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October 5, 2006

日本対ガーナ 0-1
梅本洋一

[ sports , sports ]

 オシムの「頭を使って走るフットボール」はまだまだ発展途上だ。確かに「頭を使う」ようになり、「走る」ようになってきたが、まだ「頭を使って走る」ことはない。「頭を使ったり、走ったりしている」。
 互角、あるいは日本有利だった前半。巻と駒野は決めておかなければならない。巻のワントップ、そして佐藤寿人と山岸の2シャドウ。2シャドウの後ろにアレックスと駒野のウィングバック、中央にやや前後関係を保って、前に遠藤、後ろに鈴木啓太。3バックに今野、阿部、水本。1-2-2-2-3という並びが正確だろうか。前半は、「走る」ことで、2シャドウと2人のウィングバックが入れ替わったり、攻めることもできた。巻と駒野に決定期が訪れもした。
 だが、後半、ガーナが攻勢に出ると、この布陣そのものが内包する(もっと言えば、オシムのフットボールがもともと持っている)問題点が露呈し始める。
 ガーナの攻勢に3バックが下がり──下がるまいとこらえていたのは今野ひとり──、スペースが生まれるとまず鈴木がバックラインのケアに入り、アレックス、駒野も下がり始め、ときには寿人まで、もどってくる。オシムがプレスをかけるように叫び続けるが、ズルズルと下がるディフェンスの癖は改善されない。そして、ガーナのスピード溢れるアタックに1点献上。これはこの布陣が抱える問題なのだ。
 説明しよう。前後の距離をつける布陣だから、自分たちが走るスペースもあるし、相手に走られるスペースもある。確かにこの布陣にしてからアレックスのディフェンスの弱さも隠蔽され、駒野や啓太の労苦を惜しまぬ走りもいい。だが、走られると下がってしまう。なにせ3ラインどころではなく、5列もあるのだ。走れるが走られる。チャンスを作るが、決定期も作られる。ジェフの失点の多さにはこの辺りに原因があるのだろう。オシムのフットボールが面白いのは、最初から選手たちにスペースが与えられており、だから、展開が多彩になることだろう。これは諸刃の剣で、攻めることができるが、攻められもする。リスクを冒すという言葉は、メンタリティの問題ではなく、この布陣が抱えていた構造的な問題でもあった。一度、コンパクトさを保った4-4-2の代表が見たい。