journal
« previous | メイン | next »
November 30, 2004
ヴォルフガング・ティルマンス:Freischwimmer展
[ photo, theater, etc...]
入り口でチケットを手渡すと、「剥き出しの作品が多いですので、決して手を触れないでください」と係の女性に注意を受ける。言葉の通り、壁一面に貼られた写真のほとんどが、額にも入れられず無造作にピンやクリップで止められている。剥き出しの写真の光沢が、会場のライトに反射し、思わず目を細めてしまう。入り口からすぐのギャラリー1スペースではまだ整然と並べられていた写真が、次のギャラリー2スペースでは、無作為に散りばめたかのように雑然と写真が釣り下げられている。
一番目を引いたのは、壁の真ん中あたりに貼られた『裏から見たボール』という作品で、まさに二本の太腿とその間に挟まれたペニスを真後ろから撮影したものだ。わかりやすいと言えばわかりやすいのだが、三本の肌色の棒が並んでいる様子が、何かまるで別の物体のように思えてまじまじと見入ってしまった。見慣れているはずのものがとんでもなく異様なものに見えてしまう、そんな写真を他にも何枚か発見した。靴下が廊下に散らばっている写真や、杭のようなものに布を被せただけの被写体などがそれだ。これらの写真の前に立ったとき、どうしようもなく居心地の悪い思いをさせられる。
「即物的」だとか「リアル」という言葉を軽々しく使うのがためらわれる。この見覚えのあるはずの被写体が、それらによく似た別な何かとこっそり入れ替わっているのではないか、自分の目は欺かれているのではないかと不安にさせられるのだ。どんなに疑ってみても、ペニスはペニスでしかないし、靴下も靴下でしかないだろう。それならば、どうしてもこうも不安にさせられるのか。
三本の棒と真直ぐに向かい合うカメラの視線が、身体の表からではなく裏から用いられていることに、私が感じた不安の原因がある。どう考えても、私は普通の状態のペニスを裏から見たことなんてない。見えるはずのない/通常見ることのない場所から対象を捉えると、そこに写されたものは「リアル」から少しだけ離れていってしまう。『裏から見たボール』を見た後では、真正面から撮られた果物や人の姿さえ、そんな遠さの中にあるように見えた。
投稿者 nobodymag : November 30, 2004 11:48 PM
Search
Archive
- May 2011(12)
- April 2011(5)
- March 2011(3)
- February 2011(5)
- January 2011(7)
- December 2010(3)
- November 2010(8)
- October 2010(7)
- September 2010(5)
- August 2010(2)
- July 2010(4)
- June 2010(8)
- May 2010(5)
- April 2010(7)
- March 2010(5)
- February 2010(8)
- January 2010(11)
- December 2009(12)
- November 2009(7)
- October 2009(5)
- September 2009(7)
- August 2009(6)
- July 2009(15)
- June 2009(13)
- May 2009(13)
- April 2009(17)
- March 2009(22)
- February 2009(25)
- January 2009(7)
- December 2008(13)
- November 2008(16)
- October 2008(14)
- September 2008(7)
- August 2008(10)
- July 2008(5)
- June 2008(12)
- May 2008(13)
- April 2008(11)
- March 2008(6)
- February 2008(16)
- January 2008(12)
- December 2007(15)
- November 2007(9)
- October 2007(5)
- September 2007(9)
- August 2007(16)
- July 2007(13)
- June 2007(18)
- May 2007(16)
- April 2007(9)
- March 2007(19)
- February 2007(16)
- January 2007(18)
- December 2006(9)
- November 2006(7)
- October 2006(9)
- September 2006(11)
- August 2006(11)
- July 2006(6)
- June 2006(7)
- May 2006(9)
- April 2006(8)
- March 2006(19)
- February 2006(19)
- January 2006(4)
- December 2005(6)
- November 2005(4)
- October 2005(15)
- September 2005(19)
- August 2005(23)
- July 2005(14)
- June 2005(28)
- May 2005(21)
- April 2005(22)
- March 2005(40)
- February 2005(17)
- January 2005(8)
- December 2004(13)
- November 2004(21)
- October 2004(15)
- September 2004(8)
- August 2004(19)
- July 2004(11)
- June 2004(13)
- May 2004(13)
- April 2004(10)
- March 2004(19)
- February 2004(7)
- January 2004(26)
- 2003
- 2002
- 2001