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October 16, 2005

プレミアリーグ チェルシー対ボルトン 5-1
小峰健二

[ sports , sports ]

 チェルシー最強説を繰り返し唱える字面にいささかヘキエキしながらも、溜め息まじりにやはり強いと呟いてしまう。それほど、今のチェルシーは手がつけられない。チェルシーを止めろ! のうたをうたう者がどれだけ声高に叫んでみても、唇は寂しくなるばかりだ。
 チェルシーはリヴァプール戦に続き、またもやボルトンを玉砕してしまった。結果は5-1。しかも、チェルシーのすべての得点が後半のゴールである。
 前半はボルトンが、持ち味のシンプルなフットボールで1点リードして終わった。チェルシーの選手は数日前のWC予選の疲れからか、思うように動けていなかったようだ。もちろんボルトンのディフェンスも効果的にチェルシーのアタックを封じ奮闘していたのだから、この結果も頷ける。ワントップ気味で、アタッカーの頂点に配されたドログバを消すことで前半を完封。アラダイスの戦術はいたって簡潔で、ドログバを裏に走らせることも、ポストプレーでクサビを打たせることもさせない。チェルシーの攻撃は縦ではなく、次第に横に横にずらされていく。このまま試合を運べばボルトンに勝機が巡ってきただろう。だが、モウリーニョは黙っていない。ハーフタイムに動きを見せ、グジョンセンを後半から投入することで、陣形を変えツートップにする。さらにエッシェンが後半からランパードと並び攻撃的に仕掛け、ボルトンのディフェンスを慌てさせる。中盤でマケレレやエッシェンがボールを奪うと、ドリブルで突っかけ、またはグジョンセンにクサビを入れる。グジョンセンに引き連れられたバックラインの裏をドログバが狙う。前半と異なり、チェルシーの攻撃は縦へ縦へと動き出し、加速する。システムを変更するや否や爆発的に同点、逆転、加点と瞬く間にゲームを終わらせてしまった。
 2得点づつあげたランパードとドログバが素晴らしいのは誰の眼にも明らかだ。が、今回はエッシェンの素晴らしさがやたらと目についた。リヴァプール戦ではランパードを頂点にしたマケレレとの三角形のバランサーに徹していたエッシェンだが、ひとつランクが下がるボルトンに対してはランパードと並び逆三角形を築きボールを前線に運ぶ役をも演じる。この選手が縦の意識を強く持ったことで後半からチェルシーの攻撃が活性化した。チェルシーに合流して数ヶ月のエッシェンではあるが、この選手が今年のチェルシーにアクセントをもたらしているのは確かだ。判断するにはいささか早計だが、今年のチェルシーが去年のチェルシーを上まわるとしたら、このエッシェンの存在を抜きに語れない気がする。ドログバさえ止めれば、ランパードに仕事をさせなければ、というようにチェルシーを考えていると足をすくわれてしまうだろう。モウリーニョは相手監督が考える手のうちの次の手を打ってくる。文字通り手がつけられないのだ。リーグ序盤だが、チェルシー最強説は真実味を増してきた。後半の終盤、チャンネルを回すと、チェルシーを止めるべき急先鋒アーセナルが下位チームにリードを許していた。Stop the Chelsea! がむなしい響きに聴こえてならない。