り壊し寸前の家屋の片隅で、埃が黄昏の光線を受けてキラキラと誰にも気づかれぬ寂寥を舞っていた。
2018年もすばらしい映画との出会いがたくさんあることを期待したい。

美術展ベスト

  1. 「天下を治めた絵師 狩野元信」サントリー美術館
  2. 「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」Bunkamuraザ・ミュージアム
  3. 「DIC川村記念美術館×林道郎 静かに狂う眼差し―現代美術覚書」
  4. 「佐藤直樹個展 秘境の東京、そこで生えている」アーツ千代田 3331 メインギャラリー
  5. 「遠藤利克展―聖性の考古学」埼玉県立近代美術館

狩野派の絵というと「東博にでも行けばいつでも見られる」などと生意気なことをついつい吐きたくなってしまうのだが、舐めていると足元をすくわれる。日本最大の絵師集団、狩野派の礎を築いた巨匠の画技から発する鬼気迫るものは、まさに中国語で言うところの「気韻生動」。今回改めて度肝抜かれたことを白状しなければならない。
その他のジャンルについてもベストを。本=ミシェル・レリス著『ゲームの規則』I 抹消/II 軍装(以下 III 縫糸、IV 囁音は2018年以降続刊予定)。音楽=『バンコクナイツ』オリジナルサウンドトラックと、そこから派生する数枚の関連CD群。演劇ベスト3=『半七半八』(中野成樹+フランケンズ)、『小鳥女房』(SWANNY)、『ダークマスター』(庭劇団ペニノ)。スポーツ=ゴンサロ・ゲデス(バレンシア所属 ポルトガル代表)。テレビ=テレ朝『やすらぎの郷』における冨士真奈美(この人がこんなに凄い演技のできる女優だったとは、と改めて)。飲食=小笠原伯爵邸(亡父十三回忌のお斎にて)。

隈元博樹 (NOBODY)

映画ベスト

  • 『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス
  • 『スパイダーマン:ホームカミング』ジョン・ワッツ
  • 『南瓜とマヨネーズ』冨永昌敬
  • 『24フレーム』アッバス・キアロスタミ
  • 『希望のかなた』アキ・カウリスマキ

映画を観ること、書くこと、つくること、そして保存することを通して、物語の人物や作家たちが向かう(あるいは辿り着いた)さまざまな行方に興味を覚えた5本を選びました。『マリアンヌ』はふたりをつなぐ愛の行く末とともに、ゼメキスという作家はいったいどこへ向かっていくのだろうかという思いに駆られ、ジュブナイルな様相を呈した新たなジョン・ワッツのスパイダーマンは、サム・ライミやマーク・ウェブが描いたかつてのシリーズとは一線を画すべく今後に期待を込めて。『南瓜とマヨネーズ』は東京が持つ「意気地なしの風景」が恋人たちの「これから」を優しく包み込んでいたことに感動を覚え、フィルメックスでの『24フレーム』は1枚の写真の以前と以後の並置によって、キアロスタミは遺作にしてシネアストの欲望そのものを体現し、その境地に辿り着いたのではなかろうかと。またフィルム上映に駆けつけた『希望のかなた』には、VISION5219のネガフィルムに焼き付けられたブルートーンの世界こそが唯一無二の「希望」であることをまざまざと実感させられました。
昨年のベストに挙げた『パターソン』(ジム・ジャームッシュ)を除き、2017年は『ピートと秘密の友達』(デヴィッド・ロウリー)、『キングコング:髑髏島の巨神』(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ)、『未来よ こんにちは』(ミア・ハンセン=ラブ)、『LOGAN/ローガン』(ジェームズ・マンゴールド)、『夏の娘たち~ひめごと~』(堀禎一)、『ハローグッバイ』(菊地健雄)、『ギミー・デンジャー』(ジム・ジャームッシュ)、『レット・ザ・サンシャイン・イン』(クレール・ドゥニ)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(瀬々敬久)といった忘れがたい作品に巡り会えたことも、ここに付記しておきたいと思います。

その他

  • 『さらばボヘミヤン』松本圭二(書籍)

    詩人とアーキヴィストの顔を持つ著者の爆発的な言葉のリズムと映画/フィルムをめぐる果てしなき彷徨の術に酔いしれました。所収された3つの中編はかつて「新潮」や「すばる」といった文芸誌に掲載された作品ですが、この小説に加え、詩編を含めた過去の諸作が続々と復刊されている事実こそが事件なのだと思います。

  • 『River River』SPIRIT FEST(MV)

    テニスコーツとThe Notwistによる新ユニットの楽曲を、佐野真規さん(『ジョギング渡り鳥』助監督・制作)が演出されたミュージック・ビデオ。一貫してメロウなテンポとともに映し出されるスナック街、日本家屋、丘、海辺、そして中川ゆかりさんの所作すべてに愛しさが満ちあふれています。

  • 「ギャラクシーIMAXシアター」スペースワールド(テーマパーク)

    大晦日いっぱいで閉園することを聞きつけ、高校以来12年ぶりに訪れました。『The Dream is Alive』(1985、グレアム・ファーガソン)のIMAX70mmフィルム上映が放つ圧倒的なスケールと、飽くなき多幸感はいつまでも忘れません。フォーエバー、スペースワールド!

  • SMBC日本シリーズ第6戦福岡ソフトバンクホークスVS横浜DeNAベイスターズ@福岡Yahoo!ドーム(スポーツ)

    伏兵・川島慶三のサヨナラタイムリーで日本一が決まるという劇的な展開で幕を閉じたものの、最もシビれたのが9回裏1点ビハインドの場面。ハマの守護神・山崎康晃から内川聖一が放った同点ホームランは、「もはや漫画だ!」としか言いようがないほどに興奮してしまいました。

  • 福岡県福岡市西区玄界島(ロケーション)

    脚本と助監督で参加した『ナギョンとキヌカワ』でお世話になった島です。10年前の福岡西方沖地震によって甚大な被害に見舞われたものの、その後新興住宅やエレベーターなどを設えたことで着々と復興を遂げた場所でもあります。製作を通して同世代の漁師の友人ができたこともひとつの釣果で、今度はプライベートでも訪れてみたいと思います。

坂本安美 (アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)

映画ベスト5(観た順)

  • 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』ケネス・ロナーガン
  • 『l’Amant d’un jour(一日の愛人)』フィリップ・ガレル
  • 『夏の娘たち~ひめごと~』堀禎一
  • 『散歩する侵略者』黒沢清
  • 『ありがとう、トニ・エルドマン』マーレン・アデ

何かと何か、誰かと誰かが出会い、共にあることの驚き、嫌悪感、悦び、終わりと新たな始まりを受け入れる勇気。ここに挙げてみた5本は、日々の中であたり前と思っている未知なるもの、他者との出会いの驚きを刻む込むことが映画の根源的な力のひとつ、その可能性であることをあらためて感じさせてくれた。『ありがとう、トニ・エルドマン』は、流通可能とされる記号や意味で溢れたロボット化した社会の中にバグを、弛緩や笑いを引き起させる戦略として、純粋なる遊戯と大いなる逃走(=闘争)を示してくれた。誰よりも親密に自分の歴史を描いてきた作家ガレルは、老いと共に、自分とはやや距離を置き、異なるものたちへ向かっているように見える。たとえば、それは女性、若い世代であり、『l’Amant d’un jour (一日の愛人)』は前作、前々作に引き続き、さらに女性たちに寄り添い、これまでで最も官能的で軽やかな傑作となっている。日本での上映を切望し、未公開ながら挙げた。
ほかにも『息の跡』(小森はるか)、『パターソン』(ジム・ジャームッシュ)、『LOGAN/ローガン』(ジェームズ・マンゴールド)、『イスマエルの亡霊』(アルノー・デプレシャン)、『密使と番人』(三宅唱)、『南瓜とマヨネーズ』(冨永昌敬)などなど、これからも思い出し見直したい作品たちと出会えた。

その他

  • ”Encore(もっと)”(台詞)

    『イスマエルの亡霊』(アルノー・デプレシャン)のラストの台詞。シンプルな言葉なのだが、この映画の最後で響くことで忘れられない大切な言葉に。

  • ロブリュー(飲食店)

    特別な日に訪れ、美味しいバスク料理をいただく。映画好きなマダムとの会話も楽しい。

  • 『映画という《物体X》フィルム・アーカイブの眼で見た映画』岡田秀則(書籍)

    昨年発刊され、「キネマ旬報 映画本大賞2016」の第1位に選ばれ話題になった同書を遅ればせながら完読し、大いに楽しませて頂いた。「物体」としての映画の物語から始まり、倉庫の中で普段は眠っている映画たち、「密航してくる」映画たち、それら映画たちとともに「映画史を立ち上げる」映画館、映画資料、人々にスポットライトが次々に当てられ、まるで著者ともに旅をしながらその出会いを体験しているかのようにワクワクしながら拝読した。

  • ニューヨーク(旅行)

    決着をつけるべく用件があり3月に訪れたニューヨークで大雪に見舞われたり、地下鉄に閉じ込められたり、踏んだり蹴ったりの一週間だったが、新しい映画館メトログラフや老舗のフィルムフォーラム、アンソロジー・フィルム・アーカイヴズ、リンカーン・センターでの上映やトーク、何件かの本屋さんでの店主との会話やブック・セレクション、この街で生きる人々たちと触れ合い、大きくも小さくもあるニューヨークにますます魅せられた旅となった。そうそう、グリニージ・ヴィレッジでは優雅に夕食を取っている前大統領オバマ氏もお見かけした。

  • 2017年11月18日(土) 須藤健太郎氏によるジャック・ベッケルについてのトーク(講演会/トーク)

    ジャック・ベッケルという監督出現の映画史的意義とともに、究極の愛の映画としての『肉体の冠』の素晴らしさを独自の視点で開陳してくれた。2018年1月21日(日)にアンスティチュ・フランセ東京にて『現金に手を出すな』上映後に予定されている同氏のトークで続きを聞けること楽しみにしている。

杉原永純 (山口情報芸術センター[YCAM]シネマ担当)

映画ベスト5

  • 『バンコクナイツ』富田克也
  • 『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス(シネプレックス小倉/2017.2.14)
  • 『散歩する侵略者』黒沢清(丸の内TOEI 1/2017.9.17)
  • 『ダンケルク』クリストファー・ノーラン(TOHOシネマズ新宿・IMAX/2017.9.11)
  • 『花筐/HANAGATAMI』大林宣彦(映画美学校試写室/2017.11.27)

ベストを発表することがピリオドを打っていくことにつながるのであれば、なんとなく抵抗したいという意味も込めて昨年に続き敢えて今年も『バンコクナイツ』をベストに入れる。上映者として、映画の熱っていうのは本当にコントロールが難しいものだが、自前で映画を届けることに責任をもちつづけている空族の姿勢には改めて感服する。関連してYCAMで製作したインスタレーション版「潜行一千里」が恵比寿映像祭と黄金町バザールに巡回し、一方で粛々と編集が進められていた『映画潜行一千里』も無事完成、劇場公開という一年中『バンコクナイツ』のことを考えていた一年だった。
『マリアンヌ』の簡素でかつゴージャスな手触り。活劇として、メロドラマとして王道を感じた『散歩する侵略者』を見れたことが嬉しかった。この手のいい意味で普通の映画が山口には届かなすぎる。映画と世界の距離の遠さ。
もはや映画は映画ぶる必要はないが、それと同時に劇場体験が不可欠、という点で出色だった『ダンケルク』と『花筐/HANAGATAMI』を挙げる。

YCAM爆音+α5選

  • 『メッセージ』ドゥニ・ヴィルヌーヴ

    YCAMの爆音上映は凄いと言い続けて来たので、遠慮なくYCAM爆音で素晴らしかった作品を思いつくままに挙げてみる。小倉のシネコンで初見。宇宙からの訪問者たちの声。それと地続きのヨハン・ヨハンソンによる極限の解像度の音楽。『28週後…』もそうだったが、爆音上映とステルス機、ヘリの音の相性は良すぎ。

  • 『RIVER OF FUNDAMENT』マシュー・バーニー&ジョナサン・ペプラー

    爆音初上映にして日本初上映となった『クレマスター』のマシュー・バーニー&ジョナサン・ベプラーによる壮大でR18描写満載の映像オペラ。贅の限りを尽くし芸術に没頭できるアーティストの存在の貴重さ。最後の最後エンドロールで、7.1chを奏でてくれたスピーカーたちへ、バンドのメンバー紹介風に各スピーカーから音を出していく設計に痺れた。

  • 『シン・ゴジラ』庵野秀明

    カナザワ映画祭2017 at YCAMでの上映。爆音調整(© boid)としては実はYCAMでの上映が初(そしてそれ以後ないようだ)。サウンドトラックに積極的に採用された『ゴジラ』オリジナル音源を丁寧に何度も調整を繰り返し至高の爆音体験に仕上がった。LCRのみの3ch設定が非常に効果的だった。

  • 『フィーバー・ルーム』アピチャッポン・ウィーラセタクン(KAAT神奈川芸術劇場/2017.2.11)(舞台作品)

    なんとなくチケットを予約して会期のはじめで前情報一切なしで見てしまった。その直後、当日券の争奪戦になったのも理解できる。映画よりも映画的で映画が内在していた可能性の、次のステージを見せてくれた。個人的に、ラオスでの旅の記憶が直結。

  • 『ゲンロン0』東浩紀(書籍)

    平易な言葉で紡がれる哲学的言論の結晶。こんなに身体に浸透してくる読書は初めてだ。同時代人として東浩紀がいたことは大きな財産だと思う。

田中竜輔 (NOBODY)

映画ベスト

  • 『Making of “Spinning BOX” 34DAYS』堀禎一
  • 『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス
  • 『イスマエルの亡霊たち』アルノー・デプレシャン
  • 『南瓜とマヨネーズ』冨永昌敬
  • 『希望のかなた』アキ・カウリスマキ

私が堀禎一監督(以前、メールで「堀監督」と何気なく記して怒られたことがある。なので、以下は「堀さん」と記す)と知り合ったのはほんの一年ほど前のことに過ぎないし、言葉を直接交わしたこともインタヴューを含め数えられるほど、やりとりをしたメールも十数件ほどしか残っていない。それでも、いつか2017年のことを思い出すときには、この年はやはり堀さんとともに過ごした一年だったのだと考えるだろう。ベストにあげた『Making of “Spinning BOX” 34DAYS』は、ポレポレ東中野での堀さんの特集上映の最後にプログラムされていた作品で、通夜の直後、喪服を着たままで見た。見終わった後、そこに出演されていた中河内雅貴さんや、『夏の娘たち~ひめごと~』の西山真来さんやいろんな方と、缶ビール片手に、興奮を隠さずこの驚くべき作品について言葉を交わした。やまだないとさんによれば、堀さんはこの作品を撮ることがいかなる仕事なのかについて、「鎮魂」という言葉を用いて語っていたという。その言葉が示すものがいったい何であるか、そして堀さんの映画がいったい何を映し出すものであったのかを考えることを、この先しばらくの自分の宿題のひとつにしたい。

その他

  • 「ザ・フラッシュ ファースト・シーズン」(海外ドラマ)

    近年のDCの映像化作品ならば『ワンダーウーマン』よりも、『ジャスティス・リーグ』よりも、絶対にこれ。ヒーローとは何かについての作品であり、セカンド・チャンスをめぐる作品である。バリー・アレンのように、そしてシスコ・ラモンのように生きたい。

  • 『ノスタルジア』Okada Takuro(音楽)

    2017年一番聴いたポップ・アルバム。音楽が作曲され、演奏され、録音される過程をそのままに聴いているような一枚。このインタヴューも滅法面白かった。

  • 『Bangkok Nites Original Soundtrack』(音楽)

    2017年一番聴いたサントラ。映画版『バンコクナイツ』が「眼で聴く」映画なら、このサントラは「耳で見る」音楽だった。

  • 『月曜日の友達』阿部共美(漫画)

    短編集『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』第2巻(とりわけ「8304」と「7759」という大傑作2本)に打ちのめされて以来、新作を待望していた作家の手による最新長編。おそらくまだ第1巻では助走段階なのだと思うが、本当に希有な才能だと思う。続刊が待ち遠しい。

  • 『三つの革命 ドゥルーズ=ガタリの政治哲学』廣瀬純+佐藤嘉幸(書籍)

    近年の京大人文研の周囲の方々の仕事は本当に刺激的で、可能な限り追いかけようとしているもののその量と質に圧倒されるがままの状態で、関連書籍を含め幾冊もの本が私の机と本棚には積み上がっている。その研究成果のひとつ「現代思想と政治」シリーズを通じての主要な問いのひとつが、今日において「主体」とは何なのかという問題であったとすれば、廣瀬純と佐藤嘉幸によって完全なる「共著」として書かれたという『三つの革命』は、まさしくそのような問いに対する情勢下でのひとつの実践として、私たちの知覚を比喩でなく揺り動かそうとする書籍だ。

常川拓也 (映画批評)

映画ベスト

  1. 『転校生』ルディ・ローゼンバーグ
  2. 『マッド・メアリー』ダレン・ソーントン
  3. 『ドント・シンク・トワイス』マイク・バービグリア
  4. 『ぼくの名前はズッキーニ』クロード・バラス
  5. 『Some Freaks』イアン・マカリスター・マクドナルド

1.のけ者にされた中学生たちの友情を描いたフランス版『フリークス学園』。 
2.ジョン・ヒューズとケン・ローチの遺伝子であり、ルーカス・ムーディソン『ショー・ミー・ラヴ』も彷彿とさせる傑作。2月25日(日)渋谷ユーロライブで開催する「アイルランド映画が描く"真摯な痛み"」にて日本再上映。 
3.「アメリカ映画が描く"真摯な痛み"」として長編第一作『スリープウォーク・ウィズ・ミー』、続く『ドント・シンク・トワイス』と現代アメリカン・コメディ界の最重要人物のひとりであるマイク・バービグリア作品を日本へ紹介した岡俊彦氏の功績はもっと評価されてしかるべきだろう。ジャド・アパトー製作総指揮のドラマ『LOVE ラブ』でおなじみのジリアン・ジェイコブスの名演が心に残る傑作。 
4.辛い経験をしストレートに気持ちを表すことのできない子どもたちの感情をしんみり滲ませる繊細なストップモーション・アニメーション、そしてセリーヌ・シアマの手がけた脚本が素晴らしい。 
5.隻眼の少年(『ぼくとアールと彼女のさよなら』のトーマス・マン)とプラスサイズの少女の高校から大学までの恋愛を描いた、ニール・ラビュート製作総指揮の青春映画。日本公開を切望したい。

ベスト・ソング(順不同)

  • 「On My Mind」Jorja Smith x Preditah

    UKの注目すべき1997年生まれの新星によるUKガラージな一曲。エイミー・ワインハウスの遺伝子。

  • 「Finders Keepers ft. Kojo Funds」Mabel

    UKの注目すべき逸材②。一聴して聴き惚れた。スペイン生まれスウェーデン育ちの21歳。

  • 「Undercover」Kehlani

    2017年最もブレイクしたケラーニから、ブラッド・オレンジことデヴ・ハインズもお気に入りのこの一曲。

  • 「PLACE TO GO」JJJ

    アイルランド出身の注目株Rejjie Snowの「PURPLE TUESDAY feat. Joey Bada$$ & Jesse Boykins III」しかり、メロウでチル・アウトできるサウンドがひたすら心地よく感じた。

  • 「STARZ feat. PUNPEE」RAU DEF

    このタッグに外れなし。

中村修七 (映画批評)

映画ベスト

  • 『未来よ こんにちは』ミア・ハンセン=ラブ
  • 『パーソナル・ショッパー』オリヴィエ・アサイヤス
  • 『密使と番人』三宅唱
  • 『甘き人生』マルコ・ベロッキオ
  • 『希望のかなた』アキ・カウリスマキ

良い結果を招くことにも悪い結果を招くことにも頓着せずに動き回る『未来よ こんにちは』のイザベル・ユペールには、来たるべきものに対して肯定的で開かれた態度がある。そのような態度が、彼女に明るく振る舞うことを可能にしている。
『パーソナル・ショッパー』の登場人物たちは、幽霊的な存在だ。前作『アクトレス ~女たちの舞台~』でスイスの山中に姿を消したクリステン・スチュワートが主演を務める『パーソナル・ショッパー』は、『イルマ・ヴェップ』や『カルロス』と並んでアサイヤスにおける「ファントム」の系譜に連なる。
『密使と番人』は、追う者と追われる者による逃走/闘争の劇だ。また、この映画では、人物が主人公なのではなく、舞台となる冬山が主人公であるかのようだ。山は、その都度、異なった表情でキャメラの前に姿を現している。
1960年代末に起きた出来事の真相を知ることなく成長する『甘き人生』の主人公の人生は、解明されない事件を残しているイタリア現代史の隠喩だ。『甘き人生』は、イタリア現代史には明らかにされるべき謎がまだ残されていると告げている。
『希望のかなた』の登場人物たちは、タバコの煙を漂わせながら無言のまま連帯を作り上げる。彼らは、なぜ難民を助けるのかを口にすることはないし、助けられたことに対する感謝の言葉を口にすることもない。ここでは、まるで至極当然のことであるかのように難民救済ネットワークが作動する。

美術展ベスト

  • 「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」Bunkamuraザ・ミュージアム
  • 「国立新美術館開館10周年 ジャコメッティ展」新国立美術館
  • 「DIC川村記念美術館×林道郎 静かに狂う眼差し―現代美術覚書」DIC川村記念美術館
  • 「シャガール 三次元の世界」東京ステーションギャラリー
  • 「単色のリズム 韓国の抽象」東京オペラシティ アートギャラリー

ソール・ライターは、傘や雨や雪や帽子を好み、鮮やかな色彩の写真を残した。浮世絵やフランス近代絵画の継承者たろうとした姿勢が興味深い。
遠くから見ても、ジャコメッティの人物像は近くに迫ってくる。見る者は存在が現れる瞬間に立ち会わされるかのようだ。
「静かに狂う眼差し」は、コレクションをもとに、美術史におけるイズムにとらわれない視点から種々の問題に光を当てる。
エリアーデは、聖性の回復を遂げた芸術家としてシャガールを捉えた。シャガールが石に向かう姿勢は、ブランクーシに近い。
韓国の抽象画には、メディウムに対する強い関心がある。イリュージョンを拒む厳しく禁欲的な絵画が豊かな画面を作り出している。

降矢聡 (映画批評/グッチーズ・フリースクール主催)

映画ベスト(順不同)

  1. 『ジョイ』デヴィッド・O・ラッセル

以下、順不同

  • 『俺たちポップスター』アキヴァ・シェイファー、ヨーマ・タコンヌ
  • 『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス

以下、旧作

  • 『ジョージア』(旧作)ウール・グロスバード
  • 『人生の乞食』(旧作)ウィリアム・A・ウェルマン

新作ではずば抜けて『ジョイ』。デヴィッド・O・ラッセル監督作でもダントツで好き。ベスト離婚カップルやビジネスの友といい、母違いの姉、返却される父親などなど、愛するでもなく憎むでもない受容のあり方が本当に素晴らしい。ジョイといえば『スプリット』と『ウィッチ』でアニャ・テイラー=ジョイという若手女優を見ることが出来たのが個人的にはとてもうれしい一年だった。『ジョイ』に劣らず野蛮で美しい人々たちの『人生の乞食』は東京国際映画祭で。なかでも藁での添い寝シーンはとても危うい魅力に満ちた今年もっとも心奪われたものの一つだ。『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』にも現代版添い寝演出があったが、ジャド・アパトー関連作ならば、今年一番笑えた『俺たちポップスター』を挙げたい。また、『マリアンヌ』のクラシカルな装いでありながら、サハラ砂漠降下の冒頭から映画を覆う、いつまでも着地しきれていないかのような佇まい、奇妙なまどろみを一気に覚醒させる両目失明男シーンの強烈な鮮やかさにも今年のベストを。
そのほか、実在の事件・事故を同時期に同俳優主演でほぼ同じ構成で撮ったように見えるピーター・バーグは一体なんでしょう……。マーク・ウォルバーグの妻役の二人、ケイト・ハドソンとミシェル・モナハンの扱いの違いなどは個人的に面白かったが。
『ジョイ』と同じく劇場未公開作だと、Netflixオリジナル映画『ザ・ベビーシッター』の小品ながらも(だからこそ?)フルスロットルなマックGが好印象だった。そんななか、個人で上映活動をしている岡俊彦氏が主催した「アメリカ映画が描く”真摯な痛み”」で特別に上映された『ジョージア』は映画自体はもちろん、その活動自体にも心から賛辞を贈りたい。最高である。

書籍ベスト

  • 『ライフ・プロジェクト 7万人の一生からわかったこと』ヘレン・ピアソン著/大田直子訳(みすず書房)

    「生まれながらの落後者」はいつの時代も常に厳しい人生が待ち受けるのか。ゆりかごから墓場まで、人の一生を記録し続ける驚異のプロジェクト(もちろん現在進行形だ)を完遂せんとする科学者・医学者たちの壮大すぎる熱情と常軌を逸した仕事量……。大田直子氏の訳書では『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語 新・人類進化史』もあったが、同シリーズを去年挙げたので今年はこちらにした。

  • 『最強の女 ニーチェ、サン・テグジュベリ、ダリ・・・天才たちを虜にした5人の女神』鹿島茂(祥伝社)

    何冊もの新著と「ALL REVIEWS」の立ち上げで今年は間違いなく鹿島茂イヤーだ。いまだ不倫だ浮気だと盛り上がっている現代日本で上梓された、“女性週刊誌的な「関係はあったのかなかったのか」という問題設定では”到底掴みきれぬ『最強の女』はぜひとも2017年の一冊に挙げておきたい。男性映画監督も多数登場!

  • 『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット著/東辻 賢治郎訳(左右社)

    イギリスの官僚サミュエル・ピープスの日記から察するに、彼が妻と散歩に出かけたとき一番興味を持ったのが庭に干されていた王の愛称の下着だったという、かなりのがっかりエピソードにどこか心を動かされるのは、本書が書く通り、“人生をかたちづくるのは、公式の出来事の狭間で起こる予期できない事件の数々”だからだろう。特に第二部の前半まではすこぶる面白い。

三浦翔 (NOBODY)

映画ベスト

  • 『わたしたちの家』清原惟
  • 『甘き人生』マルコ・ベロッキオ
  • 『レット・ザ・サンシャイン・イン』クレール・ドゥニ
  • 『希望のかなた』アキ・カウリスマキ
  • 『沈黙ーサイレンスー』マーティン・スコセッシ

ここに選んだ5本は、様々な意味での「救済」を巡って映画とは何かという問いを揺さぶるものであった。そして、シネフィルに限らないあらゆる友へ自信を持って薦めることの出来る5本である。上から自分自身への影響が大きかった順である。
個人的に2017年は大学院の研究を進めていく中で迷路に迷い込みとても辛い一年であったのだが、清原惟の『わたしたちの家』は映画は面白いということを力強く導いてくれた。これぞ映画だ、という気持ちを久々に味わせてくれたベロッキオ『甘き人生』と高速のダイアローグによって展開される論理の狭間で所有も支配も出来ないイザベル(ジュリエット・ビノシュ)の生を描き切ったドゥニの『レット・ザ・サンシャイン・イン』は、終電を逃してまで話し込みたくなるような最高の映画であった。また、日本とアメリカが結託しテロリズムとミサイルの脅威が盛んに宣伝された2017年だったがスコセッシの『沈黙』は徹底して絶望を突きつける。『沈黙』とは単に西洋の信仰と日本の文化的・宗教的対立を描いた映画ではなく、搾取され続ける奴隷たちの救済の不可能性を描く映画であったのではないか。だがロドリゴが内面の信仰を保持したことで満足しているスコッセシには異論を唱えて、沈黙の秘密結社を描き切ったカウリスマキの『希望のかなた』には最大限の賛辞を送りたい。
今年は多くの映画が面白かった年で、他に『午後8時の訪問者』(ダルデンヌ兄弟)『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス)『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ)『未来よ こんにちは』(ミア・ハンセン=ラブ)なども強く心に残っている。反トランプ効果なのか、なぜかアメリカ映画が面白いと思える機会が増えたことも印象的だった。

パフォーマンスベスト

  • 『を待ちながら』作:山下澄人 演出:飴屋法水@こまばアゴラ劇場

    ゴドーではなく「だれか」を待ちながら。飴屋作品のエモーショナルに押し切る部分が抑えられ、山下澄人によって飴屋演劇の最良の部分が戯曲=言葉の効果として上演される感動的な舞台であった。現代版のアングラ演劇としても興味深く見ることが出来た。

  • 『バルパライソの長い坂を下る話』岡崎藝術座リーディング公演(作・演出:神里雄大)@早稲田大学小野記念講堂

    恥ずかしながら岡崎藝術座の本公演はまだ見たことがない。海外での経験が全く世界観を広げない作家はたくさんいると思うが、主宰の神里雄大は違う。彼の戯曲からは日本という枠を越えていく圧倒的な力を感じる。こんなに凄い戯曲を書ける人が日本にいたのか、という衝撃的な出会いであった。

  • 『エモーショナル』バストリオ(演出:今野裕一郎)@BUoY北千住アートセンター

    BUoYでの公演をたくさん見ている訳ではないけど、まだ施工中の空間をこれほど効果的に使うことが出来るのはバストリオだけではないだろうか。「ここ」と「よそ」の問題が、そこにいる役者たちとともに作る演劇として「ここ」に回帰してきたことに感動した。

  • 『ワークショップ』山縣太一WS公演@急な坂スタジオ

    身体=役者の方法を探求する山縣太一のWSで発表された作品であるが、オフィスマウンテン作品と比べてここまで戯曲として面白くていいのかと驚いた。横国の同期である岡田勇人が戯曲&役者デビューをしたことに賛辞を送りたい。お客さんを含めた圧倒的な数の身体がグルーヴィーにかき回される。

  • 『フィーバー・ルーム』アピチャッポン・ウィーラセタクン@KAAT

    マルチスクリーンでありながらもインスタレーションアートのように空間を構成するのではなく、マルチスクリーンに渡った視線の誘導によって展開していくこと、そしてプラトンの洞窟への応答として光の光源とスモークで影=幽霊を見つめさせること、またこの作品の外的な制作環境も含めて、新たな時代の映画=劇場=演劇とは何か、その可能性はアピチャッポンとともにまだまだ考えることが出来る。

渡辺進也 (NOBODY)

映画ベスト

  • 『ファンさん』ワン・ビン
  • 『ハクソー・リッジ』メル・ギブソン
  • 『甘き人生』マルコ・ベロッキオ
  • 『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』ケリー・ライヒャルト
  • 『散歩する侵略者』黒沢清
  • 『夏の娘たち~ひめごと』堀禎一

2017年は見るはずの映画を見逃している(特に後半期)。なので、あまり自信を持ってのベストではない。その自信のなさが6本という数に出ているような。例年通りに順不同だが、1位は『ファンさん』(ワン・ビン)にしたい。ファンさんの、あるいは撮影者の一挙手一投足に慄く。天井を見てばかりいる人と下ばかり見ている人の視線がぶつかる過激さということでしょうか。
今年最も印象的な俳優は自信を持って、エル・ファニング。空っぽの器とでも言いたくなるようで、周りの登場人物は思わず彼女に吸い寄せられてしまう。
NetflixだMUBIだと配信系の映画が一方でたくさんあり、それが理由とも思わないけど、誰もが同じタイミングで見ている映画というものがかなり限られてしまっている気がしているこの頃。

その他

2017年の何かというのが特別思い浮かばないので、住んでいる街・北区十条のベストな飲食店を紹介します。10年住んで思ったのは、十条の飲食店はレベルがそこそこ高いということ。店の入れ替わりが結構激しい中で生き抜いて来たことはある。あまり来ることもないと思いますが、近くまで来た際には参考ください。

  • 梅の木(喫茶店)

    駅周辺に喫茶店は多くあるけど、結局ここに行くのは、広さといい雰囲気といい居心地がいいから。珈琲がとても飲みやすくて必ず2杯飲んでしまう。

  • 斉藤酒場(居酒屋)

    他にも有名な居酒屋はたくさんあるのに、あまり開拓できていないのはここで十分満足だから。絶対頼むのはシメサバで、行くとだいたいそれと煮込みで飲んでいる。ホールのお姉さんたちがとても気さく。

  • 三忠食堂(定食屋)

    アジフライとかカキフライとかの魚を頼むのが量も多くて美味しい、まさに街の定食屋。昼間から飲んでいるおじさんがいるのが十条的。

  • ユマ・ミーナ(カレー)

    すみたが赤羽に移転してしまった後の、十条住人たちのうどん欲を満足させる讃岐うどんのお店。開店直後の11時に行って打ちたてのうどんができるのを待つのがよい。うちたてのうどんって違う。

以下、お持ち帰り篇


  • 丸十サンドール(パン)

    行くならやはり開店直後の7時に。惣菜パンから菓子パンまで外れがないけど、どれかひとつと言われればやっぱりクロワッサン。いいバターを贅沢に使っているに違いない。

  • だいわの餃子(餃子)

    おじさんたちが黙々と餃子を焼いている、出来立て持ち帰りの専門店。十条銀座で買い物した奥様たちが晩御飯のおかずを求めて最後に立ち寄る店、だろうか。自分史上一番好きな餃子。