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February 25, 2005

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント
マンチェスター・ユナイティド対ACミラン 0-1
バルセロナ対チェルシー 2-1

[ cinema , sports ]

昨日に続いてファイナルのカードであってもおかしくない2ゲーム。
まずマンU対ミラン。シュフチェンコを怪我で欠き引き分けでもよしとするミランと、何が何でも勝ちに行ったマンU。両チームともワントップ。クレスポもルーニーも前半はほとんど消えている。つまり両チームのディフェンスがよい証拠。そして、後半になると、アレックス・ファーガソンは満を持してファン・ニステルローイを投入。オールド・トラッフォードで勝ちに行った。だがのらりくらりのミランは、フォーメーションを変えない。単にその必要はなかった。中盤を支配していたのは常にミランだったからだ。両チームの中盤の面子は、そのくらい大きな差があった。セードルフ、カカ、ルイ=コスタの後ろにガッツゥーゾとピルロが控え、両翼をカラーゼとカフーが駆け上がるミラン。ピルロ中心に自陣からゆっくりボールを回し、3人──それもセードルフ、カカ、ルイ=コスタ──の細かなパス交換からヴァイタイルエリアにボールが供給される。懐が深いフットボール。マンUに有効なボールが出た瞬間にガットゥーゾが襲いかかる。ネスタとマルディーニのふたりがスペースを消す。フォーチュン、ギグス、クリスティアーノ・ロナウド、スコールズの中盤が頑張ってもボールの出しどころがない。外しまくっていたクレスポが終了間際にセードルフのシュートをキャロルがこぼしたところを決めておしまい。カルロ・アンチェロティはポゼッションのフットボールはこうするのだという手本を見せてくれた。ファーガソンにミラノでのカウンター・アタックの戦術があるのだろうか? 根性しかないね。

続いて、もうひとつの「グランド・フィナーレ」。バルサ対チェルシー。ディフェンスを中心にカウンターのチェルシーに対してバルサのクリエイティヴ・アタックという構図は戦前の予想とまったく同じ。チェルシーの2列に並んだディフェンス・ラインは本当に綺麗だ。4人が中盤に、それから5メートルほど後方に残りの4人が横一列に見事に並んでいる。いつもよりもやや深めなラインだが、この間隔で2列に並ばれるとスペースどころの話ではなくなる。スルーパスを出そうにも、「どこへ?」という感じ。前半、バルサが不運なオウンゴールで1点ビハインドになったので、「どこへ?」という間隔は強まるばかり。ロナウジーニョがデコが何度も何度もスルーパスを試みるが、スルーせずチェルシー・ディフェンダーの誰かにぶつかるだけ。後半、ドログバがレッドをもらって、ひとり足りなくなってからもチェルシーは守り続ける。カンプナウの上方に設置されたキャメラからの映像を見ていると、2列に見事に並んだチェルシーのディフェンス網を少しずつ少しずつバルサが小さくしていく。大量の魚たちをくるんだ網が次第に小さくなるように、テレビのモニターの中に両チームのフィールドプレーヤ全員が収まってしまう。まるでパワープレイ中のアイスホッケーのゲームのようだ。ヴァイタルエリアの周囲をバルサのパスがぐるぐる回り、円周上を行き来するボールが軌道を変えて、円の中心方向にスピードを上げるのはいつなのかというサスペンスを感じた。わずかしかないスペースをマキシとエトーのシュートがこじ開け、ゴールマウスに吸い込まれて、チェルシーのディフェンスは終焉を迎えた。ロッベンのいないチェルシーのアタックは、プジョル中心のバルサ・ディフェンダーに完全に押さえ込まれている。ロンドンでも同じことが反復するのではないか。

梅本洋一