マティアス・ピニェイロ インタヴュー
	The world is bigger than the film.

まだ数えるほどの監督作品しかなく、日本で上映される機会もそれほど多くないゆえ、マティアス・ピニェイロという監督のことはそれほど知られていないかもしれない。彼の映画は、人々が生活していくなかに音楽や演劇、文学といった芸術が自然と関わりあう。『みんな嘘つき』や『ロサリンダ』といった作品では、田舎に来たアーティストや俳優たちは自然の中でおしゃべりを楽しみ、酒を飲み、歌を歌う。『ビオラ』では主人公は街の中を探偵のように動き回り、俳優たちがシェイクスピアの台詞を繰り返し演じてゆく。そうした物語が、複雑に人が出たり入ったりする長回しや画面外の音の多用、それから生演奏される音楽といった技法によって語ってゆく。

最新作『フランスの王女』を含むマティアス・ピニェイロ映画祭2015の開催に際し、NOBODY42号に掲載したインタヴューを採録掲載します。


——あなたの映画がすごく好きです。というのも、あなたの映画は私たちの住んでいる世界をそのまま肯定しているように思えるからです。

マティアス・ピニェイロ(以下、MP):映画は自分の周りにある様々なものを取り入れることができますし、それを偽る必要もないんだと思います。私の映画は、ただ自分の周りにある風変わりなものを混ぜ合わせて取り入れているだけなんです。

続き・・・

マティアス・ピニェイロ Matías Piñeiro

1982年、ブエノスアイレス生まれ。国立映画大学で映画を学び、後に同校で教鞭もとる。長編デビュー作の『盗まれた男』(2007)でチョンジュ国際映画祭グランプリを受賞し、その後の『みんな嘘つき』(2009)、『ロサリンダ』(2010)、『ビオラ』(2012)はベルリン、ロカルノ等の国際映画祭でも上映。ニューヨークのリンカーン・センターやトロント国際映画祭ではレトロスペクティヴも行われた。『ロサリンダ』よりシェイクスピアの翻案シリーズ「The Shakespeariada」に取り組み、『フランスの王女』が2014年のロカルノ国際映画祭のコンペティション部門に選出された。現在、最新作『Herima & Helena』などを制作中。



マティアス・ピニェイロ映画祭2015
日時:2015年12月11日(金)、12日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター
主催:アテネ・フランセ文化センター、Happy tent
http://www.athenee.net/culturalcenter
http://happytent.wix.com/happytent

『みんな嘘つき』Todos mienten

辺鄙な田舎の一軒家に、著名なアルゼンチンの歴史家の末裔と思われる若いアーティストのグループが集う。彼らは共に語らい、酒を飲み、愛し合い、音楽を楽しみ、芸術作品を偽造し、互いを監視し、陰謀を張りめぐらせる。

監督・脚本:マティアス・ピニェイロ
撮影:フェルナンド・ロケット
出演:ロミーナ・パウラ、マリア・ビジャール、フリア・マルティネス・ルビオ
2009年/アルゼンチン/75分

『ロサリンダ』Rosalinda

シェイクスピア「お気に召すまま」のリハーサルのために、俳優たちがティグレの島を訪れる。若き俳優たちは眩しい陽光と豊かな自然に恵まれた環境のなか、役柄と自身との境を次第に曖昧にしていく。

監督・脚本:マティアス・ピニェイロ
撮影:フェルナンド・ロケット
出演:マリア・ビジャール、アルベルト・アハーカ、アグスティーナ・ムニョス
2010年/アルゼンチン、韓国/43分

『ビオラ』Viola

ボーイフレンドとはじめたビジネスのためにブエノスアイレスの街を自転車で走り回るビオラと、シャイクスピア「十二夜」の演劇に取り組む女性たち。彼女との出会いが、ビオラの生活にある変化をもたらす。

監督・脚本:マティアス・ピニェイロ
撮影:フェルナンド・ロケット
出演:マリア・ビジャール、アグスティーナ・ムニョス
2012年/アルゼンチン、アメリカ/63分

『フランスの王女』La princesa de Francia

メキシコからブエノスアイレスに戻ってきたビクトルは、昔の劇団仲間にシェイクスピア『恋の骨折り損』のラジオ演劇の話を持ちかける。ビクトルのことを知りすぎている5人の女たちとの稽古は、次第に「失われた恋に骨を折る」ものになっていく。

監督・脚本:マティアス・ピニェイロ
撮影:フェルナンド・ロケット
出演:フリアン・ラルキエル・テジャリーニ、アグスティーナ・ムニョス
2014年/アルゼンチン/67分