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January 29, 2005

クサルな! 佐々木明

[ cinema , sports ]

一昨日オーストリアのシュラドミングで開催されたスキーW杯スラローム第7戦をライヴで見る。セストリエール、フッラハウ、シャモニ、ヴェンゲン、キッツビューエル、そしてシュラドミング……。開幕戦のビーヴァー・クリークを除くとさながらヨーロッパの冬季リゾート地めぐりだ。もちろんW杯の目的にはリゾート地振興も含まれているから当然なのだが、どこも本当に景色がよい。ヨーロッパ・アルプスでもう何年スキーをしていないだろう。嘆息。
さて、今シーズンの佐々木明だ。これまで7戦で、12位、5位、10位……フラッハウまでは順調だったが、シャモニで1回目に失敗してからツキがない。得意のヴェンゲンでもやっと9位(ここは一昨年60番台から一気に2位になった彼の出世コースだった)、そしてキッツビューエルとシュラドミングではゴールしていない。ランキングも次第に落ちて、今や13位。昨年は12位なのだから、あと3戦しかないスラローム、崖っぷちだ。原因はどこにあるのか?
昨年までの『何も考えていないアキラ』が今シーズンから試合運びを考えるようになったことだと思う。1本目で15 番前後に残り、そして2本目でフルアタック──これが作戦なのだが、1本目で慎重すぎて転倒してしまうことが多い。今までは「立っていればアキラ」だったが、今シーズンは、慎重深すぎて──つまり、ポイントを取りたいがために──失敗している。試合運びのアキラなんてぼくらは見たくもない。本能の赴くままに滑って、どんどんリズムに乗るアキラが見たい。1本目からフルアタックのアキラが見たい。確かによいリズムで行くこともあるが、全体のリズムを重要視するあまり、微視的なところで失敗する。インスペクションなんてしないぜ、才能あるぜ、俺は!の頃のアキラが懐かしい。日本のエース、世界のスラローマーなんて貫禄はアキラに似合わない。残すところ世界選手権を入れるとあと3戦。後に引かないのアキラの長所だから、良いときの自分をイメージして是非とも表彰台に立って欲しい。
昔ヴェンゲンのラウバホーン・レースを舞台に『白銀のレーサー』って映画があったな。トニー・ザイラーの『白銀は招くよ』もあったな、加山雄三の『アルプスの若大将』の舞台はツェルマットなったな、『個人教授』の舞台はクールシュヴェルだったな……などと考えていると、最近は、冬のリゾートの映画にお目にかかれないことに気がついた。

梅本洋一