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October 31, 2011

チェルシー対アーセナル 3-5
梅本洋一

[ cinema , sports ]

 溜飲を下げるという表現はあまり好きではないけれど、こういうゲームの後は、その表現を使いたくなる。
 アーセナルというチームに疑いを持ち始めてからずいぶん経つ。いったい何度期待を裏切られたのだろう? 別にタイトルを取れなかったことが残念なのではない。かつてこのチームのフットボールを見ることで、フットボールを見る快楽を感じ、それからこのチームと共に何年も歩んできたのに、最近、快楽どころか不満や苦痛ばかりを感じてきた。だから当然、疑いも生まれる。アルセーヌ・ヴェンゲルはもうダメなのではないか? ずっとワンパターンのフットボールばかり続けていれば、見る人は飽きるし、そういうフットボールに合わないフットボーラーには無理がくる。そろそろ理想のフットボールを追うのをやめて、リアリズムに徹した方がいいだろう。そうも思った。
 だが、ファン・ペルシのハットトリックで会心の勝利を得たこのゲームの後、正直にこのチームの復帰を喜びたいと思った。両サイドの疾走はない。中盤のポケットビリヤードのようなレンジの短いパスの連続はない。ラムジーに比べれば速いけれど、アルテタもまだ遅い。だが、ヴァイタルエリアに侵入し、ワンタッチパスが連続し、ファン・ペルシがゴールを決めたシーン辺りから、ゲームの速度が上がってきた。かつてのアーセナルを選手たちが思い出し始めた。否、この表現は適切ではない。往時のアーセナルを覚えている選手などひとりもいないだろう。このメンバーでは、ロシツキが朧気に覚えている程度だろう。ファン・ペルシはベルカンプの控えだった。今のソングの位置にジウベルト・シウバが加入した時期だろうか。セスクもいなかったかも知れない。だから、誰も思い出すことなどできない。
 アンドレ・サントス、ジェルヴィーニョ、メルテザッカーなど新加入の千選手たちが、ようやくアーセナルのフットボールを覚え始めたということだ。かろうじて血筋を引いているファン・ペルシによって、ようやくアーセナルのフットボールが復活を始めたということだ。相手がスタンフォード・ブリッジのチェルシーだったことは重要だ。モウリーニョ時代には、なかなか勝てなかったこのチームに、アウェイで勝利を収めたことは重要だ。そして、最後にはヴェルメーレンが姿を現した。ようやく7位まで戻したアーセナル。まだまだこれから。もう少しこのチームにつき合って良いだろう。