journal
« previous | メイン | next »
September 30, 2008
『アキレスと亀』北野武山崎雄太
[ cinema]
絵を描き続ければ人が死に続ける。なんで映画観てこんな辛い思いをしなければならないのかとまた悲しくなってしまう……。
少年真知寿(マチス)は、大金持ちである生家に出入りする画家との素朴な交流から画家になることを志す。しかし、父親の会社が倒産に追い込まれてから生活は一変する。少年−青年−中年と時代を追って半生が語られてゆく真知寿を貫く無表情、過去への執着のなさは、すべて他人への無関心に端を発するものである。少年時代に唯一心を通わせていたかに思える又三の(言うなれば自分のせいでの)死は彼になんら影を落とすことはなく、それは鉛筆で描かれた又三の風景画にただ赤い色彩が入るだけのことであり、あるいは青年時代における友人の事故に際しても、それは飛び散るペンキの色に赤が加わることに過ぎない。中年時代に遭遇した事故もまた同様である。彼にとって死とは、顔が赤く染まることでしかない。「母親」が死んだ時からずっとそうであった。だからキレイなままの娘の死に顔を、口紅で赤く染めずにはいられない。だがしかし真知寿は、自らも創造のさなか火に包まれ死にかけたのち、転がっているコーラの缶を見て自分がどうこうする前から「赤」はそこにあったことに気づいた(かもしれない)……。ただ、『アキレスと亀』の残酷は、このような死そのものに対する白々しさにあるのではない。なにより残酷なのは、絵を描き続け、よって不幸であり続けた男の半生を語っておきながら、創造すること・続けることへの絶望をひたすら見せつけておきながら、北野自身には「帰ろうか」に対して帰る場所を用意している点にある。かつて『キッズ・リターン』でわれわれに続け方を教えてくれた北野武はしかし、このひたすら残酷で陰鬱な『アキレスと亀』で後続を一蹴してまんまと逃げおおせた。幕切れにおいて、彼が帰るべき隅田川沿い(言わずと知れた「下町」、そして「浅草」、上っていけば「足立区」)をぬけぬけと歩いて逃げる頃には、われわれは創造の火床(文字通り!)なんて耐えられようが耐えられまいが良いことなんてひとつもないということを諒解して呆然としている。前に「続けることだ」とここに書いたが、シャッターの落書きは早く消して、やめられるうちにやめなくては……。
テアトル新宿、銀座テアトルなどでロードショー中
投稿者 nobodymag : September 30, 2008 10:40 AM
Search
Archive
- October 2008(2)
- September 2008(7)
- August 2008(10)
- July 2008(5)
- June 2008(12)
- May 2008(13)
- April 2008(11)
- March 2008(6)
- February 2008(16)
- January 2008(12)
- December 2007(15)
- November 2007(9)
- October 2007(5)
- September 2007(9)
- August 2007(16)
- July 2007(13)
- June 2007(18)
- May 2007(16)
- April 2007(9)
- March 2007(19)
- February 2007(16)
- January 2007(18)
- December 2006(9)
- November 2006(7)
- October 2006(9)
- September 2006(11)
- August 2006(11)
- July 2006(6)
- June 2006(7)
- May 2006(9)
- April 2006(8)
- March 2006(19)
- February 2006(19)
- January 2006(4)
- December 2005(6)
- November 2005(4)
- October 2005(15)
- September 2005(19)
- August 2005(23)
- July 2005(14)
- June 2005(28)
- May 2005(21)
- April 2005(22)
- March 2005(40)
- February 2005(17)
- January 2005(8)
- December 2004(13)
- November 2004(21)
- October 2004(15)
- September 2004(8)
- August 2004(19)
- July 2004(11)
- June 2004(13)
- May 2004(13)
- April 2004(10)
- March 2004(19)
- February 2004(7)
- January 2004(26)
- 2003
- 2002
- 2001