« previous | メイン | next »

May 7, 2004

チャンピオンズリーグ準決勝 2nd Leg デポルティーヴォ対ポルト

[ cinema , sports ]

ポルトは強い。これといって新しいことはしていないが、ディフェンスも中盤もアタックもきわめて忠実だ。特に、ゲーム開始早々は、最後まで持たないだろうと思われたプレッシングが、タイムアップまで忠実に継続する。アタックでは、デコが走り回り、デポルのディフェンスラインを錯乱し、ボールがデポルに零れても、しっかりしたつなぎに持ち込ませない。5ヶ月ぶりに出場したデルレイのPK一発で勝負が決まったが、もし判定があったとしてもポルトの圧勝だった。
勝因はさっき書いたとおりプレッシングの徹底なのだが、デポルの4-2-31のフォーメーションを完全に機能不全に陥れた。ビクトル、ルケの両サイドとバレロンのトップ下、そしてパンディアーニのトップという形で並んでいるデポルのアタック。まずボランチやディフェンスラインから両サイドに配球されるボールの出所を徹底して押さえ、ルケとビクトルにボールが渡っても、すでにポルトのディフェンスラインが完全にそろった状態に持ち込み、切り札のバレロンはほとんどゲームに登場しない。ボールをほしがったバレロンは後半にはボランチの位置まで下がってしまう有様。ビクトルが怪我で退場し、センタバックがレッドカードで退場すると、デポルにはもう為すすべがない。マウリーニョは、来シーズンチェルシー入りも噂されているが、ポルトは本当に正統的なフットボールをする。デポルのイルレタにとっては、何と言ってもマウロ・シウバの出場停止が痛い。ボランチの位置で労を惜しまぬ彼の労働は、4-2-3-1の3には欠かせぬものだったことがこのゲームを見て明瞭になった。
チェルシーは必死だった。アウェイで1-3。ホームで2-0で勝つ以外、決勝に進む道はない。事実、ゲーム開始から全開。特にランパートの出来が良く、ディフェンシヴに戦うモナコを自陣に釘付けにする。グジョンセン、ハッセルバインクも好調。ゲレンケアのクロスが幸運にもゴールキーパーの頭を越えて先制すると、メルヒオット、グジョンセンのワントゥーからランパートがヴォレーシュートを決め、前半の内にノルマの2-0を達成する。喜色満面のラニエリ。だが、その2分後、モリエンテスのヘッドがキーパーの頭を越え、2-1。ここで前半終了。
確かにグレンケアが先制点を挙げたとはいえ、チェルシーのアタックはほとんど左のジョー・コールとブリッジが作っていた。右サイドのメルヒオットとグレンケアは、エヴラ、ロタンに完敗。グレンケアの先取点もエヴラが怪我の治療でピッチを離れていた時間帯のこと。前半ロスタイムのモナコのアタックも左サイド深くにロタンが進出して、モリエンテスにマイナスのクロスを上げた結果だ。
点数としては、後半に先に点を挙げた方が有利という展開だったのだが、後半のチェルシーは元気がない。後半開始直後にランパートがシュートした以外、前半の20分までに見えた波状攻撃は影を潜め、グレンケアのミスばかりが目立つようになる。モナコは2トップはジュリーが前、モリエンテスが後ろという形で縦に並び、ジュリーは、もっぱらモリエンテスのシュートコースを開ける役割に徹している。テリー、ギャラスというチェルシーの屈強のセンターバックもラインディフェンスができないこうしたポジションに苦しんでいる。ロタンのパスを受けたモリエンテス、ディアゴナルに動くジュリー、モリエンテスのシュートコースが見事に開き、シュートが綺麗にゴールマウスに吸い込まれる。2-2。チェルシーは意気消沈し、クレスポを投入し、ラニエリがアタックのサインを出しても一向に、前半の必死さが見えない。ゲームは引き分けたが、2ゲームを通じて5-3でモナコの完勝。内容的にもデシャンの戦術が光った。チェルシーはつなぎ役のマケレレの出場停止が痛い。
決勝はポルト対モナコ。ディフェンスでは、ポルト。アタックではモナコ。アタックの強いチームを緻密な戦術で押させ込んできたポルトがやや有利か。

梅本洋一