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juin 21, 2008

Et tu, Brute?-- Then fall, Caesar!

 それがフットボールさ。そんな常套句をいったい何度聞いたことだろう。ドーハの悲劇直後のハンス・オフト、やはりアメリカ大会出場権をどたんばで逃したフランス代表監督だったジェラール・ウイエ……。そして2004年の中国の猛暑の中で延長戦を何度も戦ったジーコと日本代表。そして今朝は、クロアチアのヘッドコーチ、ビリッチもそう言うかも知れないし、ぼくらもそう思った。
 昨日も今日も下馬評では有利なチームが散っていく。昨日のポルトガルは、ドイツのフットボールがポルトガルを凌駕していたから仕方がないが、今日のクロアチアは、延長後半の14分にクロアチアが先取点をあげ、ロスタイムが2分経過したこところで、トルコが同点ゴール。そしてPK戦を制した。それまでは順風満帆のクロアチア。グループリーグを何の問題もなく突破し、3戦目には主力を温存した。一方のトルコはチェコをどたんばでうっちゃりようやくここに駒を進めた。誰だって、クロアチア優勢は疑わないだろう。しかし結果はトルコの勝利。しかも劇的な形での。こういうことは滅多に起きないのだが、実は何度も何度も起きるのだ。
 引き分けありのグループリーグのゲームから決勝トーナメントのノックアウト・システムになると、延長戦、PK戦で次に進むチームを決めることになるのだから、何度も起きるのは当たり前だし、システムとしてすでにこのような結末を内包している。
 でも延長後半10分ぐらいまでゲームは面白くなかった。ウィーンの蒸し暑さが原因だろう。ピッチサイドの両監督の白いシャツには汗が滲んでいた。選手たちは身体もアタマも動かなくなっていったはずだ。組み立ても戦術もどうでもよくなり、選手たちは本能的に相手ゴールを目指すだけだ。
 明日のオランダ対ロシア戦で、フース・ヒディンクが目指すのは、徹底した塹壕戦かもしれない。アタックは諦めて、自陣に籠もり、オランダを疲れさせておいて、アタックに倦怠した時間帯を狙って総攻撃をかける。ファンバステンと若きオランダが、そうしたネガティヴなゲームプランを叩きつぶすためには、前半の入りからフルアタックをかけて、前半のうちに勝負を決めてしまうことだ。今日のトルコ対クロアチアのゲームも面白くはあるのだが、それはもっぱら勝敗に関わる面白さであって、決勝トーナメントというシステムに関わる面白さであって、フットボールそのものの快楽とは異なる。今大会の星であるオランダには、小学生のトーナメントから起こりうる、そうした勝敗に関わるサスペンスとは無関係な、フットボールそのものに属する快感を謳歌しながら、古狸率いるロシアを撃破してほしい。

投稿者 umemoto youichi : juin 21, 2008 11:45 PM