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June 27, 2009

コンフェデレーションカップ09 アメリカ対スペイン 2-0
梅本洋一

[ book , sports ]

 誰でもスペイン対ブラジルの決勝を期待したが、スペインは準決勝でアメリカにまさかの敗退。予選リーグでメンバーを試し試し使ったが、このゲームのスペインは、現時点でのベストメンバー。カシージャス、両センターにプジョルとピケのバルサコンビ、両サイドにセルヒオ・ラモスとカプデビラ、ミッドフィールドにはシャビ・アロンソをアンカーに、セスクとシャビ、左にリエラ、そしてビジャとフェルナンド・トーレス。デルボスケのフォーメーションは、セルヒオ・ラモスの上がりのスペースを生むために、やや左に偏っている。リエラに対応する右のミッドフィールドを置かない。
 この面子ならアメリカに3-0だろうとぼくも思った。そしてゲーム内容はべた押し、ビジャやトーレスのシュートが雨あられ! アメリカのGKのホークスの当たりがなければ、ぼくの予想も外れなかったろう。冷静にスタッツを見てみよう。見た目のポゼッションは6:4でスペインだった。スタッツでは56:44。そんなところだろう。そしてシュート数はスペイン29本、アメリカ9本。ショッツオンではスペインが8本、アメリカが2本!つまりアメリカの2本のショッツオンがすべて得点に結びついている。スタッツ上は「運が悪かった」というのが正しいだろう。フットボールにはこういうこともあるという常套句がこのゲームにも当てはまるだろう。そして、中盤とディフェンスラインのアメリカの選手たちのハードワークを称えるのが順当だろう。確かにスペインのようなミッドフィールドを支配しながら攻めるタイプのチームを「潰す」にはミッドフィールドで激しく行くのが定石だ。
 しかし、アメリカがそう来ることなど織り込み済みだったはずだ。それに対スペインにはどのチームもその戦術で対応する。それでも勝つのが王者だ。だからスペインには、この日のゲームに限って運以外の敗因があるはずだ。それは3つあるようにぼくには思える。まず、圧倒的に押しているゲームばかりで隠されてしまったセンターバックの弱さ。プジョルのおたおたぶりは皆の知るとおりだし、ピケには経験が足りない。前掛かりになって攻め続けるとミッドフィールドのバックラインの間が空いて、そこにつけ込まれる。1対1に絶対的な自信を持つストッパータイプのセンターバックがスペインにはいない。2つ目はマルコス・セナの怪我による欠場があるだろう。シャビ・アロンソでもの足りないと言っているのではない。ただリヴァプールでの彼は、「球拾い」よりもパサーとして能力を買われている。彼の背後にマスケラーノがいるからだ。だからアンカーは、彼よりもマルコス・セナの運動量が必要だということ。そして、フォーメーションの問題。やはりクワトロフゴーネスに戻すべきだ。リエラの左も魅力的だが、彼が左に貼り付いていることで、シャビとセスクのパスコースの選択肢を減らしている。よりダイナミックにポジションチャンジができる中盤を作れば、アメリカの「潰し」をもっと簡単に交わせて、2トップからのクリーンシュートが増えたのではないか。もしリエラを使うのだったら、1トップにして4-2-3-1にすべきだろう。つまり、シャビとセスクだけでは、中盤にひとり足りない。だが、もちろんデルボスケにそんな思考を期待するのは無理だ。彼がこのチームの監督を続ける限り、采配で勝てるゲームなどない。彼に任された仕事は、選手を気持ちよく戦わせることだけだ。