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March 12, 2007

シックスネイションズ07 イングランド対フランス 26-18
梅本洋一

[ cinema , sports ]


ゲームとしてはスカパー!の解説をした箕内が言っていてように、「眠い」ゲームだった。両チームともミスが多かったし、大きく展開するラグビーが見られなかった。もちろん前半(9-12)の展開は予想できたことだったが、わずか1PGの差でフランスが逃げ切れるようには見えなかった。地域においてもポゼッションにおいてもイングランドが優勢だったし、イングランドがFWの攻撃でフェイズを重ねれば、どこかでフランスの反則が生まれる可能性が十分あったからだ。それにフランスが、それほど多くないアタックの機会をノックオンなど下らぬミスで潰していた。互いにPGを決めあった前半から、勝負は明らかに後半になることが予想された。
 2トライ取られたがフランスの敗因は、ディフェンスではない。多くの怪我人が出ているとはいえ、イングランドに2トライは上出来だろう。30点を巡る攻防という一般論から言っても、フランスは点が取れなかったことが敗因である。前半のアタックの機会で、ほとんど点が取れそうだったことが敗因を覆い隠してしまった。ゴール直前でのイバネスの落球、マルティがインターセプトし、前が空いていたにもかかわらずノックオン。3点のリードがラッキー以外の何ものでもない展開だったことを皆が忘れてしまった。
 なぜ点が取れなかったのか。理由は簡単だ。ボールが取れなかったからだ。後半のイングランドFWの頑張りを見れば、このゲームに勝ち目はない。あれほどフェイズを重ねてもイングランドが2トライしか取れなかったのは、むしろフランスのディフェンスが良かったことと、イングランドのアタックがお粗末だったから。イングランドは何回かブレイクダウンでフランスボールを奪ったが、フランスは人数をかけてくるイングランドの接点にディフェンス一方。シャバルが何度も絡まれたことを見れば明らかだろう。そしてスクレラが怪我で退場すると、ヤシュヴィリも交代のボークシスもファーストチョイスがキック。イングランドにスペースを与えれば、カウンターからFWにボールを返して、イングランド得意のジリジリするような遅攻にはまり、ますますポゼッションが低くなっていく。後半はむしろキックを封印してワイドに振り、イングランドFWを走らせる選択肢こそ正しかった。
 ここまで4ゲーム見てくると、W杯ようのハーフ団は、ミニョーニ、スクレラというコンビが最適なのではないか。ボークシスは、勝っているときはいいが、競っているときはディフェンス力がないし、ラインのスピードを上げることができない。もちろんミシャラクの復帰も期待できるが、アタックにもディフェンスにも力を発揮するスクレラが目下のところ最適だし、ヤシュヴィリとミニョーニを比べると球捌きの点でミニョーニの方がフランスのアタックに向いているようだ。ミニョーニはキックという選択肢がないから、まずボールを捌きアタックの継続を考えている。するとポゼッションが上がり、フレアを発揮する機会も生まれるはずだ。この日のフランス自慢の両ウィングは活躍の機会がなかった。ディフェンスだけなら、小柄な彼らでは不利なことが自明だ。もちろんウィルキンソンの怪我等、イングランドの正念場で久しぶりのキャットを始め、イングランドに気合いが入っていたこともあるだろうが、フランスがこんなゲームメイクをしていてはどこにも苦戦するし、オールブラックスには50点差つけられてしまう。ベルナール・ラポルトも、そろそろエクササイズをやめにして、ベストの15人でやるべきラグビーの熟成する時間に来ている。