まだ数えるほどの監督作品しかなく、日本で上映される機会もそれほど多くないゆえ、マティアス・ピニェイロという監督のことはそれほど知られていないかもしれない。彼の映画は、人々が生活していくなかに音楽や演劇、文学といった芸術が自然と関わりあう。『みんな嘘つき』や『ロサリンダ』といった作品では、田舎に来たアーティストや俳優たちは自然の中でおしゃべりを楽しみ、酒を飲み、歌を歌う。『ビオラ』では主人公は街の中を探偵のように動き回り、俳優たちがシェイクスピアの台詞を繰り返し演じてゆく。そうした物語が、複雑に人が出たり入ったりする長回しや画面外の音の多用、それから生演奏される音楽といった技法によって語ってゆく。
最新作『フランスの王女』を含むマティアス・ピニェイロ映画祭2015の開催に際し、NOBODY42号に掲載したインタヴューを採録掲載します。
——あなたの映画がすごく好きです。というのも、あなたの映画は私たちの住んでいる世界をそのまま肯定しているように思えるからです。
マティアス・ピニェイロ(以下、MP):映画は自分の周りにある様々なものを取り入れることができますし、それを偽る必要もないんだと思います。私の映画は、ただ自分の周りにある風変わりなものを混ぜ合わせて取り入れているだけなんです。