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May 29, 2004

チャンピオンズリーグ決勝 モナコ対ポルト

[ music , sports ]

このゲームは前半23分のリュドヴィク・ジュリ(モナコのキャプテン)の怪我による退場、そして71分のデコの得点ですべてが決まった。3-0という得点差は、決してチーム力の差ではない。もしジュリが怪我をせず、ポルトのアーリークロスがモナコ・ディフェンダーの足に当たり、デコの前に零れなければ、ゲームの趨勢は分からなかった。
ジュリの退場までは、モリエンテス、ジュリの2トップが機能し、ジュリは何度かポルト・ディフェンダーとすれ違うことができた。両チームとも実にバックラインをコンパクトに保ち(倉敷保男は、宮内さんこんなにバックラインが上がっていていいんですか、と何度か語ったほどだ)、ロタンが左サイドラインを駆け上がる姿や、デコが自在に動く姿はまったくなかった。得点が入るとすれば、ジュリがポルトのバックラインの背後を突くことしかなかったろう。ロタン、イバーラからのクロスやベルナルディ、シセからのパスがポルト・バックラインの間を何度か通り、そのたびにジュリが俊足を飛ばしたが、すんでのところでキーパーに押さえられるか、かすかすのオフサイド。だが、モリエンテスとプルショの2トップになると、モナコは能力は高いが、ごく普通のチームに転落する。モリエンテスの背後や右サイド奥深くに進入するジュリがかければ、ジョルジュ・コスタ率いるバックラインは何の躊躇もなくラインを上げることができるばかりか、狭いスペースを埋めて、ロタン、イバーラにアタックすることもできるようになるはずだ。
だがジュリを欠いてもプルショ、モリエンテスの2トップは健闘していた。だが39分にカルロス・アルベルトのシュートがゴール・ネットを揺らすと、とにかくモナコは攻めなくてはならなくなる。
そして後半。モナコの攻勢は続くが決定的なチャンスは生まれないし、有効なスペースを見いだすことも不可能に近い。モウリーニョも後半の入りはモナコの方がよかったとゲーム後に語っている。デシャンは、リスクを冒して攻めねばならない。64分にはボランチのシセをFWのシャバニ・ノンダに交代させている。3トップ! そして両サイドをもっと上げて2バック! モナコのポゼッションが上がり、モリエンテス、ノンダ、プルショ、ゴールを目指して突っ込んでいく。当然、ポルトは大きくクリア。零れたボールをひたむきに追うポルトの中盤。デコのゴールはそんな瞬間に起こる。
ディフェンスから入るモウリーニョ、両サイドのアタック重視のモナコ。モウリーニョの勝ち。モウリーニョは、ポルトでの最後のゲームを勝利できて嬉しいと語った。チェルシー入りは必至だろう。
華麗なゲームからは遠かったが、両チームとも、モダン・フットボールの戦術の限りを尽くして戦った見応えのあるゲームだった。だが、決勝は1ゲームのみ。ホーム&アウェイの2ゲーム、アウェイ得点2倍ルールもない。ミラン、マンU、レアルが次々に消えていった今年のチャンピオンズリーグ。金満チーム、銀河系チームと他のクラブ・チームとの間にそれほどの差異はなくなった。
さてこれからはユーロ2004だ!

梅本洋一