journal

« March 2014 | メイン | May 2014 »

April 28, 2014

『闇をはらう呪文』ベン・リヴァース、ベン・ラッセル
結城秀勇

[ cinema ]

未明の湖上で、カメラはゆっくりと360°パンする。 レンズが南東側に向かうにつれてほのかな陽の光とともに画面は白んでゆき、また次第に黒みを帯びていき、やがて再び北西方向を指したときにはスクリーンの大半が闇に沈む。その闇のもっとも深い部分、フィルムがほとんどなににも感光せずに残ったはずのその場所で、灰白色の蠕虫に似たデジタルノイズがにぎやかに蠢きだす。光量の少なさが一定の閾値を越えて、情報の無として...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:46 PM

『ゴダール・ソシアリスム』ジャン=リュック・ゴダール@LAST BAUS
田中竜輔

[ cinema , cinema ]

たとえばジェームズ・キャメロンは『タイタニック』で、豪華客船を直立させる様子を圧倒的なスペクタクルとして私たちの目の前に映し出した。一方でジャン=リュック・ゴダールは、船ではなく「海」そのものをひとつの壁としてスクリーンに屹立させることを選ぶ。もちろん『ゴダール・ソシアリスム』の海は、その上に浮かぶ豪華客船に乗り込んでいた人々(=イメージ)を落とし込みなどしない。ゴダールがこのフィルムにおいて真に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:53 AM

April 22, 2014

『クローズEXPLODE』豊田利晃
渡辺進也

[ cinema , sports ]

 くすんだねずみ色の中に灰のような白い塊がふわふわと舞っている。小さい男の子が母親に手を連れられて孤児院へと連れて入るときに降っているこの雪は冷たいとか、重いとか、そんなことは考える由もなく、ただただ乾いていて、軽い綿のように見える。そして、例えばこの雪は、この映画で後ほど出てくる、ふたりの男が殴り合いをする産業廃棄場に舞う綿ぼこりか何かとまるで同じもののように見える。この2つの場面の雪がほとんど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:04 PM

April 16, 2014

『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』マイケル・ベイ
高木佑介

[ DVD ]

レンタルビデオ屋の「新作」コーナーをぶらついていると、アメリカ国旗を背景に厳めしいポーズを決めているマーク・ウォールバーグと“ザ・ロック”ドウェイン・ジョンソンのふたりと目が合った。『トップガン』(86)並にダサいDVDジャケット、そして『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)と同じような副邦題を持つこの作品のパッケージを手にとってみると、「トランスフォーマー」シリーズの大ヒットの陰に隠れ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:41 AM

April 13, 2014

『ダブリンの時計職人』ダラ・バーン
三浦 翔

[ cinema ]

 夕焼けの海辺の中でフレッド(コルム・ミーニイ)が見上げるのは、落書きをされた彼の車がいきなりクレーンで廃棄にされるという光景だ。ダラ・バーンという監督はもともとドキュメンタリーの監督だと聞いていたものだから、いかにも嘘っぽく見えるこの始まりには、正直戸惑ってしまった。ただそんなことは私の勝手な思い込みに過ぎない。時には幻想的な光を帯びるアイルランドの自然や街のなかでユーモアを炸裂させながら、どの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:25 PM

『チトー・オン・アイス』マックス・アンダーソン&ヘレナ・アホネン
隈元博樹

[ cinema , cinema ]

 カメラによって切り取られた現実のドキュメントと、カメラによって切り取られた現実のストップモーション。現実のドキュメントとは旧ユーゴスラビア以降の国々の現在やその記憶を語る人々の証言であり、ストップモーションとはその現実をもとに100パーセントの再生紙によってデフォルメされたモノクロ映像のことを指している。  ふたつの世界をマックス、ラースとともに媒介していくのは、スウェーデンから旧ユーゴへと向か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

April 10, 2014

『悪魔の起源 -ジン-』トビー・フーパー
結城秀勇

[ cinema ]

霧が怖いのは、たんによく見えないからではなくて、見通せない状況と見通せる状況の間にあるはずの境目、閾値がどこにあるのかわからないからなのではないか。くっきりと見えているものがだんだん遠ざかるにつれて、細部がぼやけ、シルエットだけがかろうじて判別できる状態になり、やがてなにも見えなくなる。澄んだ空気のもとであれば長大な距離を経て表れるそうしたプロセスが、極濃の霧の中では極限まで圧縮され、たった一歩の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:49 AM

April 1, 2014

『それでも夜は明ける』スティーヴ・マックィーン
渡辺進也

[ cinema ]

 最初に、まるでこれから起こることをダイジェストで示すように一連の様子が描かれる。サトウキビの収穫の仕方を教えられ、金属の皿に載せられた食事を素手で掴み、木の実からインクを作ろうとして失敗し、夜中横に寝る女奴隷に誘われる。そこにあるのは、陥ってしまったことに対してどうしようもないあきらめの表情なのか、それともうまくいかないことへのいらだちなのか。  『それでも夜は明ける』の原題は、’12YEARS...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 PM