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May 17, 2005
「写真はものの見方をどのように変えてきたか」第1部[誕生]藤井陽子
[ photo, theater, etc...]
この展示物の中でなにより心を惹いた、世界で最初に実用化された写真方式の「銀板写真」のことを話そう。銀板の上に人の姿や街の風景が写されているのだ。これは、第二の視覚と呼ばれるカメラ・オブスクラをつかって、画像を定着させた最古の方法──ダゲレオタイプ──の写真だそうだ。当時「記憶する鏡」と賞賛されたという。この写真を覗き込むと、人物や街の影以外の部分に、覗き込んだ人の顔が写りこむ。1枚の平面の中に、かつてあったものと今ここにあるものが収められる。それは偶然の出来事なのだが、感動してしまった。リュディガー・フォーグラーの顔が写った写真を覗き込んだイェラ・ロットレンダーが、その1枚の写真の中で混じりあったのを思い出した。私はこの人が誰で、どんな人生を送って、どんな風に死んでいったか知らない。でも今、私はこの人と一緒に小さな1枚の平面の中に写りこんでいる。そしてこの写真に見入った。そこに写っている人は、動けば煙のように写ってしまうのを知って、ぎゅっと緊張した面持ちをしている。像が定着するまでには数分の時間がかかるという。その動かぬ時間のあいだ、その人はいったい何を考えていただろう。動きを止めて、時を止めて(もしかしたら息もまばたきも止めようとしたかもしれない)、数分ぶんの厚みを帯びた時間をすごし、それが鮮明で、儚い(光の加減があり、すこし場所をずらしただけで像は鏡の中に溶け込んでしまうのだ)像を結んだのだ。ひとつの写真機を見つめるだけにすべてを集中させた視線と、写真機の視線は、そのあいだの空間を濃密に満たしただろう。ダゲレオタイプの肖像には死後の姿を写したものが比較的多く見られるというが、それはきっと死者が動かぬからだろう。それとは別に、動かぬ凝縮した時間というのは、自然と死を連想させるのだ。しかしそこに暗さや奇怪さはない。儚く、濃密で、手の中に納まった小さな骨のような印象だ。そのような写真を、私は初めて見たのかもしれない。
展示は時を追って写真技術の発展や変化を示していく。ダゲレオタイプの写真の登場(1839年)から40年あまり時を経て、写真が写真であることによって喜ばれた時代は幕を下ろし、次第にその写真が「どのような写真か」が問われるようになっていったのだとキャプションは語る。つまりこの写真展は「写真はものの見方をどのように変えてきたか」を探ると同時に、「ものの見方の変化が写真をどのように変えてきたか」も同時に見わたすことになっていくだろう。全4回シリーズのこの写真展は11月まで続く。
投稿者 nobodymag : May 17, 2005 12:50 AM
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