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March 23, 2005

F1第2戦マレーシアGP
黒岩幹子

[ cinema , sports ]

開幕戦のフィジケラに続き、チームメイトのアロンソがポール・トゥー・ウィン、ルノーが2連勝。そして、2位には再び2番手グリッドからスタートしたトゥルーリが入り、参戦4年目のトヨタに初の表彰台をもたらした。つまり、フロント・ローからスタートしたふたりが順当に逃げ切ったことになる。
いくらレース中のタイヤ交換が禁止されたとはいえ、現在のF1においてスターティング・グリッドがレースの半分を決めてしまうことに変わりはない。今回のレースを見ていると、確かに3〜10番手にいたドライバーたちの争い、それにともなう順位の変動は激しかったし、グリップ力の大きな低下、あるいはライコネンのようにパンクしてしまうなど、タイヤに問題が起きたのもそれらのドライバーたちだ。タイヤが消耗することによって、前のマシンとの差が縮まりやすくなった一方で、オーバーテイクするのも難しくなったということが言えるだろう。これは、言い換えれば、前にマシンがいない状態、つまりポール・ポジションからスタートし、最初にマージンを築きさえすれば、あとは無理をしないことに徹すれば優勝に手が届くということである。実は、ポール・ポジションを取るか取らないかが、昨年まで以上に大きな意味を持つことになりそうだ。
そう考えると、予選を耐えて決勝の後半に勝負どころを想定したフェラーリ/ブリヂストンは戦略が甘かったと言われても当然だ。予選であれほど速いミシュラン・タイヤが果たして、レースの最後まで持つのか、という疑念が、もともと暑いところでは強いと言われていたブリヂストン側にはあったようだが、当然ミシュランも完走できないタイヤを作りはしない。もし、さらにあと30周走ったとすれば、ミシュラン勢のマシンがさらにペースを落とし、M・シューマッハーが優勝ということもあったかもしれないが、ひとり旅を続けたフロント・ローのふたりのペースを見る限り、明らかにミシュラン勢に分がありそうだ。やはり、フェラーリが新車を投入すると言われている第5戦が今年の鍵となるだろう。
それにしても、トヨタはいつの間に強くなったのか。開幕戦では、予選は速かったものの、レースではペースが上がらなかったから、今回のトゥルーリ2位、R・シューマッハー4位という結果には正直少し驚いた。聞くところによれば、今GPからほぼぶっつけ本番で導入された新フロントウイングが吉と出たらしい。それを聞いて思い出した。今年のトヨタ・マシンの昨年までとの一番の違い、それは2003年末に加入したシャーシ部門のテクニカル・ディレクター、マイク・ガスコインが、一から開発に関わったマシンであるということだ。そして、空力のスペシャリストという異名を持つガスコインがトヨタの前に在籍していたのは、他ならぬルノーである。かつてルノー(除くベネトン・ルノー)に初勝利をもたらし、現在のルノーのマシンの基礎を築いたのは間違いなくこのガスコインだ。そのマシンに去年までルノーにいたトゥルーリが乗っているわけだ。そう考えると、ルノーに次ぐ2位という結果にも妙に納得してしまう。しかし、ルノーにはベネトン時代にM・シューマッハーを初タイトルに導いたり、アロンソを発掘した強力なボス、ブリアトーレがいる。トヨタが真に「F1のトヨタ」としての強さを持つには、他のチームからのお下がりではない、博打打ち的な姿勢を兼ね備えたリーダー、人材を擁する必要があるような気がする。