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March 2, 2008

ラグビー日本選手権2回戦 東芝対早稲田 47-24
梅本洋一

[ sports ]

 早稲田の完敗。何もしなければ完敗するのは分かり切ったこと。たとえばジャパンが何もせずイングランドに「真っ向勝負」すれば完敗する。どこを比較しても東芝よりも弱い早稲田が、どうすれば勝利をたぐり寄せられるのか、という思考の結果が、ゲームに現れると思ったが、それが誤解だった。早稲田の結論は「真っ向勝負」! 潔いと言えば言えるだろうが、ぼくには、「真っ向勝負」は傲慢だと思える。経験値の低い学生たちは、それまでの圧勝で大きな自信を持っているのだろうが、どこを比較しても早稲田に東芝を上回れる部分はない。だとしたら、徹底したスカウティングに基づいたゲームプランを立てて、その上で勝負してみることが東芝への礼儀であり、そして、万が一、そのゲームを接戦に持ちこめれば、学生たちのその後の人生に貴重な時間をもたらしたことになったろう。清宮が早稲田の監督1年目のときは、ダブルSHでポイントをずらし続けたが、いかんせんボールが取れなかった。対トヨタは、スカウティングに基づいてゲームを設計し、見事な勝利を収めた。おそらく今よりも強かったチームさえ、もっと工夫していた。
 それに対して東芝は老練なゲームをやった。スカウティングしたかどうかは定かではないが、中竹が「日本一早く低いディフェンス」と言う早稲田のディフェンスの穴は、選手の中でもっともタックル力のないSO山中の外側だと感じて、廣瀬が再三ラインブレイク。さらに若く経験値の低い両センター(それなりによくやっていたが)にどんどん勝負を挑んできた。そこをフォローするはずの早稲田の第3列も、東芝の老練さに大きく見劣りした。つまり、早稲田が東芝と競ることができるのは、セットピースのみ。これもラインアウトはほぼ計算通りだったが、スクラムは劣勢。トライ数7-4。だが、4トライのうち2つは勝負の趨勢が見えた後のトライ。勝負にならない。
 ボールを支配され続け、結局は「日本一早く低いディフェンス」でもブレイクダウンの攻防に負け続け(ここは負け続けることが予想された)、大外に穴が空き、トライを奪われる。予想された通りの展開で、予想された通りのトライが東芝に生まれる。「真っ向勝負」では最初から勝てないことは、単に想定の範囲内のことだ。それが、目の前で起こり、「真っ向勝負」に敗れた選手たちが涙を流しても空しい。どんなゲームでも勝利をたぐり寄せるために、何が必要なのか。わずかな準備期間で選手たちのフィットネスが上がることはないし、ましてや経験値に至っては変化がない。普通にやって勝てるだけの力があるともし信じていたなら、中竹はチームマネジメントができていない。
 これはジャパンにも言えることだ。フィットネスを上げ、経験値を上げても、「8強」に入るのは難しい。どこで上回り、どうやって勝つのかをまず考えることからしか出発点はない。