ニューアルバム『_』発売記念公開インタビュー 2010年6月18日(金)@タワーレコード渋谷店 B1「STAGE ONE」

6月、大雨が東京を通り過ぎたその日、タワーレコード渋谷店にて行われた彼らの最新作『_』発売に伴うインストア・イヴェントにて、公開インタヴューという形式でgroup_inouに再び話を聞く機会を得た。イベント前半のライヴ終了直後、汗だくで肩で息をしながらも、時には客席に向かって言葉を投げかけもした彼らのもうひとつの「ライヴ」をここにお届けする。
すでに『_』に伴う全国ツアーは終了しているが、その最終日に行われた渋谷クラブクアトロでのワンマンライヴは、ここで語られた彼らの音楽に対する姿勢がそのままに提示された、誠実で、そして野蛮さに満ち満ちたものであったことを記しておきたい。

――最新アルバム『_』がここタワーレコード渋谷店の週間総合チャートで2位を獲得されましたが、今回の作品はすでに様々な方面からも絶賛の声を耳にしています。

imai週間チャートは2位だったんですけど、内容的には1位だったと思います。

cp1位がB’zのTAKさん、強くて(笑)。B’zには勝てなかった、同じ2人組ですけど。

――個人的には今回のアルバムを聴いて、改めてgroup_inouというミュージシャンのストイックさというものを再確認しました。しかし同時にそこにはもちろん変化もあるわけで、たとえば1曲目の「ZYANOSE」のイントロのトラックには、以前の楽曲では「QUEST」なんかに近い曲調だなと感じさせられるわけなんですが、それに続くcpさんのパフォーマンスにはどこか「ずらし」みたいなものがあるような印象を受けます。

cpみなさん意表をつかれた感じですかね?

imai遅くて速い、暗くて明るい、そういう曲を作りたい、そこに挑戦するというのが義務だと思っているんです。「STATE」とかわかりやすいかな?そういうものが並列していたり、並走しているものではないんです。佐々木(敦)さんが書いてくれたことでもあるんですが、それは「=(イコール)」なんですよ。

cp歌詞にもあるでしょ?「真ん中遅く/左右が速い」(「ZYANOSE」)って。

――group_inouの音楽っていうのは極限としては声と電子音だけでできているわけで、そこには特別変な楽器や素材を使うという選択肢はないわけですよね。

cp機械を奴隷にしないとだめなんです。使い倒してクソみたいに扱ってやることが大切ですね。そうするといい曲ができます。

――その一方で、「表現」をするということに対してものすごく厳しい態度を取られていますよね。ここ数年で始まったわけではないですが、誰でも簡単にミュージシャンになれる、みたいな風潮に対して抵抗されている。

imaiあまり見ないようにしてますけどね、そういうのに必要以上に怒るのも腹立つし、影響されたくないです。自然に生きていく中で目に入る分には仕方ないですけど。 「音楽やってますよ」って人いる? 楽屋裏とかで「(ライヴ)良かったっすよ」みたいなのがあるんですよ、でもそういうこと言っている人がライヴを見てないことを俺は見てるんです。そういうバンドは大抵クソみたいな奴らですけど、まあいいんじゃないですかね。サラリーマンですよ、そういう人たちは。別にそいつらがお金稼いでなければそんなにイライラしないかもしれないですけど、なんかいい女連れてたりとか(笑)。地味なもんですよ、本当にまじめに音楽やってると。

――今回の作品、おそらく今までで最も楽曲の幅が広いと思うんです。それこそ「ELEPHANT」みたいなシャッフル調の楽曲もありますね。

imaiそうですね、でもあんまり初めのころから自分たちがやりたいもののイメージは変わらないんですよ。オリジナリティのあるものを作ろうと思って夜な夜な考えて頑張って作って、それを完成させて人に発表するわけじゃないですか。そうすると、今度はそれに似ちゃいけなくなっちゃうんです。その繰り返しになっちゃって。他の人に似なくなったなと思っても今度は前の自分に似てきちゃった、みたいに。そうやってずっと頭を抱えながら孤独に死んでくんじゃないですかね、たぶん。そういう職業だと覚悟してます。

cp本当に自分がいいと思ってる、影響受けたものにちょっとでも似たらそれはもうNG。それは絶対やらない。それをやったら自分が好きな作品とかアーティストに失礼と言うか、ちょっとナメたことしてんなって思っちゃう。

――作り手がどんどん怠惰になっていくということは聴き手の問題でもあると以前仰られていましたね。音楽を聴くということはお二方とも日常的なことだと思うんですが、それについてはどうお考えでしょう?

imai僕は聴くんですけどね、cp君は全然聴かないんですよ。

cp音楽じゃないものでも、映画も結構見てるふうなこと言ってましたが全然見てないんです。年間1本くらい、昨年見た映画は『ダークナイト』くらいなんです。本も全然読まないし。自分の影響を受けそうかな、って思った瞬間本能的に見ないというか。時間がないだけかもしれないですけど。

imai俺はけっこう見たり読んだりするんですけど、ピンと来るものっていうのはあるんです。昔は超適当に聴いてたんですが、自分もやり出してからなのか、音楽でも漫画でも映画でも、その人がジャンルに属しているんじゃなくて、ジャンル自体がその人になってる人が好きなんです。うちらなんてディスクユニオンではパンクコーナーに置いてありましたからね。そういうことが起きてる方が面白い。

cp勝新太郎、勝新だよ。勝新太郎は麻薬のような男って言われてたの知ってる?人間から出る燐粉というか粉というか、それに触れた瞬間中毒になっちゃう。音楽もそういうものに溢れているものしか聴かないです。

――今回のアルバムのタイトル『_』、これはもちろんgroup_inouを象徴する記号なわけですよね。

imaiうちらのですよ、みんな「_(アンダーバー)」勝手に使いやがって。これ最初にどっかに登録しておけばよかったですね。なんかみんな(パクってる人)頭の中に浮かんでるんじゃない?

――今回のアルバムでタイトルにされたということは、もちろんここが新しい出発点だという気概もあるわけですよね。

imaiそうです、その通りです。ここが新しい出発点です(笑)。

group_inou 夏フェス出演情報

8/6(金)-8/8(日)国営ひたち海浜公園 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010』
※8/7(土)に出演。 http://rijfes.jp/10/

9/11(土)-9/12(日)ニュー・グリーンピア津南 『TAICOCLUB camps'10』
http://www.taicoclub.com/

group_inou(グループイノウ)

Official:http://g-a-l.jp/group_inou/

田中竜輔=聞き手・構成
鈴木淳哉=写真