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February 27, 2006

ラグビー日本選手権決勝 東芝対NEC 6-6
梅本洋一

[ sports ]

 雨の秩父宮ではこんなゲームになるのだろうか。究極のフォワード戦。両チームの全選手のユニフォームがあっという間に泥まみれになり、モールでは湯気が立っている。秩父宮に足を運んだ人たちにはすまないが、こういうゲームはテレビに限る。微視的で局地的な戦いも、この天候を考慮すれば仕方がないだろう。
 攻める東芝と守るNECという構図はキックオフからノーサイドまで不変だった。東芝はキープしながらFWで攻め──特に渡辺は特筆ものの働き──、NECはひたすらタックル。特に箕内とマーシュ、そして辻。このように展開を封じたラグビーになると、東芝のマクラウドの名人芸も後半の後半に出場したバツベイのぶちかましもほとんど関係ない。ミスをなくすためにユニットで攻め、そのアタックをいかにユニットで防ぐか。ラグビーは極めて単純なものになる。こうした展開だとラインブレイクの可能性を秘めていたのは立川ぐらいだろうが、彼が怪我でスタンド観戦であれば、ラインブレイクの可能性は低くなり、攻め手はキック、そしてモール。ディフェンスから見ても、ターンオーヴァーからキック。スタッツを見れば、東芝ボールのラインアウトが極めて多い展開だったはずだ。そして両チームともほぼ完璧にラインアウトからマイボールを確保している。
 創造性を自らに禁じたラグビーと言えばいいのだろうか。それはそれで面白くないわけではないし、両チームの選手たちの気迫は十分に伝わってくる。どちらのチームと何度当たっても今年の早稲田は勝てないだろうとも思う。だが、そうだからこそ、そしてカップ戦の決勝であり、しかも日本選手権なのだから、余りに手堅い両チームの監督に苦言を呈したい。特に東芝の薫田には、ロール一辺倒とは別の方法でNECの強固なディフェンスを、しかも雨の中で崩す方法を見せてほしかった。このゲームを見る限り、東芝のハーフ団の創造性のなさが引き分けという結果の原因だったように思える。こうした天候の時こそウィング勝負という冒険をあえて試みれば、広瀬はトライのひとつもとれたのではないだろうか。そして、停滞した局面を打開するには、もしこれがヨーロッパのゲームであれば、もっとドロップゴールを狙う局面が多かったろう。どちらも東芝ハーフ団にそうした習慣がなく──つまり、そうした練習をしたことがなかったわけで、もちろん、ここまでチームを仕上げた薫田には敬意を表するが、それでも、堂々と点差をつけて勝てるゲームだったと思う。