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April 28, 2006

チャンピオンズ・リーグ準決勝2nd Leg——2
梅本洋一

[ book , sports ]

バルセロナ対ミラン 0-0 (1-0)
 ビジャレアル対アーセナルの停滞とは正反対の緊張感溢れるスコアレスドロー。けれども内容としてはバルサの圧勝だ。バルサは堂々とパリに向かう。
 もしミランのGKがジーダでなければ2-0くらいのゲームだった。バックラインでも中盤でもそして前戦でもバルサの圧勝。もちろんロナウジーニョというスーパーな選手がいることもあるが、バルサの前にあっては、ミランのフットボールの戦術のなさ、あるいは対応力の弱さが際立った。もちろんピルロの絶不調もあるだろうが、ピルロの不調は、ピルロのコンディションの悪さばかりに起因するのではなく、バルサのシステムによって、ピルロの不調があぶり出されている。比較的自由にボールを触れるボランチの位置から自在にパスを出すピルロ。だが、バルサを前にするとミランのダイアモンド型の中盤の底がまったく自由な場所ではない。イニエスタ、デコのふたりとポジションがダブり、ここでピルロは常に1対2を強いられる。だから、必然的にピルロは消え、セードルフにゲームメイクが託されるケースが増える。ガットゥーゾにそれはできない。カカはエジミウソンにつきまとわれている。つまりバルサのバックラインは4人でミランの2トップを見ればいい。そしてバルサ側のアタックは、ピルロを消せば、デコかイニエスタからパスが供給され、ロナウジーニョにふたりマークが付くにせよ、右のジュリかセンターのエトオが空く。つまり、ミランの4-4-2とバルサの4-3-3では決定的にバルサのシステムの方が選手を有効利用していることになる。事実、エトオはフリーになり、ロナウジーニョージュリのホットラインは2度機能した。ピルロとカカが押さえられれば、前戦のシュフチェンコとインザーギが孤立し、ドリブル突破以外にチャンスは作れない。正確なクロスを持っているセルジーニョの上がりは、ジュリのアタックに止められ、スタムの右サイドだけがチャンスを作る。もともとセンターバックのスタムに、その荷は当然重くなり、スタムが上がると、もっとも危険なロナウジーニョがフリーだ。
 ぼくにでも分かるそんな展開をアンチェロッティは打開できない。彼はシステムを変えずに人を代える。ガットゥーゾOut、カフーIn、スタムをセンターに。セードルフOut、ルイ=コスタIn。そして業を煮やしてインザーギOut、ジラルディーノIn。これでは打開にならない。相変わらずピルロは消え、カカは疲弊する。対するライカールトは、いつもと同じようにジュリOut、ラーションIn。そしてエトオを左にロナウジーニョをセンターに。次の瞬間左のエトオから右サイドをディアゴナルに走るラーションに絶好のクロス。ジーダ好セーブ。ボールのないシェチェンコもインザーギもいないのと同じ。ルイ=コスタもカフーもゲームに入る前に修了のホイッスルを聞いた。つまりバルサの圧勝。

 さてパリではどうなるのか。ヴェンゲルはまずフィジカル・コンディションの改善を図ると言っている。正しい。セスクもフラミニも、縦横無尽に走っているジウベルトも疲労が溜まり、動きが良くない。プレミアは4位に残る可能性が他力になった。ならば、残りの3ゲームを捨てても、パリの1戦に賭けるだろう。パリならばベルカンプもユーロスターでやってくるだろう。何しろ最後の花道だ。
 ライカールトは、今日のゲームと同じにやるだろう。今のバルサに何の問題もない。シャビが戻ってもイニエスタだろう。つまりアーセナルの4-5-1対バルサの4-3-3。もしアーセナルのパスワークが戻れば、とても面白いゲームになるだろう。ヴェンゲルはロナウジーニョにジウベルトを付けることはないだろう。もう負けない必要はない。何よりも勝利が必要だ。つまり点が欲しい。どちらにも同じことが言える。スコアレスドローも必要ない。3-2か4-3くらいのゲームになるだろう。どっちが勝つか? ぼくは一応アーセナルのサポーターで、今も臙脂色のジャージーを着てこれを書いている。