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March 18, 2005

『ハワード・ヒューズ』ジョン・キーツ
渡辺進也

[ book , sports ]

hyuze.jpgこのノンフィクションは70年代にすでに邦訳されていたが近ごろ文庫化された。今月末に公開される映画『アビエーター』に合わせての出版なのだろう。だが、たとえ映画のことがなかったとしてもハワード・ヒューズ自体がとても興味深い人物であり、その関心は人々の間で長く共有され続けるのだと思う。実際、彼についての本、彼についての映画はこれまでいくつも存在している。
この本に書かれているのは、もちろんハワード・ヒューズが彼の人生の中で何をやったかである。『地獄の天使』、『暗黒街の顔役』といったハリウッドでの映画製作、キャサリン・ヘップバーンをはじめとするハリウッドの女優たちとの浮名、大陸横断飛行など数々の飛行記録の更新、航空機事業に熱を上げていたこと、晩年にはすべての事業から手を引かざるを得なくなって人々の目の前から姿を消したこと。そうした彼の行ってきた事柄を挙げようとすればいくらでも挙げることができるし、そこには興味深いエピソードがいくつも転がっている。同時に抱えたいくつもの事業をすべて自分でやらなくては気がすまなくて飛行機のねじ1本にまで口を出さずにはいられないだとか、作られた映画に対しては自分が納得するまで何度も作り直すだとか、いつもどこにいるのかわからないので連絡が簡単には取れないことや、マスコミに扱われることを極端に嫌うこと。そうしたエピソードは確かにハワード・ヒューズのことであるのだけど、それで彼のすべてをわかったことにはならないだろう。なぜ映画製作に手を出そうと思ったのか、なぜ危険を省みずパイロットとして飛行機に乗ることにこだわり続けたのか、なぜ晩年人々の前から姿を消したのか、そしてハワード・ヒューズとは一体どういう人間であったのか、といった問いは誰ひとりとして答えを導くことはできないのだと思う。多くのことについて調べて書かれたであろうこの本においても、ハワード・ヒューズ自身のことは彼の行ってきたこと以上に扱うことはできない。だからかハワード・ヒューズの人生は謎とされ、多くの者が彼の人生について推測する。
ハワード・ヒューズがどんな人間だったのかはわからないけど、多くのエピソードが伝えてくれる、彼が自分のやりたいことに対して全力で向かっていく姿が僕はとても好きだ。彼は自分がやりたいことはどうしたってやり遂げる。それは彼が大金を持っていたことで片付けられることではない。他人から見れば馬鹿げたような夢を持ちそれを実際に成し遂げてしまう。ハワード・ヒューズがどうしてそうしようと思ったのかなんて実際にはどうでもよくて、彼が全力で目標に向かっていくこと、僕はそのことがかっこいいと思った。
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