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April 24, 2004

チャンピオンズリーグ準決勝 1st Leg モナコ対チェルシー ポルト対デポルティーヴォ

[ book , sports ]

「下克上」のチャンピオンズリーグも大詰め。
まず現地時間水曜日に行われたポルト対デポル。このゲームは、セリエAのゲームと酷似した長所をつぶし合う展開。したがってシュートも少なく、展開も小さい。両チームともパスの出所を徹底して潰す。これでは点が入らない。0-0のドロー。
そしてその前日開催のモナコ対チェルシー。モナコ監督のディディエ・デシャンは幸運の星の下に生まれている。これほどやることなすことがうまく行くと「監督は辞められない」。プルソのヘッドで先制、その直後にクレスポが同点シュート。ここまでの展開は驚くこともない。どちらかと言えばチェルシー有利に運んでいる。もちろん、ひとりひとりの実力を考え合わせればチェルシー圧勝のシナリオが思い浮かぶ。前半は1-1で終了。
圧巻は後半だった。左にロタン、右にジュリ、センターにプルソとモリエンテスという布陣を、デシャンは壊す。プルソをマークするドゥサイイ。モリエンテスをマークするテリーというパターンが前半で、チェルシーのディフェンス陣はほぼ完璧に仕事をしていた。デシャンは、バランスを崩すことを覚悟して、右のジュリをセンターに移し、モリエンテスをトップ下に回す。プルソは、常に左に流れながらターゲット・マンを忠実に実行し、それは真ん中に構えるドゥサイイを左に引き出し、ゴール前にスペースを作ることを意味する。空いたスペースに、左のロタンからボールが供給され、そこにジュリとモリエンテスが飛び込んでいく。ジュリを移動させるだけで、これだけのチャンスが生まれる。
次第にマケレレもゴール前に引き寄せられ、小競り合いを起こして、モナコのボランチがレッドカード。デシャンは慌てない。プルソに代えて、とっておきのボランチ、シセを投入。ラニエリは、3バックにしてハッセルバインクを投入。グジョンセン、クレスポ、ハッセルバインクの3トップ。押せ押せのチェルシー。だが、彼らにボールが回らない。モナコは、エヴラ、ロタンで左サイドを作り、あるいは、ゴール前のジュリにロングパスを出したり、10人になってからポゼッションに上回り始める。ジュリへのロングパスを拾ったモリエンテスが見事な中距離シュートで勝ち越す。ラニエリはあわてて4バックに戻すが時すでに遅し。デシャンは、83分にお疲れ様のジュリに代えて、負傷の癒えた「コンゴの英雄」シャバニ・ノンダを送り出す。その瞬間、ロタンのクロスに右のつま先を伸ばしたノンダのシュートがゴールに吸い込まれる。3-1。モナコの完勝。デシャンの打つ手のすべてが当たり、ラニエリの打ったすべてが外れた。ディディエ・デシャンの監督としての手腕が発揮され、ラニエリの凡庸さが際だった。

梅本洋一