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June 17, 2005

コンフェデレーション・カップ 日本対メキシコ 1-2
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 ジーコが今まで作り上げ、アジアカップで優勝し、W杯アジア予選を勝ち抜いたチームの長所と短所が極めて明瞭な形で露見したゲームになった。
 ジーコのフットボールというのは無手勝流というか、うまく行ったことをそのまま継続するという原則が常に貫かれている。だからバーレーン戦以来うまく行っていた3-4-2-1をこのゲームでも採用。柳沢のワントップの下に小笠原、俊輔の2シャドウ。それまで採用した3-4-1-2、あるいは、当初やっていた4-2-2-2もうまく行かないとすぐにやめる。フレキシブルというか臨機応変というか……。
 だが、メキシコのようにショートパスを多用し、どこからでも攻めてくるようなチームに対して、縦長になる3-4-2-1は単にスペースを与えることにしかならない。そして常にひとり余らせてディフェンスするという横一直線に並ばないディフェンスラインも中盤を空けることになる。ゲーム開始直後からポゼッションに大きく引けをとり、広く空いた中盤に中田や福西が「強い気持ち」で1対1に負けまいとしてもパスをつながれることになる。加地(この日は好調!)の右サイドの突破から柳沢が合わせて先制しても、このまま逃げ切れるとは思えなかった。案の定、ディフェンスラインと中盤の間にぽっかり空いたスペースからミドルが飛び、同点になる。
 ランキングが下位のチームに対しては、個人の力で勝てるが、この対メキシコ戦のように相手の個人技が上回り、ランキングもずっと上のチームに対して、「自分たちのサッカー」をし、「1対1に負けない気持ち」でのぞむだけでは十分ではない。対チーム戦術が不可欠になる。相手の長所を消し、自分たちの特長を引き出し、ゲームを有利に運ぶことが、勝利という目標を達成する道程になる。単純なことだ。
 ショートパスを多用するチームに対しては、スモールフィールドを作ってスペースを与えない。ディフェンスラインと中盤の間をコンパクトに保ち、自陣では徹底したプレッシングを行う。それによって、相手のボールを中盤で奪えるか、あるいは奪えなくても、相手は苦し紛れにロングボールを放り込んでくるだけだろう。対応は難しくない。だが、間延びした中盤を与えれば相手のしたい放題だ。
 そしてさらに選手交代が遅い。空いた中盤を与えていても、この日の日本は健闘していたと思う。それだけ個人の力が上がってきた証拠だ。だが、アタッカーが少ないこと、そして俊輔のフィジカル・コンディションが悪いこと(そしていつもの通り、アレックスの無責任なプレーが繰り返されたこと)を見て取れば、俊輔→稲本、小笠原→大黒の交代はもっとはやく行うべきだ。3-4-2-1から3-4-1-2にシフトを変え、中田を1列前に置くべきだった。
 問題を整理しよう。出場権を得てからの1年間になすべきことは、チーム力(個人の力)の向上であることはもちろんだが、目先のゲームを拾う戦術をベンチが身につけることだ。