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December 5, 2005

ボルトン対アーセナル 2-0
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 アンフィールドでのリヴァプール対ウィガン戦の直後ボルトン対アーセナルを見る。アンフィールドでのリヴァプールは本当に素晴らしかった。シャビ=アロンソ、ジェラード、キューウェル、そしてルイス=ガルシアが自在にポジションを変えつつ、長短のスピード溢れるパスが交換され──そう、まるで去年までのアーセナルを見るようだった。美しいアンフィールドで極上のフットボールを見るのは快楽以外の何ものでもない。
 そしてその直後……。アーセナルはいったいどうしたのだろう? ここ10ゲームは負け知らずで9位から3位に浮上し、ようやくチェルシー追撃態勢に入ったと思われたのに、この様はいったい何なのだ? ボルトンの荒々しいフットボールに単にタジタジ。ガンガン来られると、薄いディフェンスの背後にはレーマンしかいない。相手のプレッシングをかいくぐるようにショートパスとミドルレンジのパスをワンタッチ、トゥータッチで繋ぐアーセナルのフットボールはまったく不在。ジウベルトもセスクもボールが来ると空しくパスの方法を考えあぐねているようでは、逞しいボルトンの男たちの餌食になるだけだ。どんな相手にもビューティフルな自分たちを誇示するように、己のフットボールを貫いたアーセナルのフットボーラーたちが、自らの美学を放棄し、ただ単に立ちすくむだけで勝てるわけがない。
 もちろんピレス、ベルカンプ、キャンベル……彼らも寄る年波には勝てない。だから若手への切り替えは必須だ。しかし、彼らに目の前の敵との1対1に勝とうとする、あるいは、目の前の敵をバカにするほどの自信がなければ、エステティックは単に理想の彼方に存在するだけで、いまここにある現実と豊かな関係を結ぶことはあり得ない。もともとボルトンにはそれほど強くないとは言え、この1敗がアーセナルのプレミアシップに大きく影響することはピッチにいる皆が理解しているはずだ。この時期に4敗目を喫するチームがプレミアシップを獲ることなど絵空事になってきた。今年はとりあえずチャンピオンズリーグに集中し、去年のリヴァプールのように振る舞うこと。そう決定する勇気をこの敗北が与えてくれたような気がする。