journal
October 9, 2015
『黒衣の刺客』ホウ・シャオシェン結城秀勇
[ cinema]
フィルムによる撮影・上映ではなく、デジタルによる撮影・上映でのみ可能になる映像のあり方があるんじゃないのか、と数日前に書いたばかりだが、『黒衣の刺客』がまざまざと見せるのは、とりあえずフィルムで撮っておけば、あとはデジタルのポスプロで作れない画面なんてない、という圧倒的な事実だ。フィルムで撮影しさえすれば、この世に存在するあらゆる映像はつくりだせる、そんな断言にも似た力強さーーそう呼ぶにはあまりに...全文を読む ≫
投稿者 nobodymag : 12:14 PM
October 5, 2015
『アカルイミライ』黒沢清結城秀勇
[ cinema]
『岸辺の旅』を見ていてすごく気になったのは、浅野忠信と一緒にいないときの深津絵里の生活が、極端に彩度の低い画面で映し出されていることだった。とくに中盤の、旅を中断して東京に帰る場面。ほとんど灰色と言ってもいいような色調で、旅の間に枯れ果てた鉢植えの植物が画面に映る。そのとき、なんだかとてつもなく取り返しのつかないことが起こったような、取り返しもつかないような途方もない時間が経過したような、そんな気...全文を読む ≫
投稿者 nobodymag : 9:55 PM
October 3, 2015
『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』ロン・マン隈元博樹
[ cinema]
ある事物の性質やその特徴を言い表すとき、私たちは「らしさ」という接尾語を使うことがある。ここでの「らしさ」とは、礼節を重んじた人物に対する紳士らしさであり、しとやかで品格を備えた人物に対する淑女らしさのことを指している。ただしこれらは、実体に近しいことを表現しているにすぎず、それ自体のことではない。紳士らしさとは紳士に近い存在であり、完全なる紳士ではない。また淑女らしさとは、そのすべてをもって淑...全文を読む ≫
投稿者 nobodymag : 11:36 PM
September 23, 2015
『みんな蒸してやる』大河原恵渡辺進也
[ cinema]
いまユーロスペースで「たまふぃるむナイト」が開催されている。 「たまふぃるむ」を説明しておくと、もともとが多摩美術大学の映像演劇学科の映画制作の授業の一環からはじまったものだったが、当学科がすでに募集を止めてしまったためにそこから派生して在学生やOBを含めた組織となった。彼らは、制作だけに留まらず上映も定期的に行っている。おそらくそのメンバーは10数人ほどで構成されていると思うのだが、誰かが作品を...全文を読む ≫
投稿者 nobodymag : 11:38 AM
『ひこうせんより』広田智大渡辺進也
[ cinema]
人里離れた廃墟のような場所で、男女7人が生活している。時代もまるで現代ではないような雰囲気で、無機質な衣装と無機質な物質の中で彼らは生活している。ある者は写真を撮り(フィルムが実際に装填されているのかわからない)、ある者は廃品だろうか機械を修理し、ある者は外部からの侵入者を警戒しているのだろうか金属バットを振り回し、ある者は紙に赤や青のペンキを塗り続け、ある者はひまわり型の風車をつくり、ある者は近...全文を読む ≫
投稿者 nobodymag : 11:30 AM