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March 18, 2005

『アジア最終予選』大住良之
梅本洋一

[ book , music ]

asiayosen.jpgかつて「サッカーマガジン」の編集長を務めたこの著者の書物を本欄でも1冊紹介したことがある。また「日経新聞」のWeb版での大住のコラムも毎回楽しみに講読している。来週の対イラン戦を控えてタイムリーな1冊が出版された。だが、この書物は、今回のアジア予選の展望ではない。ドーハ、ジョホールバルと、アジア予選でもなければ絶対にどこにあるか分からないだろう地名をクライマックスに、93年、97年の代表を追い、そして、05年の代表に期待する書物である。
ドーハ(の悲劇)とジョホールバル(の歓喜)の日、私はどうしていたのか、今でもはっきり覚えている。ドーハの夜、わたしは仕事を終えて高田馬場のラーメン屋で夕食を済ませた。早くテレビの前に腰を下ろして準備を整えたかったためだ。焦っていたのか、ラーメン屋の前に(不法)駐車してクルマからキーをつけたまま降りてしまい、JAFのお世話になった。そしてジョホールバルのゲームはライヴで見ていない。わたしは秋のフェスティヴァル「若い日本映画」セクションのためにパリにいたからだ。翌朝の「レキップ」紙のトップ記事がジョホールバルの歓喜だった。それから2週間後に帰国したわたしは、すぐに荻野洋一に電話し、ビデオを借り、山本アナの名調子を聞いたのだった。そして中田のキレに感動した。
一戦ごとにアジア予選を振り返る大住の文章を読みながら、そのゲームを追体験し、ハンス・オフトや加茂周の表情を思い出すことができた。確かにオフトのチームは、今の代表に比べると、ずっとずっと子供のチームだったし、加茂周のチームも「世界」を経験しながら、加茂の自信が恐れに変わり、それがチーム全体に蔓延してくるのが分かる。ジーコは選手に大人であることを要求し、アジア・カップや北朝鮮戦を見る限り、絶対的に強いわけではないが、負けないチームに成長しているのが分かる。
本書の白眉は、巻末に添えられた加茂周のロングインタヴューである。「敗軍の将、自らの兵を語らず」とダンディズムからか、加茂周が代表監督を更迭されてから、インタヴューをついぞ読んだことがなかったが、もう時効なのか、ここでは極めて饒舌にフットボールについて語っていて、それが面白い。この人は本当にフットボールが好きなのだ。「ボールを後ろに回して点が入るチームはレアルだけだ」と言い放つ加茂周は、ジーコに苦言を呈している。ジーコのポゼッションがともすれば、安全なバックパスに終始することはここでも書いたことがあった。加茂も同意見なのだろう。自らの育てた前園真聖と入れ替わるように中田英寿を代表に呼び、川口を抜擢したのは、誰あろう加茂周だ。これほどフットボールが好きならば、彼にまた監督を依頼すれば喜んで引き受けるのではないだろうか。大分、セレッソ大阪あるいはJ2の山形、札幌、甲府あたりの監督を加茂に依頼してみてはどうだろう。または、横浜FCの監督に再登板してもらい、「復活ゾーンプレス! 復活、城彰二!」というのも面白いかもしれない。
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