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January 12, 2009

08-09ラグビー大学選手権決勝
帝京対早稲田 10-20
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 豊田の2トライで早稲田の完勝のゲーム。見事に対抗戦のリヴェンジ、ということになるかもしれない。だが、全体的なゲームそのものの面白さはまったく伝わってこなかった。小さな部分から指摘すれば、ノックオン等のミスが多すぎる。早稲田のセンターがノックオンするのはいけない。プレッシャーがかかる部分での練習不足なのだろう。次にゲームメイクにおいてインテリジェンスが見られない。前半、帝京陣内深くに攻め入った早稲田がペナルティを得て、3度に亘ってスクラムを選択したこと。前回の敗戦の原因がスクラムにあって、そのリヴェンジだと思ったのだろうが、ラグビーはあくまでスコアのゲームであって、その時点の「力比べ」ではない。結果的に前半終了間際のスクラムからトライが生まれたからと言って、その選択は結果オーライにはならない。PGを狙っておけば、前半でもっと点差をつけられ、風下の後半は、ライン攻撃を見せられたはずだろう。帝京にしても、前戦の勝利がセットピースとブレイクダウンにあったにしても、このゲームの最初のコンタクトで、それがイーヴンだとすれば、ゲーム・マネジメントを変更する必要があったはずだし、風下の前半で7点差ならば、後半は、キッキングゲームで点差を冷静につめればいいのだ。帝京にとっての誤算は、風上の後半になっても、早稲田にボールをポゼッションされたことだろう。だとすれば、マイボールのセットプレイに焦点を絞ればいいだけのことだ。
 大学選手権決勝にしては、両チームとも、信じがたいほどにナイーヴだ。そのもっとも大きな原因は、やはり公式戦のゲーム数が少なすぎることだろう。選手権の決勝に残れば、10ゲーム以上の公式戦を経験できるが、対抗戦5位以下のチームは10ゲームに満たないゲームしか体験できない。これでゲーム・マネジメントを体験的に学ぶことは不可能だ。学生チームには期末試験があって、シーズンが短いから仕方がないし、そもそも彼ら選手の本分は、勉学であって……などと言うのは意味のないことだ。偏差値の高い早稲田にしても、瀧澤を除いてスポーツ関係の学部の学生であって、ラグビーをすることこそ、彼らにとっての本分なのだ。シーズンを、もっと長くし、大学以外のチームとも多く公式戦を組むようにすべきではないのか。もちろん理想は、大学チームを2チーム程度トップリーグに入れること。大学院生を交えてもいいだろうし、系列校の高校生も参加していいのではないだろうか。卒業後もチームに残したい選手は大学の職員にしてもいいだろう。コーチを専任にして、大学が年俸を払うようにする。大学が計上している広報費・広告費の額からすれば、こうした資金などたかが知れているし、一般学生からの寄付によって運営してもいいだろう。数万の学生数がある大学なら、数千万円の運営費が生まれ、コーチの人件費はそこから支出が可能になる。重要なのは、大学チームの選手やコーチたちに、彼らのアイデンティティの中心がラグビーであることを知らせることだ。勉学が本分の学生が、教育の一環としてラグビーをやるのではない。サラリーマンが余技としてコーチをするのではない。ラグビーをして、そのゲームで結果を出すことが他の何よりも必要であることを知らせる。そうすれば、ナイーヴなゲームが横行する現状を打破できるのではないか。