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July 6, 2004

ラグビー テストマッチ ジャパン対イタリア

[ cinema , sports ]

小さなパントがイタリア・ディフェンス網の裏に出て、大畑の胸に収まる。トライラインまで彼を遮るものはいない。誰もがトライだと確信し、これで15-18と3点差に追い上げると信じたその瞬間、ダイビングした大畑の手からボールが転げ落ちる。インゴール・ノックオン。「またやってしもうたな」。関西弁の冗談ですむ話ではない。大畑はプロの選手だ。こんなことがあってはならないし、「やってしもうた」という軽い言葉ではすまされない。ここ数試合で彼は重要な場面で何度ノックオンしたろうか。
A代表がかなりのゲームをしたので、久しぶりに秩父宮が満員になった。世界のランキングから言っても(19位対13位)いい勝負になるのではないかと期待された。スーパーパワーズカップでカナダ、ロシアと撃破したのも大きい。事実、セットプレーでFWはほぼ互角。昔のジャパンなら、FWが互角ならまちがいなく勝ったはずだ。「伝統工芸」のパスを磨き、紙一重のパスを通し、しかもノックオンなど言語道断。かすかすのトライを決めたものだ。イタリアにかなり絡まれはするが、確かにボールは出る。とりあえず展開はできる。問題は、そこからだ。さっぱりパスが繋がらない。躍動感あるアタックがまったく見られない。大畑のインゴール・ノックオンが生まれたのは、見る者にそうしたフラストレーションがたまり、それが飽和状態に達したときだった。
体育会系の鉄拳教師だったら、ほっぺたを平手打ちし、グラウンド10周を命じるだろう。ジャパンのスコッドにそんな低レヴェルのペナルティを課したくなるほど、大畑のプレーは自覚を欠いている。もともとトライは簡単に取れないのに、せっかくトライラインを超えてもこの有様だ。
最終的なスコアは32-19。トライ数4-1。つまりトライ数ではイタリアの完勝だが、点差はそうでもない。ペナルティを蹴った池田とドロップ・ゴールを決めた森田の力で、内容ほど点差が開かなくてすんだのだ。トライを決めた小野澤はともかく、逆サイドのウィングの平尾はまったく消えていたし、元木も出来が悪かった。大畑は? ゲームに出場する資格はない。

梅本洋一