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March 18, 2007

2007年シックスネイションズ総括
梅本洋一

[ cinema , sports ]

最終日になっても優勝が決まらないシックスネイションズは確かに面白かった。結果的にはアイルランドとフランスが共に4勝1敗で並び、最終戦の対イタリア戦、対スコットランド戦に持ち去れることになった(もちろんイングランドにも可能性はあったがウェールズに大勝というのうは数字的に不可能に近いものだった)。
結果はアイルランドもフランスも頑張ったけれども、フランスは得失点差でアイルランドを上回り、フランスの優勝になった。
それぞれのチームについて感想を少しずつ。
まずスコットランド。ゲインするのはFWの密集サイドだけ。この戦法だけで勝てるほどシックスネイションズは甘くない。すべての面における強化が必要。ウェールズ。最終戦は気迫でイングランドに勝ったが、最近の成長がすっかり止まった感じ。このチームは近年のパスプレイをもう一度思い出すしか活路はない。イタリア。2勝して気を吐いたが、ドロップゴールだけが唯一の得点源では高いところには行けない。
そして上位3チーム。まずイングランド。当初はウィルキンソン頼り。そして彼の怪我からは、若い選手を使い始め、ジェラティを始め才能の芽が育っているが、アタックを貫く芯になる「思想」がない。FWでガチガチ行く2003年のチームの影と見えない新たな戦術の狭間にあって、迷走している事実は監督が代わっても露見している。トゥウィッケナムでフランスに勝ったがもう一度やれば勝てない感じ。やはりウィルキンソン頼りは変わらないだろう。
アイルランド。6チームの中では一番好感が持てる。誠実なFW。そして走力のある両フランカー。そして最大の見所はダーシー、オドリスコルの両センター。これは今、世界ナンバーワンだろう。両センターで勝負できるチームは他にない。走力と駆け引きとオフロードを交えた技術でラインブレイクする姿は素晴らしいの一語。これでもう一段FWの前5人の力が強化されればオールブラックスにも拮抗できるのではないか。6月はこのチームがどういう日程で活動するのか注目したい。
最後に優勝したフランス。ベルナール・ラポルトはいったいいつまで実験を続けるのだろう。フランスのコーチの悪癖でチームを強化することと、実験するのを混同するきらいがあるが、ラポルトもまさにそのひとりだろう。2年ほど前は超ワイドなラインを常に指向したが、そのためには熟成が必要と見るや超ワイドなラインを諦め、通常のアタックに切り替え、ある程度の成功を収めるのだが、その成功もシックスネイションズ止まりだ。FW力で一考できるワラビーズやスプリングボクスには勝てる可能性も大きいが、FW力が一段上のオールブラックス相手では、この程度の力で勝てるはずがない。ねばり強いディフェンスは当然のことだが、フランスらしいフレアでとったトライは最近見ることができない。個々の力で上回って勝っているだけだ。それもFW中心。イングランド戦のようにFWが拮抗してくれば、勝負はどちらに転ぶか分からない。FWが劣勢になっても、スクラムが押され、ラインアウトで劣勢でもトライを取れるバックス陣は今見ることができない。W杯でも決勝に残れるかも知れないがオールブラックスには惨敗するだろう。