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2006年07月06日

奴らは顔役だ!

 ワールドカップニュースを見ていると、うじきつよしが怒っている。こんなゲームをするなら、決勝ではイタリアを応援するぞ、と。このポルトガル対フランスという興味深いカードになった準決勝、まともに見られたのはアンリの足をリカルド・カルバーリョが引っかけてPKになるまでの30分ほどのことだった。それまでは両チームとパスを繋ぎ、敵ゴール近くまでボールを運び、シュートに持ち込むという基本的なフットボールの原則通りの展開。今後に期待を抱かせた。ユーロ2000の準決勝(?)でもこの両チームは顔を合わせ、それまではどのチームも圧倒してきたフランスが、初めてトリプル・ボランチを採用して、フィーゴ、ルイ=コスタの中盤を消しにかかった。デシャンとヴィーラの信じがたい運動量と共にあのゲームは見応えがあった。

 だが、今日のゲームは、ジダンがPKを決めた後、フランスは徹底してゲームを「殺し」にかかった。前半30分でドメネクは1-0で勝つことにしたのだろう。フランスはアタックを捨てて、ポルトガルのスペースを消しにかかる。ヴィーラ、マケレレのふたりはもちろんのこと、右はリベリとサニョール、左はマルーダとアビダルがポルトガルに合わせてポジショニングを始める。クリスティアノ・ロナウドとフィーゴを消すことが何よりも優先される。当然と言えば当然なのだが、この戦術がゲームを「殺す」ことになる。今大会随一の両サイドから運動とパスの自由を奪うことになるからだ。両サイドがいなければ、中央でふたりからの「連絡を待ち」つづけるパウレタにはなしのつぶて。ボールがないセンターFWなど案山子と同じだ。だけど、デコがいるだろう! もちろん、デコはいるが、彼がボールを持つと、ヴィーラ、マケレレの餌食だ。だけどマニシェがいるだろう! いるけれども、彼の位置を10メートルばかり下げさせれば、彼のミドルはゴールマウスに飛ばない。残りの60分は、それだけを繰り返すフランス。
 つまり、今大会絶好調のサニョールのサイドアタックも、リベリの突破もいらない。ボールを奪ったらジズーに渡して、「ゆっくりして」もらう。すると時間が流れる。もちろんフィーゴもロナウドも両サイドを突破してくるからもしれないが、フランスがサイドアタックを捨てたおかげで、突破に時間がかかり、屈強の両センターバックが十分に彼らの運動を規制することができる。万が一ショッツオンのシュートが飛んできても、バルテズにはっきりそのコースが見える。

 ゲームは絶対的につまらないものになる。これでいいのか? ぼくだってどんどん眠くなるじゃないか。3時半に起きているんだぞ。バカにするなよ!もう睡眠不足は極限に達している。こんなゲームを見るために東京の夜明けを迎えたいわけじゃないぞ。ドメネクにそう言っても、極東のフットボール・ファンの言うことなど彼は耳を貸すはずがない。黙って寝てろ。俺たちは日曜日にイタリアとやりたいだけだ。そう言われるに決まっている。

 うじきつよしの怒りに対して、東京新聞の財徳記者──オールドファンなら馴染みの名前だ──はこう答えていた。日本代表もいつかこんなゲームを仕組めるようになるといいですね。確かに。フランスは、スペイン戦でチーム戦術が確立し、代表の寄せ集めでなく、ひとつの戦術の下にたたえる本当のチームになった。延長で疲弊するよりも、省エネ・フットボールで老人中心のチームを維持させる。したたかな奴らだ。

投稿者 nobodymag : 2006年07月06日 10:04