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渡辺進也
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結城秀勇
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October 20, 2009

10/20
渡辺進也

本日もコンペで2作品を。
『少年トロツキー』(ジェイコブ・ティアニー)。トロツキーの改名前の名前と全く同じ名前の少年レオン・ブロンスタインが自らをトロツキーの生まれ変わりだと信じ、高校に革命を起こそうと奮闘する。主演は『ミリオンダラー・べイビー』『トロピック・サンダー』のジェイ・バルチェル。モントリオールを舞台にしたいわば典型的なコメディ。そして近頃めっきり日本に輸入されなくなってしまっている学園ものでもある。生徒たちひとりひとりのキャラが立ち、これがなかなか良くできている。奇天烈な人物がその行動で徐々に周りを巻き込んでいくのは感動的でもある。彼が提案した意見を他の者が否定したときの台詞が秀逸。「お前は俺のスターリンか」。Q&Aで監督は70年代のコメディ映画の影響を語るがむしろウェス・アンダーソンなどとの近さを感じる。
『イースタンプレイ』(カミン・カレフ)。ブルガリアの首都ソフィア。薬物中毒から立ち直ろうとする男がいて、ネオナチのグループに入ってしまった弟がいて。ふたりは弟がトルコ人を襲う現場で久しぶりに再会する。誰もが個人的な問題を抱えつつ、世の中が間違っていると思いつつ。この題材で結構丁寧に描いていくのでどうやって89分で収めるのだろうかとずっと不思議に思っていたのだが幽かな希望めいたものを描いて唐突に終わる。エンドロールでこの映画が主演のフリスト・フリストフに捧げられていることに気付く。撮影直後の事故によって亡くなったのだという。そしてこの映画はフリストフの実人生から着想を得た映画だそうである。ゆえに、これからの人生を仄めかせるラストでありながら、もはやこの映画は続くことができない(文字通り続きは作れない)。そのことを知って余計にこれが未完の映画のような気がしてしまう。
毎日数多くの映画を見ていて気付くのは、それぞれの映画は扱っている内容も違えば言語も違うし、それぞれ固有の問題を抱えていることである。だがそれに対して映画のフォルムというか、スタイルはかなり似通っているように感じる。それは特にヨーロッパの映画に顕著で(対照的にアジアの映画は国というか人ごとにかなり異なる)ブルガリア映画がどういうフォルムかというイメージは持っていないので何ともいえないけど、フォルムだけみてフランスの映画と言われても信じてしまうような気がする。かつてはもっと国ごとでスタイルというものがあったような気がするのだが。

『少年トロツキー』
10月23日13:30
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『イースタン・プレイ』
10月22日21:10
10月24日14:20
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投稿者 nobodymag : October 20, 2009 9:49 PM