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今日から3週間弱ひとり旅。行き先はロンドン。いつもいつも「どっかに行きたい!」と思いながら、これまでちっともその気配も感じられなかったのだが、なぜか「今しかない!」と突然思い立ち、決定から2週間後にはもう出発である。よって航空券ととりあえず数日分のホテルの予約以外はなんにも準備をしていない。「大丈夫かなー」と一抹の不安を感じるも、すでに機内。別に未開の地に行くわけでなし、なんとかなるよと思い直す。前にも行ったことあるし。
夕方ホテルのあるアールズコートに到着。ロンドンは意外にも暖かかった。雨があがった後らしく、湿った地面に夕日が眩しい。駅からホテルまでは5分くらいだが、その間にレストラン、パブ、スーパー、コインランドリーなどなど必要なものはすべてある。ロンドンにいる間はここに落ち着けそうだ。 |
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昨日とはうってかわってとっても寒いのだが、うっかり薄着で出掛けてしまった。とりあえずサウスバンクへ行きライヴやらフィルムセンターのスケジュールをチェックしていると今夜ロイヤル・フェスティヴァル・ホールで「ワープ・ワークス&20th・センチュリー・マスターズ」というコンサートがあるらしく、そのチケットと二日後のレジデンツのチケットを購入。この上にあるヘイワードギャラリーは閉館中だった。仕方なくテムズ川を渡ってチャリングクロス周辺をぶらぶら本屋さんなどを見ながら散策するも、どうにも寒い。とても夜まで持ちそうにないと「Time
Out」を購入し映画を見て夜まで時間潰しすることに。スケジュールにより日本に帰る頃にはすでに公開中だろうなと思いながら『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』というところに落ち着く。しかし「Time
Out」は曜日によって上映時間が違うこともあるのだろうがとってもわかりづらい。あらかじめ上映時間をチェックして映画を見に行く人なんてそんなにいないのかもしれないが。
夜再びサウスバンクに戻る。ワープのアーティスト達と現代音楽のコラボレーションということで、なんとなくソニック・ユースの『Good-by 20th
Century』みたいなものかと(もちろん手法は異なるだろうが)思っていたのだが、どうやら「本気で」現代音楽を演奏するものだったらしくLondon
Sinfoniettaが登場。あまりにフォーマルな演奏に逆にびっくりしてしまったのだがそれでも満員のホールは大盛り上がり。確かにこの曲目、この演奏が15£で見られるのは本当に素晴しいけど、今時のロンドンの若者はこんなに現代音楽なんて喜んで聞くものなのだろうか?幕間に流れた「ワープ」のDJにも同じように盛り上がる人々が本当にわからない。 |
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ロンドンで泊まっているホテルの予約が明日までなので、ちょっとは先の予定も考えないとなと思い、ロンドンにあるスコティッシュ・ツーリスト・ボードへ。日本を発つ前に絶対にスコットランドには行った方がいいよと何人かの人に言われていたのだが、ものすごく寒いに違いないと決めつけてろくに調べもしてこなかったのだった(もちろんそんな時間もなかったのだが)。が、こっちで天気予報を見てみると8℃から天気が良ければ15℃くらいまであるらしく十分活動範囲内だということで行ってみようかなという気になったのだ。
中に入ると大量のパンフレットとやたらに親切なお姉さんに迎えられる。ろくに地理もわからないのでいろいろ説明してもらったのだが、プランというものが何もないので決められない。散々悩んでいると1週間前には列車の予約をしないととっても高くなるのだとせっつかれ、なんとなく16日エジンバラ行きと22日グラスゴーからロンドンへ帰るスリーパーのチケットを予約。あとは適当にパンフレットを選んでもらって終了。「ホテルの予約が必要ならまた来てね」と笑顔で送りだしてくれる。
夜はまたロイヤル・フェスティヴァル・ホールへレジデンツのライヴを見に行く。先日とはうってかわって小洒落た若者はおらず、かわりにおじさんと怪し気な人たちがたくさんいる。少なくとも若い女の子はみんなアイラインが5o以上ありそうな感じで、また別の意味で間違えちゃったと苦笑。すみっこのソファでひっそり開場を待っているとあきらかにヤバそうなカップルが満面の笑みで近付いてくる。「ひとり?レジデンツのファンなの?」などなど話し掛けられ、「そう」と言うと「ひとりで来ちゃうくらい好きなんだねぇ」といたく感心される。ひとりで来てるのとレジデンツのファンぶりには何の関係もないのだが、わざわざ日本から来ているのだというとより一層面倒なことになりそうなので黙っておくことにする。それでも彼らのファンぶりは凄まじく結局開場までレジデンツ・マシンガントークは続いた。 |
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普段からとても活動的とは言えない生活をしている上になんだかんだ連日夜遅くまで出歩いていたのと、時差ぼけによる寝不足からかすこぶる体調が悪い。今日は一日ゆっくりしようと昼過ぎまで熟睡。午後起きて食事とお洗濯のために出掛けるとようやく体調回復の兆し。
昨日慌てて決めてしまったスコットランド行きのことを考えぱらぱらとパンフレットを見ていたのだが、ホテルも土地勘がないので駅からどのくらい遠いのかとかさっぱりわからず結局行ってから決めればいいかというところに落ち着く。それにしても16日から22日という日程のせいであと自由に動けるのは明日から16日までということになる。パリにも行きたかったのだということに気が付くも、行くなら明日からしかないではないかと愕然とする。迷った挙げ句にパリでホテルがとれたら行こうということにして、早速電話をしてみるとあっさり予約がとれてしまった。体調悪いんじゃなかったっけ?と思いながらも、もう行くしかないので慌ててパッキング。というわけで明日からパリに行ってきます。 |
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昨日ゆっくりしたので体調は回復。やはり単なる寝不足だったらしい。昼前にユーロスターの発着駅であるウォータールー駅に着きチケットを購入。突然行って大丈夫かなぁとちょっと不安だったのだが、やはり大丈夫ではなかった。いや、単に高かったってだけなんだけど。テレビで宣伝している値段の倍くらいするので「なんでそんなに高いの?」と素朴な疑問をぶつけると、「格安チケットはもっともっと早く予約しないとダメなの!」と逆に怒られる。やはり気侭なひとり旅というやつはリッチな人がするものなのねと痛感するもホテルの予約もしてしまったし行くしかないのでそのままユーロスターにチェックイン。
1時間の時差があるので4時間後にパリ、北駅に到着。ここからホテルのあるサンミッシェルには地下鉄で1本でいけるはずだったのだが、あいにく駅が工事中で閉鎖されておりシテから歩くことに。今日は本当に運が悪いなあとホテルは大丈夫だろうかと一抹の不安を覚えるも、トラ柄のファブリックに囲まれたフロントで迎えてくれたマダムとフロントマンはいい感じに妖し気で楽しいのでよしとする。ちなみに部屋はトラ柄ではなく普通に明るい白と黄色にコーディネートされていた。 |
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以前パリに来た時にはポンピドゥーセンターが閉館中だったので、やはり一度は行かないとと思い出掛ける。そういえばパリの美術館は持ち物検査をする。そのために入り口で並んで、チケット買うのに並んで……。さすがに天下のポンピドゥーはその人の数も他の美術館とは比べものにならず、人込み嫌いの私は見ただけでぐったりする。だからといってせっかく来たのに見ないで帰るのもなんなので、比較的空いていそうなフィリップ・スタルクの展示だけ見ることにした。しかし展示とはいえ「モノ」はまるっこい彫刻(?)ひとつ。あとは10個程あるモニターの映像とその下に位置するスタルク自身が映し出された「顔」が解説するというもの。しかしひとつひとつのモニターに仕切りがあるわけでなし、あっちこっちからいろんなスタルクの声が聞こえてきてどれがどの解説だか。フランス語の解説に耳を傾けるよりモニターの英訳を読んでいる方がはるかにわかりやすかろうと思う。 |
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パリは連日天気が良い。多少風の冷たさはあるもののそれも午後になれば温かい日射しがカヴァーしてくれる。あまりに気持ちが良いので今日は公園にお散歩しようとホテルからリュクサンブール公園を目指す。はずだったのだが、なぜかぶらぶら歩いていると人数が増し、背の高いビルが見えてくる。ん?あれはモンパルナス・タワーではないか?とりあえずここがどこなのかもわからないのでそのタワーを目指して歩いていくと、やはりここはモンパルナスであった。どうせ地図を見ても面倒臭いだけなので、いつも適当に歩いていたのだが、いくらなんでもリュクサンブール公園くらいには行けるつもりでいたのだが。
軽くショックを受けながらも別に公園に行けなかったらどうだということもないので、ぶらぶらしているとトッド・ヘインズの『Far From Heaven』の看板を見つける。パリに来てから「カイエ」でも「アンロック」でも取り上げていたこの映画が気になってはいたのだが、とにかくゆっくりしたいと思い積極的には映画館を探していなかったのだが、こんなところで偶然出会うとはきっと私を呼んでいるに違いないとうきうきしてチケットを購入。中に入るとすでに予告編が始まっていた。しばらくすると何かがおかしいということに気が付く。……ニコール・キッドマンがフランス語をしゃべっている。とても嫌な予感がする。……映画が始まるとやはりいきなりジュリアン・ムーアもフランス語を話し出す。なんてことだ!何言ってんだがさっぱりわからん!!しかしこんな大人向けの映画まで吹き替えているとは。どこかに吹き替えって書いてあったのかな?どっちにしてもそれをフランス語でなんて言うのか知らないので私には意味がないのだが。隣でいちいち映画にコメントしている老夫婦が一層憎らしい。
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今日はパリから再びロンドンに戻り深夜、ユーストン駅からエジンバラに向かうことになっている。しかしそれでも夜まで結構時間があるので、テートモダンに向かうべくウォータールー駅を後にする。サウスバンクから川沿いに歩いていけば結構良い散歩コースに違いないと思ったのだが、なぜか大量の人・人・人。そう言えば今日は日曜日だったと思い直すも何かがおかしい。なんか緑のおかしな帽子や髪飾りを付けた人がいっぱいいた。どうやら特設のスクリーンが設置されているらしく、サッカーの試合でもやっているらしかった。
当然絶好のお散歩コースにはこれまたかなりの人が流れてきており、川沿いの道はバーゲン中のデパート並みに混んでいる。テートモダンもしかり。これじゃあ展示どころではないなあと思い、なんとなくぐるりと歩いて終了。時間があったらまた来ることにしよう。早めに切り上げてテートモダンを後にしたものの、意外にこういう時にすることってないものである。歩き回っても疲れるだけなので、困った時は映画館、というわけでレスタースクエア周辺で適当なものを探す。と、『パンチ・ドランク・ラヴ』発見。ちょうどテートモダンのショップでこの映画のシナリオをぱらぱらと見てきたところなのでなんとなく気分も盛り上がっていたのでこれに決定。
それにしても映画館とは本当に便利だなあと思う。ゆっくり座れて時間もつぶせて、その上楽しい(とは限らないが)。いつもは上映開始時間ぎりぎりに駆け込んで「こなしている」感じなのだが、こんなふうに映画を見ていると、スーツ姿で平日の昼間から映画館に来ている人の気持ちが良くわかる。 |
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朝7時過ぎにエジンバラ駅に到着。こんなに朝早く着いてもすることない。一応キャビンは8時まで使えるらしく朝食も届けられたので食べながらなんとなくぼんやりしているとすぐに8時。仕方なく駅に出てとりあえずホテルを紹介してもらう。しかし駅近のホテルはとっても高いらしいのでバスで10分くらいのところにあるゲストハウスに決定。外に出てみるとエジンバラの町並みも人々もなんだかとても感じが良い。オールドタウンは道の両面からド迫力の古い建物が迫ってくる。坂が多くてちょっと間違えるとくねくねした道が勝手に谷を下ってしまって、またやりなおし。その繰り返しでなかなか遠くまで行けない感じがするのだが、町もそんなに大きくないのでなんとなく歩いているだけで観光スポットらしき所に出会える。
早めにゲストハウスに向かうとこれぞB&Bというような老夫婦が笑顔で迎えてくれる。この人たちはこんな1泊泊まるだけの知らない人にまでこんなに親切にしていて大丈夫なんだろうかとお客ながら心配してしまう程の愛想のよさである。お部屋もピンク&これでもかと言わんばかりの花柄にややノックアウトぎみ。さすがイギリスという感じ。 |
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午後再びエジンバラ駅に向かう。ここからハイランド地方を目指したいのだが、ネス湖のあるインヴァネスに行くかアバディーンに行くか悩んだ末に、アバディーンに行くことにする。インヴァネスに行けばきっと絶望的な「何もない風景」が見られるのだろうが、車に乗れないのであんまり辺鄙なところに行くと身動きがとれなくなってしまうのだ。オフシーズンだし、そこまで行ってホテルとか見つからないのは苦しい。とはいえアバディーンがどのようなところなのかもさっぱりわからないのだが、それなりの都会らしいのでなんとかなるかなという感じ。
列車を待っていると、さっぱり来ない。「ホームあってるよね?」と不安になってきた頃30分遅れでようやく到着。エジンバラから海岸沿いを走って3時間の旅。何もないただの平原からひつじからそれなりの町までいろんな風景が通り過ぎていく。そうして辿り着いたアバディーンはなんでこんな所に来てしまったの?というような工業地帯ぽい感じ。私が勝手にイメージしていた「港町感」を覆されてしまった。後で聞いたところによると北海油田の基地のなる港だそうで、そりゃ工業ですよね。列車が遅れたこともあり町についたのは6時過ぎ。もう薄暗い。ツーリストインフォメーションがもう閉まっていることに気が付くもなす術無し。いつも通り適当に歩いてみるも、この町結構広いらしい。ホテルの手がかりも地図なく途方にくれだが、なんとか駅まで戻ってこられたので仕方なく駅横のちょっと高いホテルに宿泊。しかしシングル料金でトリプルルームに泊めてもらったので広い部屋とゆったりバスタブに満足。たまにはいいか。 |
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明るくなったアバディーンの町を散策。駅の周りから海側は工業地帯らしいが、反対側は美術館やら大学やらあるきれいな町並みになっていた。しかし道も広くて街全体がゆったりとしてオーストラリアっぽい感じがする。で、その美術館に行ってみたのだが偶然アートコンクールのようなものをやっていて、久々に素人の人の作品を見る。普段全然美術館、ギャラリー巡りなんてしていない私だが、なぜか旅行にくるとその街の美術館に行ってしまう。当然今回もそれなりにいろんな美術館に足を運んで、いわゆる傑作みたいなものから現代美術まで見てきたわけだが、こうしてまとめてアートコンクールみたいなものを見るとやっぱりレヴェルの違いってあるのねーとばかみたいに思ってしまう。単にあまり興味もなくて無知なので美術の評価みたいなものが全く理解できないと思っていたのだが、違うものは違うのねと妙に納得。
午後には昨日の反省をいかし早くめにグラスゴーに向かうことにする。今日は途中から内陸に入りパースやセント・アンドリュースを通ってグラスゴーに至る道のりだ。グラスゴーはかなりの大都市。マッキントッシュで有名なアートスクールの近くにB&Bを発見し泊まることにした。 |
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今日はローモンド湖のふもとの町、バロッホに行く。イギリス最大の湖、グラスゴーから列車で1時間という場所柄観光地っぽいところかと思っていたのだが、予想以上に小さな町。ローカル線の終点ということもあって寂しさ倍増。しかし湖のほとりのお散歩コースを歩いていると犬を散歩させている人に数人出会うくらいで、その静けさがとても気持ち良い。ローモンド湖はこれが湖だと言われてもまったく実感が湧かない程広い。広いというより先が見えないので海だと言われれば海だし、川だと言われれば川だし。1時間程歩いて公園とも言えないような芝生にベンチだけの場所でしばし読書。とても優雅な感じがする。そう言えば忙しいのが嫌で、こういうことがしたくて旅行に来たんだよなと今頃旅の目的を思い出す。 |
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ようやくロンドンに帰ってきた。ということはもうすぐ日本に帰らなくてはいけないということで残念な気もするが、無事にロンドンに帰って来れたのでとりあえずほっとする。ところで今回の旅行、ロンドン滞在中、行こうかどうかずっと迷っていたところがある。ホテルのあるアールズコート駅を通っているディストリクト・ラインの終点がウィンブルドンなのだ。ウィンブルドン。ウィンブルドン・スタジアム。『ウィンブルドンの段階』。ああ、私も階段登りたい、とは思ったものの結局行っていない。つい、行ってもマチュー・アルマリックがいるわけでなし、何にもないスタジアムがあるだけだよなと思ってしまうのだ。そう考えるにつけきっと私は旅行には向いていないんだろうなと思う。このやる気のなさに人と一緒に旅行に行くと大抵キレられる。というわけでひとり旅なのだが、ひとりでリゾートするのもなんなのでつい、ロンドンみたいなひとりでいてもそれなりにすることのある街に落ち着いてしまいがちである。 |
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最終日。最後くらいはお買い物をしようかと思ったのだが、テートモダンの心残りをはらすべく向かった。ウォータールーのお気に入りのケーキ屋さんでベリーとアーモンドのタルトとカフェラテを仕入れまたテートモダンに。月曜日のお昼前ということもあり今度は空いている。ほっとしながら川のほとりの芝生スペースでおやつタイム。やはりおいしい。美術館も空いていてついのんびりしてしまった。
結局時間がなくなり、そのままヒースローへ。十分に時間の余裕を持って到着したのだが、空港はもっか厳重警戒中。手荷物検査でひっかかり、くまなく荷物を調べられてしまった。鞄のポケットというポケット、ポーチや手帳の中までチェックするのに、ものすごく手際が悪い。思わず「手伝いましょうか?」と言ってしまうも、ひとこと「結構です」。あたりまえか。まがりなりにも被疑者なので。で、何かと思えば小さいハサミ。そこまで調べるならこれもダメだと言ってくれればいいのに、小さくて先が丸いから大丈夫だと。おかげでぎりぎりにチェックイン。最後の最後で慌ただしい出来事に遭遇。いくらこれまで行き当たりばったりでやってきたとはいえ飛行機には乗らなきゃならない。ああ、帰るんだなと実感。 |
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