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2004年10月19日

2004年10月19日

お店の入口のチャイムが鳴る。従業員のAさんが出て行く。扉を開ける音とともに、訪問者の声が漏れてくる。「すいません。いつもお邪魔してしまいまして。」「よろしくお願いします。」少し高めのしゃがれた声、謙虚な言い回し。Sさんがやってきた。私のお客さんだ。

ナース服のジッパーを降ろす私の後姿を、私とちょうど背中あわせになるようにしてうつぶせになった彼が、反対側の壁に立てかけられた大きな鏡で見つめている。普段ならM性感用に使われるこの大鏡は、性感エステのお客が入るとカーテンの後ろにそっとしまわれるのが普通だが、彼が以前お店に来た時忘れてそれを出しっぱなしだったことがあって以来、常連の彼だけには、性感エステであっても、この大鏡が特別に用意される。私は背筋を伸ばしゆっくりと服を肩からずらしていく。彼はもともと、私がこのお店に入る以前からのお客さんらしい。毎週やってくる重要な顧客であるにもかかわらず、腰が低くて謙虚な彼に、お店の男の人たちも、つい気を許してしまうのだろう。鏡をしまい忘れるなんて。スーツを脱いだ後も、その謙虚さは相手に対する思いやりとなり、上着を受け取ったり、スリッパをそぁ?えたりする私に、彼は毎週変わらず感謝の言葉をかける。きちんとしている。常識的だ。凄く些細な事だけど、こんなところに来ても謙虚さを忘れない彼は凄いと思う。抜かりない。このお店の性感エステでは、M性感とはまた違い、疲れたお客さんを「癒し」てあげることが求められる。しかしあくまで気を抜かない彼に、一体どんな「癒し」が可能なのだろうか。きっと今も彼は鏡で、ブラをたたんでしまう私の後姿をじっと見つめている。私は意を決して振り向く。鏡の中の自分の姿が、はじめて横目にちらりと見える。「もぅ、何見てるんですか。」笑いながら冗談交じりに、私は彼のもとに駆け寄る。「いいじゃない、別に。」と彼もニコニコしてうつ伏せになる。彼の少し贅肉のついた白い背中にベビーパウダーを降りかける。粉まみれの背中に、盛り上がった肉の隆起をなぞりながら、ゆっくりと指の跡をつけていく。円を描くようにして、その跡を背中からお尻へとずらすと、彼のお尻がピクピクと反応するのがわかる。いやらしく腰を振り、私の察?に答える。お尻を見つめる私からは、彼の表情は読み取れない。彼は鏡を通し、今もその一部始終を見ているのかもしれない。普段なら、お客さんに、彼自身の恥ずかしい姿を見せつける為に用意してあるこの鏡に、今は私が映されている。そんな風に横目でこっそり見てないで、振りかえって直接見ればいいのに。私のお腹を、胸を、直接正面から真っ直ぐ見ればいいのに。でも彼はただ鏡を見つめる。私の死角を彼が見つめる。

プレイが終わると、彼はにっこりと笑い言う。「いつもほんとにありがとう。」私も思わずかしこまり、「とんでもないです。こちらこそありがとうございました。」とお辞儀する。彼が、来た時と同じ折り目できっちりとネクタイを締めながら、「来週、シフトもう決まった?」と尋ねる。「はい。」私は彼にシフトを知らせる。来週の予約が入る。Aさんを呼ぶ。「ありがとう。」最後に彼が言う。扉のところまでついていき、Aさんと彼を見送る。私には彼が私の何に「ありがとう。」というのかみえない。

投稿者 nobodymag : 18:05

2004年10月13日

2004年10月13日

酔っ払って気が大きくなって、その勢いでどさくさにまぎれてやってくるお客さんは多い。そういう人は臭いし、一人でテンション高くて、全然話を聞いてくれないうえになかなかいってくれない。そして忘れっぽいから、指名で戻ってきてもくれない。もっともやっかいなお客さんだ。でも、「気が大きくな る」にも2種類あって、キスとか本番とか迫ってくるお客さんは門前払いだけど、「気が大きく」なってM性感にやってくるお客さんは面白い。今日のHさんも、そんなお客さんの一人で、初めてのM男体験に、不安と期待を入り混じらせてうちのお店にやってきた。のっけからまくし立てるように一人しゃべり まくる彼。つらつらと言い訳を並べる。「心臓がばくばくいってます。」とか、「まいったなぁ。」とか、「いやぁ、はじめてなんですよ。」とか、 「あ、・・・明日も来ていいですか。」とか、脈略なく同じ言葉を何度も何度も繰り返す。シャワーを浴びて、プレイが始まっても同じ調子で、言葉では言い訳を連ねるものの、お尻はユルユルだし、腰もガンガン振り出すし、全くどう考えても、初体験とは考えにくい。「嘘つく人は嫌いよ!叱って欲しいのかしら?」と迫ると、彼が、お店に来るのは本当に初めてでこれまで家で一人で鍛えてきた、と告白しはじめた。嘘かホントかはわからないけれど、彼が暗がりのなか一人で声を押し殺しながらおもちゃで遊んでいる姿を想像するにつけて私もぐっときちゃって、更に盛り上がって激しく攻める。彼は、「しまっちゃう、しまっちゃう」と繰り返す。きっと、ゆるくなっていたお尻がきゅっと締まっていく感覚を、彼なりにこれまでそう呼んできたのだと思うと、彼が家で一人で積み上げてきた時間の長さに感服する。最後に、シャワーを浴びてさっぱりした彼は、少し冷静になって、「僕の事忘れないで下さいね。僕、よく忘れられるタイプなんです。」と言って帰っていった。

投稿者 nobodymag : 18:03