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May 18, 2004

アーセナルの今シーズン

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プレミアリーグはアーセナルが無敗のままシーズンを終了した。全38ゲーム、26勝12分という成績は誇って良いものだろう。だが、物足りなさは残る。トレフルと呼ばれる3つの王者のチャンスがあり、そのふたつを逃したからだ。このチームは決して選手層が厚いわけではないので、3つのうちたとえばFAカップは捨て、マンUに花を持たせても良かったろうし、事実、マンUにとって今シーズンの唯一のタイトルがFAカップになるだろう。問題はやはりチャンピオンズリーグ準々決勝でチェルシーに敗れたことだ。(僕は相当落胆したから選手はもっと落胆したろうが、それでも次節のリヴァプール戦を逆転勝利し、結局、無敗でプレミアシップを終えた。)
昨シーズンの問題点は、センターバックにあったことは何度も書いたが、コロ・トゥーレのコンヴァートでその弱点は克服された。今シーズンの弱点は多くが語るようにGKのレーマンであり、レーマンでチャンピオンズリーグを落としたとも言える。だが、問題は、よく言われるようにレーマンでもないし、右サイドのローレンでもない。昨シーズンは、超モダンに見えたアーセナルのフットボールが進化していないように見えたことだ。レギュラーの固定──レーマン、ローレン、トゥーレ、キャンベル、コール、ジウベルト(エドゥー)、ヴィーラ、リュングベリ(パーラー)、ピレス、ベルカンプ(レジェス)、アンリ──は、やるべき仕事の固定化を招いているように思える。確かに中盤から前の激しいポジションチェンジは、昨シーズンも今シーズンもアーセナルの特長だが、今シーズン、それがルーティーンになっている。中盤のボールは圧倒的に支配するが、圧勝できない。けれども負けない。しかし、もしリーグ戦ではないトーナメントのゲームで激しい気迫で相手がプレスをかけてくるとき、アーセナルの根本的な基本である中盤のポゼッションが不可能になり、ゲームに敗退することもある。チャンピオンズリーグの1次リーグ初戦の対インテルもそうだったし、是が非でもタイトルをひとつは取らないとラニエリの首が危なかったチェルシーの中盤も同じだ。プレスがかかると、中盤でのパス回しがおぼつかなくなる。ときにはエドゥーから効果的なパスが出ることもあったが、ピレスとリュングベリにはスペースが必要だった。このふたりが押さえられると、このチームは危ない。事実、インテル戦はピレスから有効なボールがまったく出なかったし、チェルシー戦は、リュングベリのサイドをやられた。リュングベリが怪我の時は、ジウベルトを右に出し、ディフェンスは安定したが、アタックは滞った。
ショートパス中心の組み立てから大きなサイドチェンジを交えたり、また3バックやトップ下の採用等、チームとしてのフレキシビリティが来シーズンはより求められるだろうし、それがなければ、アーセナルのチャンピオンズリーグ優勝はないだろう。

梅本洋一