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December 16, 2005

さあトリノだ、アキラ!
梅本洋一

[ music , sports ]

 W杯スラローム第2戦。マドンナ・ディ・カンピリオ。久しぶりのナイタースラローム。第1戦で4位に入った佐々木明。スタート順は1本目が14番。トップ10に入れないのは、先シーズンの不調故のことだ。小雪が舞う1本目。悪くない滑りだが、フルアタックではない。ところどころに小さなミスもある。1本目13番。
 彼の見せ場はいつも2本目だ。ヴェンゲンで2本目にトップタイムを出し、一気にトップ・スラローマーの仲間入りをしたアキラの狂気の滑りが忘れられない。コイツは天才だ! と誰もが思った。2本目のセッティングは1本目よりもやや広めにコース幅一杯にとられている。トップから30名が残った2本目は、30番目からスタートする。ブラース等スウェーデン勢の滑りがスムーズだ。気温が高いので製氷剤で固められたコースに無駄なエッジングは禁物だ。できるかぎりスキーを縦方向に滑らせ、ターンとターンの間に断裂が起こらないように、ブレイキングしない滑りが必要。先に滑った皆川賢太郎──彼の復帰は見事だが、このコースには向いていない──がやや順位を落とした後、アキラのスタート。ターンの前から内傾気味な彼の滑りはバランスの幅が狭いが、スキーに乗る位置が適切だと、決定的に速い。上半分の緩斜面は快調な滑り。だが、その快調さゆえの落とし穴、あるいは気負いのためか、急斜面に入るとスピードをセイヴしないと旗門を回りきれなくなる。スキーを横にずらしてはいけないのだが、ずらすことで減速。転んではいけない──今年は順位こそすべてだ──という心配と、フルアタックしないとトップ10に入れないという気負い。1分足らずのタイムの中で、スラローマーたちにはつねに葛藤がある。万が一──そう万が一なのだ──その相反するヴェクトルがフィニッシュラインまで均衡を保てば表彰台が見えてくる。
 アキラのスキーは、結局、急斜面での減速が尾を引いてトップタイムでフィニッシュすることができない。結果は14 番。アキラにとっては不満の残る内容だしフラストレーションの溜まる順位だ。でも悪くないと思う。W杯のすべてに表彰台に立つことなどできないし、上位15人にほとんど差はない。昨シーズンなどはフィニッシュまで立っていることの方が少なかった。とりあえず今年は転ばず、トップ15に連続して入っている。コンディションを上げれば、表彰台も近い。あとは勇気だ!