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2007年10月07日

You Only Live Twice:ニュージーランド対フランス 18-20

前半終了のスコアが13-3。堅いゲーム運びを選んだオールブラックスがフランスを防戦一方に追い込んでいる。フランスにタックルミスが少ないが、専守防衛では勝てないし、肝腎のPGが1発しか入っていない。トライユをFB、ボクシスをSO、エリサルドをSH、そしてウィングにもエマンスを起用し、キッカーを並べたラポルトの作戦が功を奏しているとは思えない。気合いの入ったディフェンスでも、マカリスターにブレイクされ、トライを献上している。流石に30分を経過し、0-13というスコアになってからは、トライユとボクシスのキックばかりではなく、ライン攻撃を仕掛けるようになったが、それまでのレブルーは「自衛隊」──それも日本国憲法にまったく違反する部分のない「自衛隊」だった。イラクに軍隊を派遣することもなく、インド洋で米軍に給油することもなく、カンボジアのPKOに参加することもない、領土防衛のみが目的の「自衛隊」だった。マカリスターに防御ラインを侵犯されてから、何とかボクシスのキックで反撃する。それで前半は終わりだ。
 奇跡とは1日に2度は起きない。だからワラビーズ対イングランド戦でその奇跡が起こって以来、このゲームはフランスの「自衛隊」の抵抗である程度拮抗した勝負になると思うが、それでもオールブラックスが順当に勝利するだろう。ぼくもそう思った。昨年の11月も、今年の6月も2連敗。それもまったく良いところがないまま敗れたフランスをぼくは目にしている。ボクシスは確かにグルジア戦では好キックを連発したが、プレッシャーのかかるオールブラックス戦は荷が重いだろう。そもそもボクシスを使うことや、トライユをFBに起用することは、傷口を小さくする戦術ではあっても、勝つための戦術ではない。今のフランスがオールブラックスに勝るのは、フレアだけだ。それもラポルトが監督に就任してから8年、このチームはフレアからディシプリンへと方向転換してきた。フレアに溢れたゲームは、前回のW杯対アイルランド戦以来見たことがない。前半のオールブラックスの勝つためのゲームメイクは、まずポゼッションに圧倒し、ラインブレイクできたところで集中し、ブレイクできなくても、敵陣でPG、そこでカーターが決めて点差を広げていくというものだ。正しい。圧勝できないかもしれないが、勝つ確率はこれが一番高い。前半終了間際にボクシスにPGを決められたが、点差は10点ある。スタッツを見れば、ポゼッションでもテリトリーでもおよそ8割はオールブラックス。最終的なスコアは30-9くらいか?
 だが、後半開始早々、前半のヒーロー、ルーク・マカリスターがシンビン。ボクシスPGで13-6。マカリスターがシンビン中もオールブラックスは積極的に攻め込み、レブルーをゴールラインに釘付けにする。だが、シンビン開け間際にデュソトワールがトライを返し、ボクシスのコンヴァージョンも決まり同点! 問題はここからだろう。
 マカリスターがシンビンから戻ると、ゲームは一時前半の再生ビデオを見ているようにオールブラックスがゆっくりとボールを支配し、ソーイアロのトライも生まれた。再びオールブラックスリード。ここからカラハーを、カーターを、オリヴァーを代えた。それを見たラポルトも、プルースをシャバルに、ボクシスをミシャラクに、そしてエマンスをドミニシに代える。ここが勝負だった。自陣22メートル付近でボールを拾ったトライユは蹴らずに、ミシャラクにパス、そして、ミシャラクは大きくゲインしてジョジオンにパス。そして決勝トライが生まれた。ミシャラク投入がギアチェンジの合図だったように、カーターとニック・エヴァンスの交代が敗退の予兆だったように、フランスの「フレア」が生まれ、一発でトライまで持っていた。スタッツは、フランスのラインブレイクがわずかに1回だったことを示している。オールブラックスは、W杯を去るとは言え、このチームがW杯で一番バランスのよかったチームだと言える。だが、すでにこのオールブラックスを何度も見たぼくらには、フランスに負けた事実を除いて、何の驚きも残せなかった。

投稿者 nobodymag : 2007年10月07日 22:03

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