journal
« previous | メイン | next »
September 02, 2005
トータス Live (@Metamorphose 2005 8/28 修善寺サイクルスポーツセンター) 田中竜輔
[ music]
ヴィヴラフォンとマリンバ、ロックバンドのステージでは滅多にお目にかからない二つの楽器が、静かに、そして力強くメロディを紡ぎ始める。そう、『Crest』だ。何度もCDで聴いていたはずのこの曲が午前零時を少し回った修善寺の山奥に共鳴を始めた瞬間、今までに経験したことがない空気の震えを感じた。この場所にいられることを心から幸せに感じた。この音楽が無限のヴォリュームになって全世界に響き渡ればいい、そんなありえないような状況まで想像してしまった。本当に素晴らしいライヴだった。
トータスというバンドにとって、ライヴ演奏とレコーディングされた音源との間に優劣をつけたり、どちらが本当の姿であるのかという問いを立てることはあまり適切ではないのだと思う。彼らが「バンド」という共同体において活動している以上、レコーディングされた記録としての音楽だけが本当の姿ではないのは当然だとしても、作曲というプロセスとレコーディングというプロセスが殆ど同期している彼らにとっては、音源における彼らの姿もまた真の姿のはずだ。その二つは表裏一体であり、「記録としての音楽」と「体験としての音楽」という複製技術以後の音楽が背負うべき命題の狭間において、トータスはトータスでありえるのだといえるのかもしれない。その二つの命題が表裏一体であることとは、二項対立であるということではない。「トータスA」と「トータスB」がいるということなのではない。そのどちらもトータスであるのであり、そのどちらかだけではトータスではありえないということだ。
もし、私がこのときトータスというバンドを全く知らなかったとしてこのライヴを見たとするのならば、もしかしたらここまで感動を覚えることがなかったのかもしれないとも思う。もちろん、この卓越した演奏能力と楽曲の質を考えれば、そうでなくとも充分に満足したことは目に見えている。だが、その時私は「記録としての音楽」を生きるトータスについて何の思考も、感慨も抱かなかったに違いない。彼らは信じられないほどに濃密な時間をレコーディングという「記録」のために費やしているのであろうし、それは絶対にライヴという一瞬の「体験」にも対等な時間であるはずなのだ。トータスの圧倒的なステージに魅せられた私は、そんな当たり前のことを彼らに改めて学んだような気がする。少し大袈裟なのかもしれないが、それは「聞く」という行為における倫理の問題なのかもしれない。
朝方に会場を後にして、車中で熟睡し、家に疲労困憊のままたどり着いた私は、殆ど無意識にヴォリュームを出来る限り上げて『It`s all around you』を聴き返していた。幾層にも重なり合ったヴォーカルと上り詰める直前でリフレインを繰返すコード進行が少しづつ時を刻む『The Lithium Stiffs』に続いて、あの『Crest』のメロディが自宅の小さなスピーカーから鳴り響いた一瞬、今までには感じることの出来なかったはずの「あの瞬間」の空気の震えを再び感じて、思わず胸が熱くなるのを覚えた。
投稿者 nobodymag : September 2, 2005 09:14 AM
Search
Archive
- May 2011(12)
- April 2011(5)
- March 2011(3)
- February 2011(5)
- January 2011(7)
- December 2010(3)
- November 2010(8)
- October 2010(7)
- September 2010(5)
- August 2010(2)
- July 2010(4)
- June 2010(8)
- May 2010(5)
- April 2010(7)
- March 2010(5)
- February 2010(8)
- January 2010(11)
- December 2009(12)
- November 2009(7)
- October 2009(5)
- September 2009(7)
- August 2009(6)
- July 2009(15)
- June 2009(13)
- May 2009(13)
- April 2009(17)
- March 2009(22)
- February 2009(25)
- January 2009(7)
- December 2008(13)
- November 2008(16)
- October 2008(14)
- September 2008(7)
- August 2008(10)
- July 2008(5)
- June 2008(12)
- May 2008(13)
- April 2008(11)
- March 2008(6)
- February 2008(16)
- January 2008(12)
- December 2007(15)
- November 2007(9)
- October 2007(5)
- September 2007(9)
- August 2007(16)
- July 2007(13)
- June 2007(18)
- May 2007(16)
- April 2007(9)
- March 2007(19)
- February 2007(16)
- January 2007(18)
- December 2006(9)
- November 2006(7)
- October 2006(9)
- September 2006(11)
- August 2006(11)
- July 2006(6)
- June 2006(7)
- May 2006(9)
- April 2006(8)
- March 2006(19)
- February 2006(19)
- January 2006(4)
- December 2005(6)
- November 2005(4)
- October 2005(15)
- September 2005(19)
- August 2005(23)
- July 2005(14)
- June 2005(28)
- May 2005(21)
- April 2005(22)
- March 2005(40)
- February 2005(17)
- January 2005(8)
- December 2004(13)
- November 2004(21)
- October 2004(15)
- September 2004(8)
- August 2004(19)
- July 2004(11)
- June 2004(13)
- May 2004(13)
- April 2004(10)
- March 2004(19)
- February 2004(7)
- January 2004(26)
- 2003
- 2002
- 2001