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May 26, 2007

チャンピオンズリーグ決勝:ミラン対リヴァプール 2-1
梅本洋一

[ sports , sports ]

 ピッポ・インザーギの2発で勝負ありのゲーム。ねばりにねばってインザーギ。大方の予想のカカではなく、泥臭さの塊というか、どんな形でもどこに当たってもゴールはゴールだというフットボール原理主義の生き証人インザーギ。ラッファ・ベニテスもスティーヴン・ジェラードも負けた気がしないのではないか。もっとも勝った気がしないのは当然なのだが。
 ベニテスは考えに考えた末、カイトのワントップ、トップ下にジェラードを置き、両翼にゼンデンとペナント、ダブルボランチにマスケラーノとシャビ・アロンソ、そしていつもの4バック。対するミランは、ほぼいつもと同じフォーメーション。ジラルディーノではなくピッポのワントップ。このフォーメーションが予想できたので、ラッファはマスケラーノ、シャビ・アロンソでボールを奪い、両サイドに展開、そしてさらに逆サイドに展開し、スピードのないミラン・ディフェンダーを翻弄しようという戦術。これは見事に決まったと思う。さらにペナントが大きく前に張り出しているので、セードルフの位置取りがいつもよりずっと低い位置になり、カカとのパス交換は思うに任せない。ピッポも孤立したまま。
 一方リヴァプールは、特にペナントの右サイドからバシバシジェラードにボールが入る。だが、中盤を厚くしたツケがここで回る。つまり、ジェラードの前にはカイトしかいない。ネスタ、マルディーニが頑張れば、そう簡単に点が入らない。ラッファはボールを運べるが、決定的なチャンスをジェラード、カイトの個人技に頼るしかない方法を選んでしまった。確かにジェラードのミドルが何発か炸裂するが、ジダの好セイヴ。
 リヴァプールが押しながら前半が終わると思った瞬間、シャビ・アロンソがファール。ゆっくりとピルロ──ここまでほとんど消えていた──がボールをプレイスし、直接ゴールにボールが向かい、レイナの正面に飛ぶだろうと誰もが考えたろう。その瞬間、なぜかピッポの二の腕──ハンドか?──にボールが当たり、ゴールに吸い込まれていく。これがこのゲームのすべてだ。つまり、いつも偶然を起こす、否、必然的な偶然を生むのが役割のピッポがそこにいた。理詰めのリヴァプールを、何度も偶然を起こすピッポがひとりで打ち破った。
 後半は攻めなければ負けてしまうリヴァプールの裏を狙い続けるミランという展開。次第にカラガーの足が止まり、またピッポに裏をとられ万事休す。残り3分で1点返すが、それが精一杯。ミランのようなチームにはすべての局面で圧倒的に勝たなければ勝利できない。イタリアにはピッポのような奴がいるものだ。カカもセードルフも押さえたのに、FKが偶然ピッポに当たる。アンラッキー! でもそれがフットボールというものだ。2年前のゲームよりも緊張感のないゲームだった。鬼気迫るリヴァプールの反撃もなかった。ディフェンスラインがやられて点を取られたならまだ頑張れるだろうが、ピッポのような点を取られ方は意気失墜を招く。ジェラードの表情も心なしか曇って見える。
 これで今シーズンのフットボールはお終い。セリエはユーヴェがどこまで頑張るかが、来年の焦点。プレミアは8月のコミュニティシールドでまたチェルシー対マンUが見られる。もちろんアーセナルの巻き返しに期待するが、正直、底上げにはあと2年はかかりそうだ。おっとリーガ・エスパニョールがまだ残っているぞ!