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July 28, 2005

2005念7月28日

彼のペニスは小さくて、真性包茎で遅漏だ。前回彼が来たとき、私は時間配分を読み誤り結局彼はいくことができずに帰っていった。それまでにも何度か足を運んでくれていた彼は、しかし回を重ねるごとにいきにくくなっていっていた。アヌスでの興奮も知る彼は、ソフトな性感エステからハードなM性感まですべてこなし、私は持ち球を使い果たしてしまっていた。彼も私もふたりで行う性的コミュニケーションにすっかり慣れてしまっていた。彼がイけずに帰ったその日から3ヶ月くらいったったろうか、もう来ないかと実は安心していたころに彼は素知らぬ顔でお店にやってきた。私は彼の顔を見るなり前回の失態を思い返し図らずも苦笑していた。
「きゃはぁ!」興奮すると彼は特有の高い声を上げ私に抱きついてくる。彼にとっては全身に力を入れた緊張状態が快楽と大きく結びついているらしいことを私もなんとなく感じている。しかし身体が大きく太った彼に力一杯抱きつかれると、仰向けの彼に騎乗位でまたがる私は自分の身体を支えることすら困難になる。ましてその状態でペニスを握る手に力を入れることは不可能だ。彼ももちろんそのことに気がついている。私は笑顔で彼の腕をすり抜ける。「じっとしなさい!」言葉攻めで彼をはぐらかす。「あ、ごめんね」。素に戻った彼は優しく私に言葉を返し、また仰向けで膝を立てる。彼のペニスは劇的に収縮する。どうしようもない。私はペニスへ唾液を垂らす。彼を見上げ、視線を隣に立てかけられた大鏡へと促す。彼と私の卑猥な姿が映っている。私は綺麗に見えるように背中をぐっと反らせて胸を張る。彼の身体にまた力が入る。視線を彼に落とすと、彼が私に抱きつこうとおあずけをくらった犬のようにウズウズしているのがわかる。きりがないのだ。私は立ち上がって彼の頭の隣に腰をおろし、両ももで彼の顔を挟む。ギュゥッと力を入れると、その顔が醜く変形する。そこから彼の下半身へと手を伸ばす。しかし身体の大きな彼の下半身は遠い。腰をあげ、69のような格好になり彼のペニスを握る。より刺激を与えるために、私は左手でその皮をできるだけ根元まで押し下げ、右手で敏感になった先端に触れる。彼が再び声を上げ私の太ももに抱きついてくる。私はバランスを失い彼の股間によろけ、手は身体を支えようと彼のペニスから離れる。「こら、じっとしてっていったでしょ?」「……ごめん」。様々な体位を試みたとしても、結局は興奮の極地でその相手にしがみつきたいという彼の性癖は、私たちの営為を寸手のところで妨げる。彼も私も気がついているのだ。
時計をみると、いくべき時はもう来ているのがわかる。私は並べておいた大人のおもちゃの中からペニスバンドを取り出す。焦る気持ちを抑えゆっくりと彼に見せながらパンツのようにそれをはいてみせる。彼がその先端を丁寧に舐め回す。騎乗位で彼にまたがる。じりじりと探りながら、そっと彼のアヌスにペニスバンドを差し込む。彼はすぐに声を上げる。リモコンのスイッチを入れると、ピンク色のペニスが私と彼の間でぶるぶると振動を始める。私は彼のペニスをさっきと同じやり方で両手を使ってしごいていく。両手を動かしながら同時に腰を動かすのは本当に難しい。ちぐはぐな違和感に慣れない間に私のペニスは彼のアヌスをすり抜け、同時に彼のペニスは収縮しお腹の肉に埋もれていく。あきらめの気持ちが頭をよぎる。私の感情を彼もまた鋭く察知する。「いけそう?」弱気になってついに身もふたもない質問が口をつく。「大丈夫だよ。」彼は無根拠な自信を示すしかない。私は自分のペニスを彼のアヌスに差し込む。無機質な音を立てるピンクのペニスが私にもかすかな快感を与える。その快感に身をまかせ、同じ快感が彼のアヌスにも響いていることを祈りつつ、両手で彼のペニスをしごく。「きゃはっ!」彼が私に抱きついてくる。お腹の肉に圧迫されて、両手からペニスがすり抜ける。私は汗とローションでぬるぬるになった肉の間から必死で小さく勃起したペニスを探り当てる。私の肩を抱く彼の腕にさらに力が入る。彼についていたローションが私にもべったりと張り付く。肺が圧迫されて呼吸がままならない。腕が痺れる。目の前に見える彼の耳に、苦しさで咽びながら息を吹きかける。彼は声を上げ、そのたびごとに私を締め上げ振り回す。彼の動きを制すことは簡単なことだ。しかし私も彼も本気でそれを拒んでいる。
私がやっていることは、「射精」を最終目標とした男女の濃厚なセッションなのだ。そろそろ、慣習化されてしまったプレイスタイルとモチベーションのその先にあるものを、模索する旅にでなければならない。

投稿者 nobodymag : 5:49 PM

July 22, 2005

2005年7月22日

私は先日たまたまマゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』を読みかけていて、そのことをあるお客さんに話していた。数日後、読み終えてみると結局この本は官能小説としては私には(『悪徳の栄え』と同じく!)まったくの役立たずだったことがわかった。今日になって彼が再びお店にやってくると、律儀に同じ本を読み終えてきた彼から言われた感想は、しかし私のそれとはまったく別の代物だった。彼は確かにこういった。「また俺がMだって思うかもしれないけど、変な話この本は下手なエロ本より全然よかったよ。ね」。もちろん私はひどく驚き彼に聞き返した。「え、つまりそれって……」「いや、Mじゃないよ」(これは彼の口癖だ)。「でもなんていうか……エロ本と比べるってことは、そもそも性的に満たされたってことですよね……」「まぁ、やっぱムラムラはするでしょ」。「……」。もちろん私もそれを期待してこの『毛皮を着たヴィーナス』を手に取ったのだ。しかし「体罰」のシーンも特に写実的というわけでもないし、「カップルのいちゃいちゃ」のシーンは微笑ましい限りだったし、「放置」のシーンも、その苦痛を快楽へと置き換える描写に強引さを感じた。もちろんそれらが作品全体の善し悪しを決定するわけではなく、私には「グレゴール」にとっての「ワンダ」の圧倒的な神秘性が全体を通して魅力的であった点で、この本は面白かったと思っていた。しかしわたしは抜けなかった。私は興奮しながら彼に質問した。「具体的にどこでムラムラきたんですか」「……あのじらされる感じがたまらなかったよね」。彼がMかどうかということはどうでもいい。そもそも私はこの本を読んで、マッゾホと現在日常的に言われる「M」には真性仮性の意味ではなく溝があるように思えたし、彼の感想を聞いてもそれは変わらない。重要なのは彼と私は性的な感受性が根本的に異なっているということだと思う。私はこれまで常連の彼の射精は何度も目の当たりにしてきた。当然それは私たちの性的な共同作業の結果だ。しかし私がこれまで性的だと勝手に判断して提供していたいろいろなことと、彼がそう受け取るいろいろなことは、ともすれば思っているほどかみ合っていなかったのかもしれないと、私は突然不安になってきた。その中で繰り返された射精は、何か奇跡的な不一致の結果でこそあったのだ。彼の何をわかった気になっていたのだろう。

投稿者 nobodymag : 9:16 PM

July 4, 2005

2005年7月4日

筋肉で盛り上がった太い腕を所在なくふり回し、荒々しい鼻息をたてるこの強そうな男は、どうやらかなりイライラしているようだ。挨拶をして顔を上げると、同時に男の舌打ちが耳をつく。アルコールのにおいがする。私は耐えかねて声をかける。「すいません……あの、怒ってます?」ずいぶん不躾な質問になってしまう。とにかくストレスをあらわにする彼が、本能的に恐くて仕方ない。「ちょっと上司ともめてね。会社辞めてやるって、飛び出してきてやったよ!」彼の声は薄暗いルームには不自然に大きい。しかも、けんかして飛び出してくるなんて。私は彼の膝に手を乗せる。なるべくそっと、口を開く。「……大丈夫?」「大丈夫!? なわけないじゃん。だからこんなとこきてんじゃん!!」彼は再び腕を振り回し、またひとつ舌打ちをする。ふくれあがった怒りのエネルギーが、今にも破裂しそうなのを、必死で押さえている、そんな感じに見える。まさか、彼は私にがっついて、そのうっぷんを晴らすつもりなのではないか。脳裏に不安がよぎる。「……そんな記念すべき日に来てくださってありがとうございます。とにかく、ゆっくり体ほぐしていきましょうね」。
私は彼をマットの上に寝かせる。顔にタオルを乗せ、ぎゅっと親指をおでこに押し当てていく。これから性感に入るまでの間、彼のために、つまり自分自身の安全のために、私はできるだけ彼のイライラを沈めなければならない。しかし一見無謀すぎるような行動をとった彼に、かける言葉が見つからない。「……」。思わず黙り込むと、彼がため息をつく。とにかくなにか話さなくてはいけない。「なんかずっと、納得いかないことで不満がたまってたんですか?」「いや、そういうのじゃないんだ。今回の企画の話でもめてね」「無茶な仕事を押し付けられたとか?」「いや、企画について意見したら、お前は間違ってるって一方的に否定されたんだよ」「でも上司の人に、言いたいことが言える関係っていいですよね」「違う。やめてやるって、書類投げつけたら、向こうも受け取ったしね」「……お互い酔っぱらってたんです?」「俺は酔っぱらってたよ。相手が冷静だったから、よけい腹が立つんだよ」。励まそうとして繰り返す質問から、少しずつ彼の陥った状況が見えてくる。まず否定形で返事をする彼の言葉は少し威圧的だが、でも抜き差しならない状況にはまって、無謀な風穴を開けざるを得なかった彼のやるせなさが、私にも痛いほど伝わってくる。彼の今後に口は出せないが、ストレスだけは置いて帰ってほしいと、心から思えてくる。話題は好きなお酒、おいしいラーメン屋さんへと次第にそれていく。彼も私も饒舌になる。
性感タイムに入る。私は笑顔で彼を見つめ、乳首をなめ、腕に頭を寄せて彼の背中へと自分の腕を回す。最初の彼とは対照的に覇気のないおちんちんは、いじりまわすと固くなり、そうかと思うとまたすぐに萎えるの繰り返しだ。「……飲みすぎちゃったんだよ」。彼は申し訳なさそうに私の手を制止する。「だめです」。私はにっこりと彼に笑いかけ、今度は彼の足にまたがる。玉をいじりながら同時におちんちんをしごく。上から唾をたらす。しかし玉にもおちんちんにも張りはでてこない。時間ばかりが過ぎていく。「……飲みすぎちゃったんだよ」。彼が再び同じ言葉を繰り返す。「ね?」彼の手が私の手に触れる。私はじっと彼を見つめる。時間も予定を過ぎてしまっている。「……じゃぁ、お家に帰ったら、思い出して自分でちゃんとオナニーしてくれます?」彼は身を起こして私に近づく。「もちろんだよ! オナニーしたらそんなのすぐだよ!!」大きな体を縮こまらせてだだっ子をあやすように私を覗き込む彼はすごくかわいい。私はちょっと笑って、彼のおちんちんから手を離す。
帰り際、彼はゆったりと落ち着いて私にこうつぶやく。「今日はありがとう。癒されたよ。また絶対指名するからね」。私も彼の言葉に応える。「うれしいです。いつでもお待ちしていますね」。
部屋を彼が出て行く。仕事を投げてしまった彼の脳裏は、明日への不安でいっぱいで本当はオナニーする余裕などない。私も、決して安くはないこのお店で、彼は二度と私を指名しない、というよりできないだろうと思っていながら、部屋の扉を閉めるのだ。

投稿者 nobodymag : 5:37 PM