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February 10, 2005

サッカー アジア地区最終予選
日本対北朝鮮

[ cinema , sports ]

2006年ドイツW杯をめざしたアジア地区最終予選A組の第1戦。
大方の予想はメディアの狂想曲を差し引いて3-0というもの。僕も同感だった。だが結果はかろうじて薄氷の勝ち点3を拾う2-1。大黒のシュートが枠を外していたら、このチームは緒戦から崖っぷちの戦いを強いられた。ジーコはどこまでもついている。ラッキーとしか言いようがない。アジア・カップ以来、このチームのツキは残っている。それについては後述。
3-0の予想はまちがっていないし、もちろん「終わりよければ総てよし」ではあるが、それでもやはり3-0で勝つべき相手だったように思う。曰く球際が強い。曰くフィジカルが優れている。それらのコメントは常套句の域を超えない。すでに分かっていたことだ。厳寒の中、朝5時から平壌の街をランニングしているこのチームの選手たちの姿は、メディアが語っていることだ。だが、このチームはいったいどんなフットボールをしたのか? 守りを固めてカウンター。ただそれだけ。組み立てもへったくれもない。いくらフィジカルに優れていようとも、フットボールは体力測定ではない。球際に強いなら、相手を放す能力を発揮すればよいだけだ。つまり、球際だとかフィジカルだとかは、当たり前のレヴェルであって、フィジカルの強さといっても、北朝鮮のそれは、ナイジェリアには及ばない。球際といってもセリエAの中盤の球際はもっと厳しい。中盤で徹底したプレッシングから、ボールを奪い素早く両サイドに展開するというモダンフットボールのセオリーと北朝鮮はまるで関係がないようだ。
日本代表チームは本当に奇妙なチームだ。力の差が歴然としない、というか、あるレヴェルからの上のどんなチームと当たっても同じようなゲーム展開が見られ──事実、このゲームもアジア・カップのデジャ・ヴュだった──、同じようにカスカスで勝つ。西部謙司が言ったように、ゲーム終了のホイッスルが吹かれるまで負けたわけでも勝ったわけでも(引き分けでも)ないことを知ったチームなのかもしれない。その意味では賞賛に値するだろうし、最後まで結果が分からないという意味でも(見ている僕らはハラハラするから)面白いチームかもしれない。ポゼッションして、パスを回し、一気に攻めるという戦術は同じだが、今日のゲームに関しては、相手のプレッシャーがちょっときつくなると、そこで耐えるのではなく、逃げてしまい、簡単にバックパスばかりするチームに成り下がっている。だから中盤が間延びする。だから中盤で耐えられない。後半20分の失点はまさにポゼッションも忍耐もできないことから生まれている。
そして、鈴木に代わって高原イン、田中誠に代わって俊輔イン。ボックス型の中盤を伴う4-4-2へとシフトチェンジ。日本代表は見事に甦る。俊輔はジーコの意図をジーコ以上に理解し、ポゼッションの核になり、加地とアレックスがやや下がり目になり、北朝鮮の両サイドが動けなくなる。福西と遠藤が動き始め、俊輔にボールが集まりだし、俊輔を追い越してアレックスが走る。この選手はボールをこね回し、ワンタッチでクレヴァーはパスが出せないから好きではないのだが、それでも、今夜の俊輔のパフォーマンスは、やはりアジア・レヴェルを越えている。やや疲れの見えた玉田に代わって大黒イン。得点は時間の問題と思われるくらいに押し込んでいる。だが、この状態を作るのが遅すぎる。後半の開始から強気で高原、俊輔を入れておけば、この状態はもっと早く、そして長く維持され、3-0で勝ったはずだ。このチームのハラハラドキドキぶりの現況はジーコその人にあるかもしれない。

梅本洋一