02.10/08

 

 サッカー日本代表がアジア大会においてベスト4になるのは32年ぶりのことらしい。今日中国を1対0で下してそれが決まったというわけだ。nobody5号ではスポーツ批評の特集が組まれる。そこで山際淳司ともうひとり、金子達仁をとりあげる。彼の『28年目のハーフタイム』は、メキシコ大会から数えて28年ぶりにアトランタオリンピック出場を果たした日本代表の「真実」を描いたものなのであるが、もしかしたら明後日行われる対タイ戦のハーフタイムにも何か「事件」が起こらないとも限らない。だが、「事件」も「真実」も試合が終了して結果が明らかになった時点から遡って見い出されるにすぎない。ゲームの最中、私達はもっと些細な「出来事」を注視している。ボールがどっちに転ぶかとか、DFの前に空いたスペースとかを。だから「事件」とか「真実」を語らずに「出来事」を語れというのかというと、そうでもない。「出来事」を語ろうとしたら、ある「事件」性を持たせて事後的に語るしかない。(「一つの運動を多角的な視点で検証する」(志賀謙太)方法で)だとしたら同じものを観つつ、共有したものそのものについては互いに確認できないサッカー観戦とは、どんなに熱狂的なスタジアムの雰囲気の中でもどこか孤独な作業なのではないだろうか。金子達仁の著作を読んでいると、それを忘れさせてくれる気がする。でもほんとはすごい孤独だからこそ言葉も通じない世界中の人と同じことで熱狂するんだ、という気がするんだけど。

結城秀勇

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