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January 13, 2004
『ブルース・オールマイティ』トム・シャドヤック
[ cinema]
「群像」12月号での保坂和志×阿部和重の対談の中で、保坂氏は、『シンセミア』は個の視点から世界を描くのではなく、出来事を並べ立てていくことで世界を捉えている、という発言をしている。だが、『シンセミア』の場合、神町という一つの町の仕組みやそこで起こる出来事を書くことに専念しているため、神の視点のような超圧的な存在が登場することはない、と。更に、保坂氏は自身が先日行った創作学校での石川忠司とのトークショーで、石川氏がした発言を取りあげている。石川氏は、小説の書き方は個を書くか大きい世界を書くかどちらかだとした上で、最近の学生たちの問題は、大きい世界を書けないことにあると指摘する。大きい世界を書こうとすると、どうしても超越者が出てきてしまう。それを克服するために、石川氏は学生たちに、藤沢周平を読むことを勧めている。藤沢周平の世界のサイズは藩に留まっている。藩は個人の力が及ぶ一番広いサイズであり、超越的な視点を導入することなしに世界を書くことが可能となる。
『ブルース・オールマイティ』はバッファローという町が舞台となっている。神の力を授かったジム・キャリーが、人々の祈りの声の多さに悲鳴を上げた時、モーガン・フリーマンは、これはバッファローの人々だけの声であり、まだ世界の人々の声は聞こえていない、最初は数を減らしてあげたのだ、と言う。そして、ジム・キャリーが(自分のものも含め)願いを叶える範囲、そしてそのために暴動が起こる範囲も、最後までバッファローの町を出ることはない。トラックに轢かれたジム・キャリーは、最後に心からの祈りを口にしようとする。「すべての人々に平和を・・・」という彼の祈りを、モーガン・フリーマンは静かに却下する。本当に望んでいることを言えばいい、という言葉に、ジム・キャリーは自分の恋人への祈りを唱え始める。個人的な、極めて具体的な対象を持つ祈りは即座に叶えられる。
世界を考えるためには、取りあえず、個人の力が及ぶ範囲内で考えることから始めればよい。神という超圧的な存在、そして超圧的な力すら具体的な現実へと還元される。テレビの中では、バッファローの外部で起こってしまった事件(月の位置の変化によって起こった日本での洪水)が伝えられている。神の力は、結局世界全体に影響を与えてしまう。それでも、映画はバッファローの外へは決して出ていこうとしない。大きな世界は、小さな世界から生まれるのだ。
投稿者 nobodymag : January 13, 2004 09:08 PM
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