2010 (3) オーサカ=モノレール Live Report 01

 ブログの開始が遅れてしまったこともあり掲載が本当に遅くなってしまったが、昨年の12月初旬、オーサカ=モノレールのフランスでの2公演を幸運にも目撃する機会があった。

  以前、「nobody」本誌にてインタヴューさせて頂いたBorisのAtsuoさんが、バンド単位での海外ツアーの過酷さを「音楽のことも考えられない」といったような表現で語ってくれたことを思い出す。慣れない海外の土地を大量の機材を積み込んだ機材車で移動し、会場に着くなり息つく間もなくセッティング、そしてリハーサル、ライヴが終わって深夜にホテルに戻り、しばしの仮眠を取ったらまた移動、もちろん大小様々なトラブルは日常茶飯事……。 「1968〜72年のFUNKサウンドを現代に蘇らせる 」というコンセプトをその支柱にするオーサカ=モノレールもまた、2006年から毎年ヨーロッパツアーを敢行しているバンドだ。海外という異なる時空の中で、後ろ盾のほとんどない音楽の旅を実践している人たちの姿を直に目にし、耳にすること。その経験に伴う実感をここに率直に綴りたいと思う。

 

03.12.2010  Marseille, FRANCE "Cabalet Aleatoire"  

 マルセイユまで、パリからTGVでおよそ3時間。12月に入る前から粉雪のちらついた厳冬のパリに比べ、マルセイユの気温は5〜10℃近くも高い。夕方まで市内を軽く散策してからホテルに戻り、この日のライヴは22時を回ってからのスタートということもあり、ホテルでしばし仮眠を取る。しかし21時を回った頃に、なんとオーサカ=モノレールの移動中にトラブルがあり、スタートが深夜1時を回るとの知らせが入る。心配を胸に24時過ぎに会場のCabalet Aleatoireへと向かう。恐ろしいほどに人気のない通りを怖々進み、港町らしい貨物倉庫などが立ち並ぶその先に会場を発見。受付へと向かっていると、車から降りる楽器を持った日本人らしき人々の姿を見る。オーサカ=モノレールのメンバーだ! 文字通り、本当にギリギリの到着。タイムテーブル自体はすでに変更されていたものの、予定されたスタートまでは30分足らずしかない。息を切らせながら機材を手に急ぐメンバーの姿を目にしながら、会場内へと足を進める。場内は7割くらいの入りだろうか、ビールやドリンクを片手にフロアの数百人の観客はすでに思い思いに踊り始めている。

 予定時刻をしばらく過ぎてから、MCに導かれてオーサカ=モノレールがステージに現れる。「Get Ready」のキャッチーな前奏が流れだすと、会場の歓声が一気に高まる。ここで正直に告白しておくと、恥ずかしながら音源は耳にしていたものの、オーサカ=モノレールの生の演奏を見るのは初めてのことだった。まずはその骨太な音像に耳を奪われる。ひとつひとつの楽器が奏でる音は決して派手なものではない。奇抜なエフェクトもなく、奇抜なリズムもなく、しかしストイックな音の集積そのものがガツンと体全体に染みわたる感覚の心地良さに打たれていると自然とアルコールが進むというものだ。

 数曲のインストゥルメンタルを演奏後、ステージにフロントマンの中田亮氏の姿が現れる。ガッチリとした体躯でマイクスタンドを抱えるように構え、全身でリズムそのものを体現するかのような身振りで、バンドサウンドを引き連れていくその姿には魅せられざるを得ない。どこかコミカルで、しかし一切の妥協を魅せないそのパフォーマンスは、オーサカ=モノレールのまさしくひとつのリズム・セクションであり、そしてひとりの指揮者としての身振りだ。

 ふと会場内を見渡すともちろん誰もがその音楽に身を任せて身体を揺らしている。年長のカップルたちが見つめ合いながら肩を組んで踊る姿は、日本のライヴの風景ではあまり見かけないもののような気がする。ミドル・テンポの楽曲に併せて回転するミラーボールのエフェクトが、まるで映画のワンシーンを彩っているようでなんだかとても嬉しくなってしまった。

 さて、個人的にこの日のハイライトとなったのは、このバンドのふたりのギタリスト、速水暖氏と池田雄一氏のふたりのソロパートだった。速水氏のペンタトニックを基調としたブルーズの畳みかける泣きのフレージングに対して、巧妙にスケールアウトを織り交ぜながら永遠に続くかのようなメロディを変幻自在に紡ぐ池田氏のプレイ。音楽的な出自がまったく異なるというこのふたりのギタリストの妙を、もっともっといろんな形で耳にしたいと思わされた。

 この日のステージが終わり、心地良い疲労に包まれていた会場を後にしたのは午前4時過ぎのことだった。

オーサカ=モノレール公式WEB