group_inou  New album『ESCORT』インタヴュー

小誌25号にご登場いただいたgroup_inou、彼らの快進撃はどこまで続くのか。1stフルアルバム『FAN』以来の新作となるミニアルバム『ESCORT』は、group_inouの現在を明瞭に刻みこんだ力強い作品に仕上がっている。彼らの音楽をお気軽なエレクトロ・ヒップホップだと思い込んでいる人たちにこそ、その艶かしさや攻撃性をこの1枚で体感して頂きたい。『ESCORT』に伴うツアーを控えたimai、cpのふたりに再び話を聞いた。

――今作『ESCORT』は今までの作品に比べるとボトムが強くなり、ファンク的な感覚も増しているように感じました。cpさんのMCもよりパーカッシヴになったように感じます。

imaiあんまり意識してないですけど自然にですかね、なんとなくライヴとかのフィードバックでそういう風にはなっていったのかもしれないですね。ボーカルに関しては佐藤君(CP) が大まかに「こういう雰囲気で」みたいなガイドでエフェクトをかけてて、それを聴いてもらってmatsu   take(松竹剛)さん流にお任せしました。

cp単純に録音するときの技術が普通に上がったのかなと。それで自然により良くなったのかな。(matsu   takeさんから)返ってきたら想像以上のものができていました。

――リズムパートも『FAN』と比べてかなり複雑なものになっているとも感じました。

cp特に5曲目の「BOTTLING」を聴くと良くわかるんですけど、単に打ち込みのドラムではなくて、生ドラムのようにシンバルを鳴らしたときにはハイハットが一回少ないとか、そういう感覚で打ち込んでいると感じました。

imaiそんなに考えてはないんです、パッと作りながら自然に出てきます。事前にこういうの作ろっかなと考えているときもありますけど、でもそうはならないですよね(笑)。曲を頭の中に思い描いているというより、打ち込みの機材だとかパソコンだとかを触りながら、自分で聴いていい感じだなと思ったらそれを採用していくというか。細かい構成に関しては佐藤君とのやりとりの中で詰めていく感じです。

――1曲目の「ESCORT」、2曲目の「CHAIR」ではともにアスリートというか、「肉体」みたいなものがテーマになっているようですね。

cp「ESCORT」のTRACKを聴いて最初に思いついたのはシルヴェスタ・スタローンでしたね。ロッキーが階段を駆け上がって行って「エイドリアーン!」って叫ぶ画とか、シュッシュッって走ってる画が浮かんできたんです。途中から違う方向に行ってしまったんですが、前半はアスリートのトレーニング風景みたいな感じで。それが「CHAIR」につながっていったかもしれません。ちょうど録音してるときにオリンピックがあって、そこからのインスピレーションで。スキャンダルのような話も、だいぶ前におぼろげで覚えていたような話と、最近のオリンピックであったことを混ぜたみたいな。でもフィクションですよ。

――3曲目の「RIP」の歌詞には80年代という具体的な数字が出てきますが。

cpこれは自分的なリスペクトです。これ録ってるときに『ロボコップ』を見たんですよ。今の映画にはない匂いとか質感とかを感じまして。人が撃たれて本当に痛いとか、なんかよくわからない液体が凄い出てくるとか。最近の映画はCGで人が死んじゃったりとかしますけど、ガソリンスタンドを本当に爆発させていたりとか、そういうのがたまんなく良くて。ああいう時代の「一発で撮るぞ」っていう緊張感とか、匂いとかがすごく良かったです。『グレムリン』も見たかな。映画は普段あんまり見ないんですけど。

――たとえば近年の80年代風なエレクトロ・ポップのリバイバル・ブームには違和感を感じるところがあったり?

imaiその人自身の感じが入っていれば表面的なサウンドは何でもいいと思うんですけど、それを感じる音楽は僕の知ってる限りでは少ないですね。だからって興味が無ければ聴かなければいいだけなんでいやだとも思わないですけど。でも、まあサウンドで言えば、ここ10年20年はほとんどリバイバルですからね。

――何か具体的に思い入れの強いものってあるんでしょうか。

cp漫画だと『AKIRA』ですね。劇場版の方が好きです。あと『シティーハンター』のサントラが凄い内容が濃いんですよ。

imaiTMネットワーク?(笑)あとはブラック・ミュージックですよね、70年代80年代だと。というか黒人はいつの時代も凄いです。80年代のミュージシャンは面つきからしても、もう最近の人たちとは全然違いますよね、今の大学のサークルノリでそのままミュージシャンになったような人たちとは。

――「SOS」はイノウのメロディアスな部分が非常に目立ちますね。そういった要素は全体を通しても以前に比べより強くなったように思います。

cpちょうどマイケル・ジャクソンの『HISTORY』というアルバムを聴いてたんですよ、そういったものを自分なりにやってます、誰もそう感じないと思うんですけど(笑)。

imai久保田利伸も聴いてました。『the BADDEST』というベストアルバムを100円で買って(笑)。そのアルバムは歌もサウンドも最高です。バキバキで、メロディもあるし。まあ、同世代の人たちよりはよっぽど自分たちに近い感じなんですよ。

――今回のアルバムははじめからミニアルバムとして制作されていたんでしょうか?

imaiできたらフルでもいいかなとは思ってたんですけど、まあ時間を多く使って集中したかったんで、5曲に絞ったっていう。トータルで20分切るくらいですね、『FAN』も10曲で30分くらいでしたが、全部1曲3分くらいなんで。自然に出来ていった流れでやると3分、2分、4分くらいになるんです(笑)。

――今回cpさんのリリックがのってから一番変わったなって曲はどれなんでしょう。

imai全部変わりますけど、まあ「ESCORT」と「SOS」はびっくりしましたけどね。

cp最初違う歌詞が載ってたんですよ、それをまっさらにしたらどんよりした曲だったのが一転して、もうわけのわからない曲に(笑)。

imaiもっと歌っぽいって言うか、いまの「SOS」も歌っぽいけど、もうちょっと暗い感じなのが載ってましたね。トラックも結構変えて、ちょっとポップな感じにしてっていう風になりましたね。まあ「SOS」と「ESCORT」はその歌詞と歌い方と他に誰も作れないですから(笑)。

――今回『ESCORT』を制作するにあたって特に気を使っていたことはなんでしょう。

imai作ってるときに楽しくやれるようにスケジュールはコントロールはしてました、変な方向には行かないように。締め切りによってテンパって何も出てこなくなったりとか、ヘンな感じになったりするのは、ふたりの性格の問題もあってわかってるので、そういう過去の経験から『ESCORT』を作るときは結構計算してました。何にせよ問題は締切です。良い環境であれば中身はおのずと付いてくるので。自分たちが面白がってつくれる環境作りをしとけば、頭で考えなくても作品に宿るんで。だから環境のことは考えてましたし、考え過ぎないようにってことも考えてました(笑)。『ESCORT』は結構巧く行きましたね。たとえば松竹さんを含め、誰か一人でもテンパったりしたら、一気にプランも崩れておかしくなったかもしれないですけど、でもほとんど予定通りにいったというか、呼ばれたかのように、それこそ“ESCORT”されて……ここ使って下さい(笑)。

――そういった環境は『FAN』のときは結構違う感じでした?

imai『FAN』が出てひとしきりけじめがついたというか。意外と何年もアルバム出さない人もインディーズで活動してる人たちにはいたりするんですよ。だから1年後で5曲でも全然いいかなってのはあって。余裕はありましたよね、いい意味で。

――今作に関してどんなところを聴いてほしいと思われていますか。

imaiそういうことで言うと、『ESCORT』はとりあえずCDで聴いてほしいですね、いきなり圧縮したMP3じゃなくて。それに凄いこだわりがあるわけじゃなくて、自分も他の人の音楽はiTunesに入れて聴いてるんですけど、1回は自分たちと同じ環境と言うか、同じ環境にはできないんですけど、普通にCDで聴いてほしいですね。

cpなんか、最終的にはiPodで聴いたりもしてるんですけど、買ってきてCDで聴いて、それからi-Podに入れるっていう流れが一回あるだけで、なんか変わる気がしてて。

imai今回パッケージとかも特殊仕様で作ったんですけど、声高に「データ化反対!」みたいなのとか「物を大切に!」ってことじゃないんですよ。ただ単純に、自分たちがデータで音楽を買わないし、そこはやっぱり大切にしたいというか当たり前のこととして。強制はできないんで絶対は無理なんですけど、一回はCDで聴いて、可能ならデータにしたときはwavで聴いてほしいですよね。MP3にするとかなり音が変わってくるんで。

――4月28日からはツアーが始まります。関西での初ワンマンも予定されていますが、5月30日の代官山UNITでのファイナルではサプライズを用意されていたりしますか?

imaiありますよ、演出面で。またでかいことをやります、うまく行けばたぶん(笑)。それとピンポイントなんですが、6月に「極東最前線」があります。イースタンユースは学生のときからすっごい好きで、そのイベントに呼んでもらえてもうフェスに出なくてもいいと思いました。いや、ホントは大きいステージも出たいですけど(笑)。

cp「お前極東出るんだぞ」って自分たちに言ってやりたいですよ(笑)。imai君と一緒に見に行ってるんです、10代くらいの頃に。

imaiどのライヴも気合が変わるわけじゃないですけど、でもそのライヴは気合入れてやらないとな、と。いちファンとして恥ずかしくないように。

※group_inouインタヴューは小誌30号にも別内容にて掲載予定、そちらも是非お見逃しなく!

『ESCORT』

  • 01.ESCORT
  • 02.CHAIR
  • 03.RIP
  • 04.SOS
  • 05.BOTTLING
  • 09/04/22 release 1785yen(tax in)
  • CD / GAL / GALS-006
  • 2nd mini album / 5tracks
  • Vocal Mix   Vocal Edit by matsu   take (SPOTLIGHT records)
  • mastering by Masayo Takise (M's disk)
  • designed by poser graphics (iseneehihinee)

"ESCORT" tour!!!

4/28(火)新潟RIVERST 5/21(木)今池HUCK FINN
4/29(水)松本ALECX 5/23(土)神戸BLUEPORT
5/10(日)水戸CLUB SONIC 5/24(日)京都METRO
5/16(土)福岡PEACE 5/30(土)代官山UNIT
5/17(日)十三FANDANGO  

『極東最前線~俺達まだ旅の途中~』

6/17(水)渋谷CLUB QUATTRO
w/ eastern youth

*詳細はオフィシャルサイト(http://g-a-l.jp/group_inou/)にて

group_inou(グループイノウ)

imai(Track)、cp(MC)によるユニット。2008年待望のフルアルバム『FAN』をリリース、インディーチャートを大いに賑わせた。『ESCORT』はそれからおよそ1年ぶりの新作音源となる。
Official:http://g-a-l.jp/group_inou/

写真 makoto kamada
取材・構成 田中竜輔