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2007年10月07日

All the Queen’s Men :オーストラリア対イングランド 10-12

 だからラグビーは分からない。最近のイングランドの袋小路に陥ったような不調。そして、ワラビーズはまったく危なげなく準々決勝まで勝ち上がっている。スプリングボクスに0-36の完敗を喫したとき、イングランドについて処方箋はないとぼくも書いた。誰がどんな見方をしようとワラビーズ有利は動かないところ。もちろん、99年のフランス対オールブラックスの準決勝も覚えている。でも、このイングランドに、あのワラビーズがまさかの敗戦を喫するとは誰も予想しなかったろう。
 もちろん、これも誰でもが考えることだろうが、僅差の勝負になり、ウィルキンソンのキックで勝つ。イングランドに勝機があるとしたら、これしかないだろう。そして、それが現実になった。10-12、確かにウィルキンソンの4発、ノートライでイングランドは勝ったのだが、ウィルキンソン自身の調子は余りよくなかった。狙ったPGを3本ミスしている。ワラビーズのキッカーであるモートロックの確率はこんなものだろうから、もしウィルキンソンが好調だったら、10-21ということなり、イングランド完勝のゲームだったわけだ。僅差でのイングランドの勝利というよりは、このゲームはイングランドのゲームプラン通りに運び、彼らが完勝したゲームだと言うことができる。
 このゲームがイングランドの完勝だとしたら、ワラビーズの敗因はどこなのか。裏を返せば、イングランドの勝因はどこにあるのか、ということになる。ディフェンスとスクラム。これに尽きる。ゲーム直後に発表されるラグビーW杯公式サイトのスタッツを見ると、このゲームの内容は一目瞭然だ。ポゼッションではイングランド52%、そしてテリトリーでは48%、タックルは共に85回、ミスはイングランド9回、ワラビーズ8回。ほぼ互角だったことが分かる。それにしても両チームともタックル成功率が9割、ポゼッションでもテリトリーでもほぼ互角だったことを見れば、このゲームがタイトなものだったことが納得されるだろう。だが、問題は次の部分だ。全部で12回あったスクラムのうち、イングランドは5回のマイボールをまったく失わず、ワラビーズは7回のマイボール・スクラムの内2回失っている。またターンオーヴァー数はワラビーズ5回に対して、イングランドは何と9回。簡単なことだ。FW戦でイングランドは圧倒的に優勢に立っていた。スクラムの優勢はゲームを見ている眼からも認識できたし、ボールのリサイクルからフェイズを繰り返しながらアタックするワラビーズが9回もターンオーヴァーされている。こうしたゲームではラインブレイクを何度かしなければ勝てないのだが、ラインブレイクはワラビーズが2回、イングランドが1回。ワラビーズがアタックで優位に立てず、ブレイクダウンとスクラムで完敗したということだ。ウィルキンソンの4発12点で確かに勝利したが、イングランドはFW戦で完勝している。
 もうひとつスタッツとは関係ない敗因がワラビーズにあるような気がする。ジャパン、カナダ、フィジー、ウェールズに問題なく完勝したというベスト8までに進む道が、余りになだらかだったため、初めてタイトなFWにあたり、ワラビーズが受けに回り、その問題をゲーム中に対応することができなかった。それに対して、イングランドは、すでに書いたようにスプリングボクスに完敗し、サモア、トンガに辛勝。これ以上負けるわけにはゆかないという気持ちが高まったことは想像できる。
 スプリングボクスに完敗したチームが、ワラビーズに完勝する。藤島大ならずとも「伝統」とか「魂」という言葉を使いたくなる。ディフェンスは気合いだ。イングランドの大ヴェテランの揃った第1列に敬意を表したい。そして、ぼくらはこれからフランス対オールブラックス戦!

投稿者 nobodymag : 2007年10月07日 00:28

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