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juin 18, 2008

The odds is gone,And there is nothing left remarkable

「死のグループ」が終わった。熱戦に次ぐ熱戦を期待していたが、終わってみれば、好ゲームだったのは、ルーマニアの誠実さは記憶に残りはするものの、オランダがらみのゲームだけで、結局、ベスト8に進出することになったイタリアも、そして、最終的に1分2敗という惨敗に終わったフランスも、フットボールに貢献する瞬間をまったく見せることができなかった。すでに「死に体」だったチームが醜い姿を晒しただけだ。
 まず勝ち残ることになったイタリアについて。対フランス戦を勝利に終えることができたのも、まったくの偶然だ。ルカ・トーニはただの木偶の坊に過ぎないことが誰の目に明らかになった。まだそれでもときおり煌めきを見せないではないピルロを除いて、他の選手たちはもう盛りをずっと前に終えてしまった「昔の名前」に過ぎないことを白日の下に晒した。アビダルがトー二を倒して得たPKもデ・ロッシのFKがアンリに当たって方向が変わったのも、リベリの怪我もアクシデンタルなものでしかない。カンナヴァロが怪我をすれば守備陣が崩壊し、ガットゥーゾやアンブロジーニが歳をとれば中盤の速度はなくなる。すでにこのチームにインザーギのような職人はいない。そして「誰もいなくなった」。結果だけが残っている。
 帰国の途につくフランスについて。この国のフットボーラー育成の方法については議論する必要がない。各国リーグを見ていればこの国が豊かな才能を生み出すのに長けていることなど誰にでも分かるだろう。センターバックではローマのメクサス、サイドバックではアーセナルのクリッシとサニャ、そしてミッドフィールドにはリベリとフラミニ、そこにアーセナル入りが噂されているナスリを初めとする87年世代が加わる。だが、25歳ぐらいのちょうど素晴らしい年齢を迎えた選手の何人がこのチームに選ばれているのか? 98年の黄金の世代とそれ以後との実力差が大きすぎるという批判はまったく当たっていない。人材の宝庫なのに、その人材が活用されていない。マケレレやテュラムは犠牲者だ。特にこのゲームを代表の最後のゲームと自ら考えていたテュラムは、アビダルがレッドを喰らっても出場機会は与えられなかった。つまりすべては「セレクショナー」の責任だ。さっき選ばれなかった選手たちの氏名を書き連ねて、彼らが出場し、「コーチ」から適切な指示を受けた場合、対オランダ戦でどんなゲームを見せてくれたかを想像せずにはいられない。GKのクペ、バックラインは右からサニャ、メクサス、ギャラス、クリッシ、ミッドフィールドはジュリ、ナスリ、フラミニ、リベリ、2トップにベンゼマ、そしてアンリ……。両翼の速度はオランダよりも速いはずだ。このメンバーならユーロ優勝も狙えたろう。もし敗れたとしても、2010年のために大きな財産になる時間を若い選手たちに与えてくれたはずだ。
 今朝からずっとレーモン・ドメネクと伴侶であるスポーツジャーナリストのエステル・ドゥニ(美形!)のことを調べているが、かつてピレスやジュリがこのチームに選ばれなかったのは、ドメネクの恋敵だったからだ、というブログを読んだ。98年世代のひとりヴィセンテ・リザラズは、これでディディエ・デシャンの番だ、と語っている。ロジェ・ルメールが去り、ジャック・サンティニが去ったとき、次はデシャンだ、ローラン・ブランだと言われたが、ダークホースのドメネクをエメ・ジャケが支持したときからすべての失敗が始まっている。ずっと前からデシャンとブランの番だったのだ。
 オランダ。ファンバステンのやり方はドメネクの対極にある。カイト、ファンデルファールト、スナイデルにゲームの仕切を任せ、ファンニステルローイには好きにやらせることでレアルでの彼の好調を維持し、切り札にロッベンとファンペルシ、副産物としての大いなる発見にエンヘラール。この日のルーマニア戦は、店晒しの選手起用だったが、ゲームを見ると、全員が俺は店晒し要員なんかではない、俺たちがプレーするのを見て欲しい!とばかりの全力投球!戦術を与え、選手交代にセレクショナーとしてのゲームを読む力を見せつけ、そして絶対的な勝利をたぐり寄せるファンバステンは本当に見事だった。特にルーマニア戦はポゼッションが8割近くになったがなかなか点の入らない「いつものオランダ」も垣間見えたが、エンヘラール→ファンペルシのラインを何度も辛抱強く試み、このゲームの完勝している。観客席のクライフも満足しているだろう。

*このコーナーのタイトルはどれもシェイクスピアからの引用です。

投稿者 umemoto youichi : juin 18, 2008 11:08 PM