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March 11, 2009
東京中央郵便局再論梅本洋一
[ architecture]
「旧東京中央郵便局の再開発問題で、鳩山邦夫総務相は10日の閣議後の記者会見で、保存部分を拡大して再開発を進めるという日本郵政の提案を「受け入れる」と表明した。日本郵政は登録有形文化財への登録を目指し、文化庁などと設計変更に向けた協議を進める。どこまで保存するかで協議が難航する可能性もあるが、再開発問題は解決に向けて動き出した」。日本経済新聞は上記のように報道した。
昨今の郵政民営化揺り戻しの影響で、かんぽの宿も東京中央郵便局も一緒くたに論じられている。吉田鉄郎の名前も出てこなければ、バウハウスもない。すべては政治の力学の中に回収されている。モダニズムの素晴らしい建築物を保存するときの困難を論じるところまで行っていない。容積率の売却という方法で、復元保存工事が続行中の東京駅。僥倖道路がしっかり存在していた時代は、その存在感が濃厚だった東京駅も、丸の内マンハッタン計画や八重洲地区の再開発ですっかり埋没してしまった。辰野金吾の東京駅も、汐留の片隅に復元されている旧新橋駅のような「小ささ」である。
鳩山邦夫の比喩は面白かった。「トキを焼き鳥にして食べるようなものだ」から、保存部分を拡大した上で再開発すると言う日本郵便の西川社長の言に、「トキが焼き鳥になってはいけないが、剥製(はくせい)になって文化財として残る方法で再開発してもらう。すみやかに設計変更して欲しい」と「焼き鳥」が「剥製」に変化した。だが、この変化は、鳩山邦夫が、真に美学的な価値から、東京中央郵便局の保存を望んでいないことを雄弁に示している。この建物が「剥製」になるくらいなら、「焼き鳥」にして食べる方がいい。建築物の保存とは、歴史的な遺産のように、「剥製」にして残すのではなく、旧来よりももっと溌剌と時代に生き残る方法を思考することではないか。東大寺や法隆寺といった宗教建築と、モダニズム建築の価値はその点でまったく異なる。活動していた時代の東京中央郵便局の内部を見たとき、その使用方法が、この建物の潜在的な能力をまるで無視した形で、大きな郵便局の内部ならどこも同じであるように作りかえられていたことに驚いた。空間というのは、大きな拘束力があり、その拘束力をどのように現代化していくか、というのがリノヴェーションの根本的な原則だろう。
都市間競争の名を借りた裸形の資本主義が、美学や歴史の重みを無視して、空間を商業に変えていく姿こそ、丸の内マンハッタン計画だ。なぜ高層化することが都市間競争に勝ち残ることと等号で結ばれるのか。丸の内の事務所の賃料は坪6万と言われている。法外な賃料だ。高層化しても、この賃料を取れば2年で元が取れる計算だと言う。つまり丸の内で高層化すれば単に儲かるという話だ。それに東京中央郵便局も乗ったということにすぎない。もともと美観も、景観も、スカイラインも、文化財も関係ない。話がかみあわないのは、語る土俵が異なるからだ。空間権を売って、保存するという原理に同意できないのは、それもまた資本主義の発想と同じだからだ。ぼくは述べたいのは、東京中央郵便局を保存するか否かという問題ではない。モダニズムの建物を、高層ビルばかりが選択される現代に、その生を保ち、その空間をより有効に使用しながら、どのように作りかえるのか、ということである。だから、「焼き鳥」でも「剥製」でもない。ましてやファッサード保存ではない。
投稿者 nobodymag : March 11, 2009 01:03 AM
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