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August 23, 2007

日本対カメルーン 2-0
U-22 日本対ヴェトナム 1-0
梅本洋一

[ book , sports ]

 本気のリヴァプール対チェルシー戦を見た後だったせいもあるが、今夜見た代表戦2ゲームはどうしようもなく眠い。酷暑のせいばかりではないだろう。単純にパススピードが相当に遅いのだ。リヴァプールならば中盤でショートパスが交換されジェラードから40メートルほどのパスが一気にサイドに展開されたり、チェルシーならばミケルがディアゴナルなミドルパスが繋がれたりする。ところが、この2ゲームを見ていると、「ハイ、おまえ」「ハイ、おまえ」と順番にパスが繋がっていくだけで、まるで順番が一番大切な幼稚園児のような展開しか見えない。空間をクリエイトし、その過程を共有したり裏切ったりしながら、何とか相手ゴールにボールを運ぼうとする創造力と想像力が欠如している。
 まずフル代表。前半こそ何とか互角に渡り合えたが、後半になるとポゼッションががた落ち。球際でほとんどカメルーンに負けている。もしカメルーンにわずかでも「戦術」があれば、2〜3点とられてもおかしくなかった。もちろん山瀬の美しいミドルがなければ、「終わりよければすべて良し」とはならなかったろう。アミカルマッチなので、選手を試すというオシムの指向は分かるが、選手交代が功を奏することがないことにぼくらも慣れてしまった。たとえば今野のボランチはオシムの辞書にはないのか。遠藤と俊輔をアジアカップでふたり並べて使ったように、遠藤と山瀬の併用はないのか。憲剛と阿部、憲剛と今野のボランチ併用はないのか。そうした化学反応にオシムは興味がないようだ。中盤が空き始めた後半、憲剛が投入され、リズムを作り始めたが、サポートする人(水を運ぶ人)がいないので、彼は孤立してしまう。FWにしても寿人、高松の組み合わせはぜんぜんうまく行かなかった。後半になって選んだ選手を虫干しするように使うのではなく、意図を持った交代ができないのか。まるでAチームとBチームを入れ替えるようにしか交代できないようでは、アジアカップの轍を踏むだけだ。
 そしてU-22。これはもっと重傷のようだ。反町はかなり戦術オタクのようだ。もちろん誰だって、ぼくだって戦術オタクではあるが、その戦術がどうやって裏切られるのかを見ることも大きな快楽があるものだ。左サイドの下がり目の本田圭祐は、アタックに優れた選手だと思うのだが、センターバックからパスをもらうと、前に広大なスペースがありながらも、必ずボールをもう一度ディフェンスラインに戻す。これでは彼が選ばれた意味はない。それぞれの選手のメリットを最大限に生かし、それを接ぎ木してチームを作るべきだ。最初に戦術ありきではない。このゲームのように平山のシュートが入らない日は、どうやってスペースをつくってシュートまで持ち込むかという選手たちのゲームを読み、それに反応する力が一番大切になってくるはずだ。だが、まじめなこのチームの選手たちは自分の持ち場を守りコーチに言われたことを忠実に実行しようとするだけだ。これではチームは大化けしない。吉と出るか凶と出るか分からないが、平山を外すくらいの手術が必要かも知れない。コーチは教育者でもあるけれども、それ以上に選手たちを奮い立たせ、今までの殻を破って別の時間を与えられる人でもあるべきだ。