重なり合う歴史/物語(Histoire)の旅へ 
『Ashes/灰』−−広島、東京、パリ、ニューヨーク
メラニー・パヴィ監督 interview

11月14日、第1回広島国際映画祭が幕を開ける。この瑞々しい映画祭で、イドリサ・ギロ、メラニー・パヴィの初監督ドキュメンタリー作品『Ashes/灰』が招待作品として日本で初上映される。この作品の原動力は、アンナ・カリーナとともにジャン=リュック・ゴダール『メイド・イン・USA』(1966)に出演した女優であり、フランソワ・トリュフォー『家庭』(1970)の「キョウコ」のモデルとなった女性、小坂恭子だ。私たちは彼女の死からはじまり、娘である明子とともに、母親の過去、残された日記をめぐり、ふたりの女性、ふたつの世代の時間と場所を旅しながら、いつの間にか広島の歴史、震災後の日本の現在、娘である彼女自身の人生にも寄り添っていることに気づく。同時にヌーヴェルヴァーグの60年代パリの華やかさとは対極的な、ある種の残酷さを目の当たりにすることとなるだろう。本作の映画祭出品に尽力したパリ在住の䑓丸謙氏の協力のもと実現した、共同監督のひとりであるメラニー・パヴィのインタヴューをお届けしたい。この映画祭での上映を機会に、日本のより多くの観客が『Ashes/灰』に出会うことを願って……。

——この作品はあなたにとって、最初の監督作品となるのですね。

メラニー・パヴィ(以下、MP):学生のときはまず歴史と民俗学を学び、それからドキュメンタリー監督のコースで映画製作を学びました。その後、自身の短編作品を撮りながら、映画の編集技師として映画やテレビ作品にも携わるようになりました。一方で共同監督のイドリサは、まず写真家としてキャリアをスタートし、その後カメラマンとして仕事を始めています。彼の処女長編であるドキュメンタリー作品『Barcelone ou la mort』(2008)は、多くの映画祭で評価されました。彼と共同で仕事を始めたのは、幸運なことにこの作品のプロジェクトのおかげです。イドリサは明子と子供の頃からの友人で、16年間日本に住んでいた彼女に久しぶりに連絡を取ったところ、パリに住んでいた母親である恭子さんが亡くなり、その灰を日本の家族のところに持って行かなくてはならないのだと伝えられたのです。その際に、恭子さんの驚くべき人生の断片を、明子を通じて彼は知ることになったわけです。彼からその話を聞いて映画をつくるべきだと確信しました。恭子さんの出演作品、日記、資料……彼女の人生の欠片はたくさん残されてはいましたが、そのときはまだ、娘である明子自身すらも知らないことが沢山ありました。そして私たちは、この作品を制作する過程で彼女とともに手探りで多くのことを発見していくことになるのです。

続き・・・

メラニー・パヴィ(Mélanie Pavy)

フランス生まれ。編集技師、映画監督。歴史学、民俗学を学んだ後、ドキュメンタリー監督コースで修士号を取得。自短編作品を制作する。編集を担当した『Monsieur Morimoto』は、2008年カンヌ国際映画祭に出品された。2012年、ヴィラ・九条山にアーティストとして滞在。現在は、映画の仕事に関わる傍ら、パリ第10大学(ナンテール)で、日本とインドに関する博士論文を執筆している。


イドリサ・ギロ (Idrissa Guiro)

セネガル生まれ。カメラマン、映画監督。写真家としてキャリアをスタートさせ、2008年、製作・監督を務めたドキュメンタリー作品『Barcelone ou la mort』は、カヌーでヨーロッパへ渡ろうとするアフリカの移民たちを主題にし、フランス、アメリカなど12カ国の国際映画祭で評価される。メラニー・パヴィと同様、ヴィラ九条山にアーティストとして滞在していた。現在、次回作の準備のため、インドに滞在中。


『Ashes/灰』

2013年/75分/カラー/HD
監督:イドリサ・ギロ、メラニー・パヴィ
出演:小坂明子

本作は11月15日(土)20:00 より第一回広島国際映画祭 第二会場にて上映予定!
第1回広島国際映画祭 2014年11月14日(金)~16日(土)
http://hiff.jp/